取引先と新商品を共同で企画・開発する契約書。特許法第73条の共有発明の取扱いを踏まえ、開発費負担・成果物の帰属・第三者への販売可否を定めます。

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共同商品開発契約書

第1部: 書式本文

共同商品開発契約書

【甲】と【乙】は、新商品【商品名・分野】の共同企画・開発(以下「本開発」という。)に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的) 本契約は、甲及び乙が対等の立場で協力し、別紙「開発計画書」に定めるテーマに基づく新商品を共同で企画・開発するにあたり、役割分担、費用負担、成果物の帰属その他必要な事項を定めることを目的とする。

第2条(役割分担) 甲は主として商品企画、市場調査及び販売戦略の立案を担当し、乙は主として技術検証、試作及び製造仕様の策定を担当する。具体的な役割分担及び作業内容は別紙「開発計画書」記載のとおりとする。

第3条(開発費用の負担) 本開発に要する費用は、別紙「開発計画書」記載の予算及び負担割合(甲【50】パーセント、乙【50】パーセント)に従い甲乙が分担する。当初予算を超過する費用が見込まれる場合、負担方法について甲乙は事前に協議し書面で合意する。

第4条(担当者及び連絡窓口) 甲及び乙は、本開発を円滑に進めるためそれぞれ担当者【氏名・所属】を選任し、相手方に通知する。担当者を変更する場合は速やかに通知する。

第5条(秘密保持) 甲及び乙は、本開発に関連して相手方から開示を受けた技術上又は営業上の情報(以下「秘密情報」という。)を、本開発の目的以外に使用せず、相手方の事前の書面承諾なく第三者に開示又は漏洩してはならない。本条の義務は本契約終了後も【5】年間存続する。

第6条(発明等の取扱い) 甲又は乙の従業員等が単独でなした発明、考案、意匠その他の知的財産(以下「単独発明等」という。)は、当該発明等をなした当事者に帰属する。甲乙の従業員等が共同でなした発明、考案、意匠その他の知的財産(以下「共同発明等」という。)は甲乙の共有とし、持分割合は貢献度に応じて協議のうえ定める。

第7条(共有知的財産権の取扱い) 前条の共同発明等について特許出願等(意匠登録出願を含む。以下同じ。)を行う場合、甲乙は共同で手続を行うものとし、いずれか一方が単独で出願してはならない。出願費用は、別段の合意がない限り持分割合に応じて甲乙が負担する。

第8条(共有知的財産権の実施及び第三者への実施許諾) 甲乙は、共同発明等に係る共有知的財産権について、相手方の同意を要せず自ら実施できる。ただし、第三者への実施許諾(ライセンス)又は持分譲渡には、あらかじめ他の共有者の書面同意を要する。

第9条(成果物である商品の販売) 本開発により完成した商品(以下「本件商品」という。)の販売主体、販売チャネル及び販売地域は別紙「開発計画書」に定めるところによる。乙が本件商品又は類似商品を甲以外の第三者に販売する場合、事前に甲の書面承諾を要する。

第10条(ノウハウの取扱い) 本開発で得たノウハウのうち特許等の出願になじまないもの(製造条件、配合比率、加工方法等)は、甲乙協議のうえ帰属及び第三者への開示制限を別途書面で合意する。合意がない事項は、当該ノウハウを生み出した当事者の秘密情報として第5条の規律に従う。

第11条(第三者の知的財産権侵害) 甲又は乙は、成果物が第三者の知的財産権を侵害しないよう合理的範囲で調査を行う。成果物が第三者の権利を侵害することが判明した場合、その原因を作出した当事者が自己の責任と費用負担で解決する。

第12条(開発中止) 甲又は乙は、本開発の実現可能性が乏しいと合理的に判断される場合、相手方と協議のうえ中止できる。中止までの費用精算は第3条の負担割合に準ずる。

第13条(契約期間) 本契約の有効期間は締結日から【1】年間又は本件商品の完成時のいずれか早い時までとする。ただし第5条、第6条、第7条及び第8条は本契約終了後も存続する。

第14条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己及び役員が暴力団等反社会的勢力に該当せず、将来も該当しないことを確約する。

第15条(協議事項) 本契約に定めのない事項は、甲乙誠実に協議のうえ定める。

第16条(合意管轄) 本契約に関する紛争は、【管轄裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。

【締結日】 甲:【住所・商号・代表者名】(印) 乙:【住所・商号・代表者名】(印)

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 企画主導側向け

A-1. 販売優先権を確保する修正 修正後: 「第9条の規定にかかわらず、乙は本件商品及びこれと実質的に同一の仕様を有する商品を、本契約終了後【2】年間、甲の書面による事前承諾なく第三者に販売してはならない。」 一言解説: 企画・市場調査に主として貢献した甲の立場では、開発成果を乙が横流しし投下資本が回収できなくなる事態を防ぐため、契約終了後も一定期間の販売制限を及ぼす条項が有効である。

