土地の売買や分筆の前提として隣地所有者と境界点を確認する筆界確認書。民法第223条の境界標設置権と不動産登記法の筆界特定制度を踏まえた記載例を収録。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
境界確認書(筆界確認書)
第1部: 書式本文
第1条(当事者及び対象土地) 土地所有者甲(別紙物件目録記載の土地の所有者)及び隣地所有者乙(隣接する別紙物件目録記載の土地の所有者)は、両土地の境界(筆界)について、別紙測量図記載のとおり確認する。
第2条(境界点の確認) 甲及び乙は、別紙測量図に表示された境界点(座標値〇〇、境界標の種類〇〇)が、甲乙両土地の境界であることを相互に確認する。
第3条(境界標の設置) 甲及び乙は、確認した境界点に恒久的な境界標(コンクリート杭、金属鋲等)を設置することに合意し、設置費用は別紙のとおり分担する。
第4条(現地立会いの実施) 本境界確認は、〇年〇月〇日に土地家屋調査士〇〇〇〇の立会いのもと、甲及び乙が現地において境界点を確認したことに基づく。
第5条(境界確認の効力) 本確認書は、甲乙間における私法上の境界(所有権界)の合意であり、公法上の筆界(不動産登記法上の筆界)を確定するものではないことを相互に確認する。
第6条(将来の分筆・売買への利用) 甲及び乙は、本確認書及び添付の測量図を、将来の分筆登記、地積更正登記又は売買契約における境界確認資料として使用することができる。
第7条(承継人への効力) 本確認書の内容は、甲及び乙それぞれの相続人及び特定承継人(土地の譲受人)に対しても効力を有するものとし、甲及び乙は土地を譲渡する場合、譲受人に本確認書の内容を承継させるものとする。
第8条(境界標の維持管理) 甲及び乙は、設置した境界標を故意又は過失により毀損又は移動させないよう努め、毀損等を発見したときは相互に通知する。
第9条(異議の不申立て) 甲及び乙は、本確認書に署名押印した以上、後日、別段の資料が発見された場合を除き、本確認内容について異議を申し立てないものとする。
第10条(道路等の官民境界) 対象土地が道路その他の公共用地に接する場合、官民境界の確定については別途道路管理者との立会い・協議によるものとし、本確認書の対象には含まれない。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 土地所有者(境界確認を求める側)向けの修正
A-1. 境界確定資料の網羅的収集条項の追加
追加条文例:「甲は、本確認に先立ち、公図、地積測量図、過去の分筆図その他境界に関する資料を収集し、乙に開示のうえ協議したことを確認する。」 一言解説: 境界確認の合意の信頼性を高めるため、過去の資料に基づく協議経緯を書面上残しておく修正である。
B. 隣地所有者向けの修正
B-1. 境界確認が権利関係全般に影響しない旨の確認
追加条文例:「本確認書は境界(所有権界)についてのみの合意であり、通行権、越境物の取扱いその他の権利関係については別途協議するものとし、本確認書によって当然に解決されるものではない。」 一言解説: 境界確認と付随する他の権利関係(通行権や越境物の問題)を混同しないよう明確化する、隣地所有者側の懸念に配慮した修正である。
C. 土地家屋調査士(専門家)が交付する場合の記載
C-1. 測量の精度及び使用機器に関する記載
追加条文例:「本確認に用いた測量は、トータルステーションによる〇級基準点測量に基づくものであり、誤差の範囲は別紙精度管理表のとおりである。」 一言解説: 測量成果の信頼性を裏付ける情報を記載することで、将来の筆界特定手続や登記申請における疎明資料としての価値を高める趣旨である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、土地の売買、分筆、建築計画等を契機として、隣接する土地の所有者同士が境界(所有権界)の位置について現地で確認し、合意を書面化する場面で用いる。他方、当事者間で境界の位置について見解の相違があり合意に至らない場合には、本書式による解決は想定されておらず、法務局の筆界特定制度の利用や、境界確定訴訟(所有権確認訴訟)等の別の手続を検討する必要がある。
根拠法令 民法第223条は、土地の所有者は隣地所有者と共同の費用で境界標を設けることができる旨を定め、同法第224条は境界標の設置及び保存の費用を等しい割合で負担する旨を定める(ただし測量の費用は土地の広狭に応じて負担する)。境界には、私法上の所有権の及ぶ範囲を画する「所有権界」と、公法上、一筆の土地が他の一筆の土地と区画されることによって生ずる線である「筆界」の2つの概念があり、両者は多くの場合一致するが理論上区別される。不動産登記法に基づく筆界特定制度(同法第123条以下)は、公法上の筆界を行政的に特定する手続であり、当事者間の合意(所有権界の確認)とは法的性質が異なる。
実務でよくある失敗と対策 第一に、所有権界の確認と筆界の確定を混同し、本確認書があれば公的な筆界も確定したものと誤解してしまう失敗がある。第5条のように両者の違いを明記することで防止する。第二に、境界確認書に署名押印した後、境界標が地震や工事等により移動・滅失した際に、境界の位置を再現できなくなる失敗がある。第3条・座標値の記録及びC-1のような測量精度の記載により、境界標が失われた場合でも復元できるようにしておくことが重要である。第三に、境界確認と同時に生じやすい越境物(樹木の枝、ブロック塀等)の問題を境界確認書に混在させてしまい、境界そのものについての合意が越境物の解決と条件的に結び付けられて紛争が長期化する失敗がある。B-1のように両者を明確に分離して扱うことが望ましい。
第四に、隣地が共有名義であるにもかかわらず共有者の一部のみとの間で確認書を取り交わし、後日、確認に関与しなかった共有者から境界について異議を述べられる失敗もある。共有名義の隣地については、原則として共有者全員の署名押印を得ることが望ましい。第五に、確認書の署名押印を急ぐあまり、境界標の設置及び測量図の作成を後回しにしてしまい、合意内容を客観的に示す資料が不十分なまま書面のみが先行してしまう失敗もある。境界確認は測量図及び境界標の設置とセットで行うことにより、将来の紛争予防効果が高まる。
境界に関する紛争は感情的対立に発展しやすく、合意形成の過程が将来の証拠として重要になるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。土地家屋調査士や弁護士の関与を得ることが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 公図、地積測量図等の既存資料を収集し、隣地所有者と共有したか
- [ ] 土地家屋調査士による現地立会い及び測量を実施したか
- [ ] 境界標の種類及び設置費用の分担方法を確認したか
- [ ] 所有権界の確認と筆界の確定が別概念であることを当事者双方が理解しているか確認したか
- [ ] 越境物等の付随する問題を境界確認と切り離して扱っているか確認したか
- [ ] 承継人(相続人・譲受人)への効力について明記したか
- [ ] 測量図の座標値・境界点番号が確認書の記載と整合しているか確認したか
- [ ] 隣地所有者が複数(共有名義等)の場合、全員の署名押印を取得したか
- [ ] 測量図及び境界標の設置を確認書の作成と併せて実施したか
- [ ] 官民境界(道路等)がある場合、道路管理者との立会いの要否を確認したか