共同購買や共同受注など組合の共同事業を組合員が利用する際の契約書です。利用限度、代金決済、脱退時の精算を定めます。相手方との認識のずれを防ぐ具体的な記載例を示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
共同事業利用契約書(組合・組合員間)
第1部: 書式本文
〇〇事業協同組合(以下「甲」という。)と組合員〇〇〇〇(以下「乙」という。)とは、甲が中小企業等協同組合法第9条の2に基づき行う共同購買事業(以下「本共同事業」という。)を乙が利用するにあたり、次のとおり共同事業利用契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 本契約は、乙が本共同事業を利用して原材料等の共同購買を行うにあたり、利用条件、代金決済及び脱退時の精算方法を明確にすることを目的とする。
第2条(利用資格) 乙は、甲の組合員であることをもって本共同事業を利用することができる。乙が組合員資格を喪失した場合、乙は本共同事業を利用することができなくなる。
第3条(利用限度) 1. 乙が本共同事業を利用できる年間取扱高は、金【】円を限度とする。 2. 甲は、組合員間の利用機会の公平を図るため、前項の限度額を組合員の事業規模等に応じて理事会決議により見直すことができる。
第4条(発注方法) 乙は、甲が指定する様式により発注を行い、甲は在庫状況及び組合員全体の発注状況を踏まえて供給の順序を調整することができる。
第5条(代金決済) 1. 乙は、本共同事業の利用に係る代金を、甲が別途定める支払サイトに従い甲の指定口座に振り込む方法により支払う。 2. 乙の代金支払が2か月以上遅延した場合、甲は本共同事業の利用を停止することができる。
第6条(品質及び数量の異議) 乙は、供給を受けた物品の品質又は数量に異議があるときは、受領後【】日以内に甲に通知しなければならない。
第7条(手数料) 乙は、本共同事業の利用の対価として、取扱高に応じた事務手数料を甲に支払う。手数料率は総会の議決を経て定める。
第8条(利用の制限・停止) 甲は、乙が代金支払を怠った場合、又は本契約若しくは共同購買事業実施規約に違反した場合、理事会の決議により本共同事業の利用を制限し、又は停止することができる。
第9条(組合員以外の利用の禁止) 甲は、組合員でない者に本共同事業を利用させてはならない。ただし、法令上員外利用が許容される範囲を超えない場合はこの限りでない。
第10条(不公正な取扱いの禁止) 甲は、本共同事業の実施にあたり、特定の組合員に対して不当に不利な取扱いをし、又は不当な対価をもって取引してはならない。
第11条(脱退時の精算) 1. 乙が組合員資格を喪失し、本共同事業の利用を終了する場合、甲乙は当該時点における未決済の代金及び未引渡しの発注分について精算する。 2. 前項の精算は、乙の脱退の効力発生日を基準として行う。
第12条(契約期間) 本契約は締結日から効力を生じ、乙が組合員資格を喪失するまで存続する。
第13条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、【】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 協同組合(甲)側の修正
A-1. 利用限度額の弾力的な見直し規定
修正後:「前項の利用限度額は、供給元の生産能力その他の事情により、理事会決議をもって組合員全体につき一律に変更することができる。」 一言解説: 供給側の事情変化に応じて柔軟に対応できるようにする修正であるが、特定の組合員のみを狙い撃ちにした変更は独占禁止法上の不公正な取扱いに該当するおそれがあるため、一律の基準による変更である旨を明記することが望ましい。
A-2. 代金滞納時の利用停止手続の明確化
追加条文例:「甲は、乙の代金支払が1か月遅延した時点で書面により催告し、催告後なお支払がないときに利用を停止することができる。」 一言解説: 利用停止は組合員の事業に大きな影響を与えるため、催告手続を明記し、恣意的な利用停止との誤解を避ける趣旨である。
B. 組合員(乙)側の修正
B-1. 利用機会の公平性を担保する規定の追加
追加条文例:「甲は、組合員間で本共同事業の利用条件(価格、供給順序、利用限度額)に差を設けてはならない。ただし、出資口数又は利用実績に応じた合理的な差異はこの限りでない。」 一言解説: 特定の組合員が有利な取扱いを受け続けると、独占禁止法上の不当な差別的取扱いに関する懸念や組合員間の不公平感が生じるため、乙の立場からは公平性を担保する規定を求めることが多い。
B-2. 脱退時の精算方法の具体化
修正後:「脱退時の精算金額は、脱退の効力発生日から【】日以内に算定し、乙に通知したうえで【】日以内に支払う。」 一言解説: 精算の時期・方法が曖昧だと脱退組合員との間で紛争になりやすいため、乙の立場からは期限を明確にする修正を求めることが有効である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、事業協同組合が組合員のために行う共同購買、共同販売、共同受注等の共同事業について、組合と個々の組合員との間の利用条件を定める場合に用いる。組合が組合員以外の第三者に事業を提供する場面(員外利用)や、組合員同士の直接取引には適用できないため、その場合は別途の契約書式を検討する必要がある。
根拠法令 事業協同組合が行うことのできる事業の種類は、中小企業等協同組合法第9条の2に列挙されており、共同購買、共同販売、共同経済事業のほか、組合員の福利厚生に関する事業などが含まれる。組合が共同事業を通じて組合員のために行う行為は、本来であれば独占禁止法上の共同行為として問題となり得るが、独占禁止法第22条は、法律の規定に基づいて設立された協同組合であって一定の要件(小規模事業者の相互扶助を目的とし、加入脱退が自由であること等)を満たすものの行為について、同法の適用を除外している。ただし、同条ただし書は、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合には、適用除外の対象としない旨を定めている。したがって、組合員以外の者を不当に排除する取扱いや、組合員間で不公正な差別的取扱いを行うことは、適用除外の範囲外となり得る点に留意が必要である。
実務でよくある失敗と対策 第一に、共同事業の利用条件を組合員ごとに個別交渉で決めてしまい、独占禁止法第22条ただし書にいう不公正な取引方法との評価を受けるおそれがある失敗がある。第9条及びB-1のように、利用条件は組合員間で統一的な基準に基づくことを契約上明記することが対策となる。第二に、脱退時の精算方法を定めておらず、脱退組合員との間で未決済代金の扱いを巡って紛争になる失敗がある。第11条のように精算の基準時と方法を明記することが望ましい。第三に、資金繰りの厳しい組合員に対する利用停止の要件が曖昧で、恣意的な運用との批判を受ける失敗がある。A-2のように催告手続を経ることを明記することが対策となる。
適用除外の要件充足性や個々の取扱いの独占禁止法上の評価は事案ごとの実態に左右されるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本共同事業が中小企業等協同組合法第9条の2に定める事業の範囲内か確認したか
- [ ] 組合員間の利用条件(価格・供給順序・限度額)が統一的な基準に基づいているか
- [ ] 独占禁止法第22条ただし書の不公正な取引方法に該当するおそれがないか確認したか
- [ ] 組合員以外の者(員外者)に本共同事業を利用させていないか
- [ ] 代金決済の方法及び遅延時の対応手続を明記したか
- [ ] 品質・数量に関する異議申立ての期限を定めたか
- [ ] 利用の制限・停止の要件及び手続(催告等)を明記したか
- [ ] 脱退時の精算の基準時及び支払期限を定めたか
- [ ] 手数料率の決定手続(総会議決等)を確認したか
- [ ] 合意管轄その他の一般条項に不備がないか確認したか