A-2. 共有持分割合をあらかじめ固定する修正 修正後: 「第6条の共同発明等に係る持分割合は、甲【60】パーセント、乙【40】パーセントとする。ただし、本開発の主要な技術的着想が専ら乙の従業員等によりなされた場合には、当該発明等に限り甲乙協議のうえ持分割合を見直すことができる。」 一言解説: 企画主導側は事後の貢献度算定における交渉力の差を懸念しやすいため、原則割合を数値で固定しつつ、技術的貢献が偏った場合の例外調整余地を残し公平性とのバランスを取る。

B. 技術提供側向け

B-1. 単独実施の自由を明確化する修正 修正後: 「第8条本文を明確化し、乙は共同発明等を、甲の本件商品と競合しない分野(別紙記載の非競合分野)において、甲の同意を要せず自ら実施し、又は第三者に実施許諾できるものとする。」 一言解説: 特許法第73条第3項は実施許諾に全共有者の同意を要すると定める。汎用性の高い基盤技術を他分野に展開できないと技術提供側の開発参加インセンティブが乏しくなるため、非競合分野における実施の自由を明文化することが有効である。

B-2. 開発費用の先行負担分の回収条項 追加条文例: 「乙が本開発のために先行して投下した設備投資費用(別紙記載額)については、本件商品の売上高に応じたロイヤリティとして甲が乙に別途支払うものとし、支払方法の詳細は甲乙協議のうえ別途合意する。」 一言解説: 技術検証や試作には先行投資を要することが多く、単純な折半負担では乙の投資回収リスクが大きいため、売上連動型の追加対価でリスクとリターンの均衡を図る。

C. 中立・折衷案

C-1. 貢献度評価委員会方式による持分決定 修正後: 「第6条の共同発明等の持分割合は、当初は甲乙均等(各50パーセント)と推定し、いずれかの当事者から異議が出た場合は、甲乙双方選任の各1名の技術者及び双方合意の第三者専門家1名で構成する貢献度評価委員会の意見を踏まえ甲乙協議のうえ最終決定する。」 一言解説: 持分割合を一方に有利に固定すると交渉が難航しやすいため、均等推定を出発点に専門家を交えた評価プロセスを設け、双方が納得しやすい決定手続を用意する。

C-2. 開発中止時の成果物取扱いの折衷ルール 修正後: 「第12条の開発中止時において、中止までに生じた共同発明等が存在する場合、甲乙は当該発明等の実用化可能性を協議し、いずれか一方が単独で実用化を希望するときは、他方に対し出資割合に応じた対価を支払うことで当該発明等に係る持分の譲渡を受けることができるものとする。」 一言解説: 開発中止時に成果物が塩漬けになることを避けるため、対価を支払って持分を買い取り実用化を継続できる仕組みを設け、成果を無駄にしない選択肢を残す。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本契約は、事業会社同士が対等な立場で企画力と技術力を持ち寄り、新商品を共同で企画・開発する場面で用いる。一方当事者が他方の指示で製造作業のみを行う場合は請負契約や製造委託契約として整理すべきで、対等な共同開発の実態がないまま用いると成果物の帰属や費用負担の規律が実態と齟齬をきたすおそれがある。

根拠法令 共同開発による発明が複数当事者の共同によるものである場合、特許法第38条により共有者全員が共同で特許出願をしなければならず、単独出願は拒絶理由(特許法第49条第2号)となる。同法第73条第1項は持分の譲渡又は質権設定に他の共有者全員の同意を要すると定め、同条第2項は別段の定めがない限り各共有者が同意なく自ら実施できると定め、同条第3項は実施許諾に他の共有者全員の同意を要すると定める。本契約第7条・第8条はこれらを踏まえたものである。デザイン成果物には意匠法第36条が特許法の共有規定を準用し、著作物性のある成果物には著作権法第64条が共有著作権の行使に全員合意を要する旨を定めている点にも留意すべきである。

実務でよくある失敗と対策 第一に、共同発明等の持分割合をあらかじめ定めず、後日の貢献度評価で紛争化するケースが多い。開発着手前に持分割合の決定方法(均等推定、評価委員会方式等)を合意しておくことが望ましい。第二に、共有特許権の実施許諾には共有者全員の同意が必要であることを認識せずに契約し、片方が単独で第三者にライセンスしようとしてトラブルになる例がある。特許法第73条第3項の規律を条文上も明記すべきである。第三に、ノウハウなど出願になじまない成果物の帰属を定めず、開発終了後にどちらが自由に使えるか不明確になるケースが見られる。ノウハウの帰属・開示制限は知的財産権とは別建てで条項化する必要がある。

個別事案は専門家への確認が望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 甲乙の役割分担を開発計画書等で具体的に特定したか
  • [ ] 開発費用の負担割合及び予算超過時の協議手続を定めたか
  • [ ] 単独発明等と共同発明等の区別及び帰属ルールを明記したか
  • [ ] 共有知的財産権の持分割合の決定方法を定めたか
  • [ ] 出願手続(共同出願の原則)を明記したか
  • [ ] 自己実施及び第三者への実施許諾の同意要件を特許法第73条に沿って規定したか
  • [ ] ノウハウの帰属・開示制限を別途定めたか
  • [ ] 本件商品の販売主体・販売チャネル・競合品制限を明記したか
  • [ ] 第三者の知的財産権侵害時の責任分担を定めたか
  • [ ] 開発中止時の費用精算及び成果物の取扱いを定めたか