土地の筆界や所有権界に争いがある場合に、民法第223条の境界標設置や筆界特定制度を示して隣地所有者へ協議を申し入れる書面です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
境界確定協議申入書
第1部: 書式本文
土地境界確定協議の申入書
【隣地所有者住所】 【隣地所有者氏名・名称】 様
作成日: 【西暦】年【月】月【日】日
差出人: 【申入人住所】 【申入人氏名・名称】 印
件名: 境界確定協議の申入れ
申入人は、貴殿に対し、下記のとおり申し入れる。
- 申入人は【申入人所有土地の所在地・地番】(以下「甲地」という。)を所有しており、貴殿は隣接する【隣地の所在地・地番】(以下「乙地」という。)を所有している。
- 甲地と乙地の境界について、【争いの経緯。例: 塀の位置、越境の指摘、測量の結果判明した相違点】により、当事者間で認識に相違が生じている。
- 現況では、【現況の説明。例: ブロック塀・フェンス・境界標の位置】をもって境界の目安としているが、これが公法上の境界(筆界)と一致しているかについて確証がない。
- 民法第223条は、土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる旨を定めている。
- 民法第224条は、境界標の設置及び保存の費用は相隣者が等しい割合で負担する旨を定めており、ただし測量費用については土地の広狭に応じて負担する旨が定められている。
- 申入人は、貴殿に対し、境界確定のための協議に応じることを求める。具体的には、次の対応を想定している。
- 双方立会いのもとでの現地確認
- 土地家屋調査士等の専門家による測量の実施
- 境界確認書(筆界確認書)の取り交わし
- なお、筆界(公法上の境界)は、土地の分筆当時の境界を示すものであり、当事者の合意のみで変更することはできない。本協議は、あくまで筆界の位置を確認するためのものであり、新たに境界を創設するものではない。
- 申入人は、本書面到達後【回答期限。例: 3週間】以内に、協議の日程についてご回答いただきたい。
- 協議によっても境界について合意に至らない場合、申入人は、不動産登記法上の筆界特定制度の利用、または境界確定訴訟の提起を検討する。
- 本申入書は、申入人が有するその他の請求権その他一切の権利を放棄するものではない。
以上
回答・立会日程の連絡先 【送付先住所】 【申入人氏名】 【電話番号・メールアドレス】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 申し入れる側
修正後の文例:
申入人は、【測量会社名・実施日】による現況測量の結果、乙地との境界線について、現況の塀の位置と登記上の地積測量図に約【差異の程度】の相違があることを確認した。ついては、貴殿に対し、双方立会いのもとでの境界確認及び境界確認書の取り交わしを求める。
一言解説: 現況測量や地積測量図など客観的な資料に基づいて相違点を具体的に示すことで、協議の出発点を明確にでき、後の筆界特定手続や境界確定訴訟に移行した場合の資料としても活用しやすい。
B. 隣地所有者側
修正後の文例:
ご指摘の境界の位置については、当職としても従前より疑問を持っていた部分であり、協議には応じる。ただし、当職が保有する【資料名。例: 購入時の重要事項説明書に添付された測量図】では現況の塀の位置が境界であるとされており、この資料も踏まえたうえで、双方の資料を持ち寄って協議を進めたい。
一言解説: 隣地所有者としては、一方的に相手方の主張を認めるのではなく、自らが保有する資料を提示して協議のテーブルに着く姿勢を示すことで、後の筆界特定手続等における自己の主張の一貫性を保ちやすくなる。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、隣接する土地の境界について、塀やフェンスなど現況の目印と登記上の資料との間に相違がある、あるいは越境の疑いがあるなど、当事者間で境界の位置に関する認識の相違が生じている場合に、話し合いによる確認を求める場面で用いる。他方、境界そのものには争いがなく単に越境物の撤去のみを求める場合や、既に筆界特定手続や訴訟が係属している場合には、別の書式・手続を検討すべきである。
根拠法令としては、民法第223条(境界標の設置権)及び第224条(設置・保存費用の分担)がまず挙げられる。もっとも、これらは境界標という物理的な目印の設置に関する規定であり、筆界(公法上の境界)そのものを確定させる効力を持つものではない点に注意が必要である。筆界は、分筆・合筆等の際に定まった公法上の境界であり、たとえ隣地所有者双方が合意しても、私人間の合意のみでこれを変更することはできない。これに対し、所有権界(私法上の境界)は当事者間の合意や時効取得等により筆界と異なる位置に生じ得るため、協議によって解決できるのは主として所有権界の範囲にとどまる場合が多い。
筆界そのものについて争いがあり協議が調わない場合には、不動産登記法第123条以下に定める筆界特定制度を利用することができる。これは法務局に置かれる筆界特定登記官が、外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて筆界の位置を非訟的手続で特定する制度であり、訴訟に比べて簡易・迅速な解決が期待できる。他方、筆界特定の結果に不服がある場合や、そもそも所有権の範囲(所有権界)自体を争う場合には、境界確定訴訟(形式的形成訴訟としての性質を持つとされる)を提起することになる。境界確定訴訟は、通常の給付訴訟や確認訴訟とは異なり、裁判所が当事者の主張に拘束されずに客観的な筆界の位置を形成的に判断する特殊な訴訟類型であるとされており、この点も協議段階で相手方に説明しておくと理解を得やすい。
実務でよくある失敗の一つ目は、筆界と所有権界の違いを理解せず、隣地所有者との合意書のみで筆界が確定したと誤解してしまうことである。境界確認書を取り交わしても、それはあくまで当事者間における所有権界の合意にとどまり、法務局に備え付けられた地図・公図上の筆界を直接変更する効力は生じない。対策として、本文7項のように、協議はあくまで筆界の位置を確認するものであり当事者の合意で筆界を創設するものではない旨を明記している。
二つ目の失敗は、現況の測量図や地積測量図を確認しないまま感覚的な位置関係のみで協議を申し入れてしまうことである。古い分譲地や区画整理を経ていない土地では、地積測量図自体が存在しない、又は精度が低い場合もあるため、対策として、本文6項のように土地家屋調査士等による現地測量の実施を協議事項に含めている。
三つ目の失敗は、協議が決裂した場合の次の手続(筆界特定制度・境界確定訴訟)を全く想定せずに交渉を進め、時間を空費してしまうことである。筆界特定制度は法務局への申請により比較的短期間で筆界の特定を得られる一方、その結果に不服がある当事者は改めて境界確定訴訟を提起する余地が残る。対策として、本文9項で次の手続の選択肢を示しているが、いずれの手続を選ぶべきかは土地の状況や証拠の有無、隣地所有者との関係性によって異なるため、個別事案については専門家に確認したうえで進めることが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象土地の地番・登記情報を確認したか
- [ ] 現況(塀・フェンス・境界標)の位置を写真等で記録したか
- [ ] 地積測量図・確定測量図など既存の測量資料を確認したか
- [ ] 争いの対象が筆界か所有権界かを整理したか
- [ ] 隣地所有者の氏名・住所・所有権登記名義を確認したか
- [ ] 土地家屋調査士など専門家への測量依頼の要否を検討したか
- [ ] 協議で合意に至らない場合の次の手続(筆界特定制度・境界確定訴訟)を把握したか
- [ ] 不動産登記法第123条以下の筆界特定制度の利用要件・費用を確認したか
- [ ] 境界確認書(筆界確認書)の様式・押印方法を確認したか
- [ ] 回答期限及び立会い日程の候補を具体的に示したか