債務者が行った弁済供託を債権者が受け入れる意思表示の書面で、民法第498条に基づき供託金の還付を請求する前提として提出します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
供託受諾書
第1部: 書式本文
供託受諾書
宛先: 【供託者(債務者)住所】 【供託者(債務者)氏名・名称】 御中
作成日: 【西暦】年【月】月【日】日
差出人: 【債権者住所】 【債権者氏名・名称】 【担当部署・担当者名】 印
件名: 供託受諾の意思表示について
貴殿が下記のとおり行った弁済供託(以下「本供託」という。)につき、当職は次のとおりこれを受諾する。
- 本供託の表示。供託所【供託所名】、供託番号【令和◯年度金第◯号】、供託日【供託日】、供託金額【供託金額】円。
- 当職は、貴殿から本供託がされた旨の通知(【通知受領日】到達)を受領した。
- 当職は、本書面をもって、本供託を受諾する旨の意思表示を行う。
- 民法第496条第1項により、供託者は、債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、供託物を取り戻すことができるとされているところ、当職による本受諾により、貴殿の取戻請求権は消滅するものと理解している。
- 当職は、本受諾後、民法第498条第1項に基づき、供託所に対して供託物の還付を請求する予定である。
- 本供託につき反対給付が条件とされている場合、当職は、【反対給付の内容及び履行方法】を履行し、又はその履行を証する書面を供託所に提出のうえ還付請求を行う。
- 当職は、本受諾に際し、供託原因(受領拒絶・受領不能・債権者不確知)の存否及び供託金額の当否について、【異議を留めない/次のとおり異議を留める】。
- 【異議を留める場合】当職は、供託金額が本来の債務額に満たないと考えており、この点についての異議を留めたうえで受諾する。差額分の請求権は放棄しない。
- 本受諾書の提出は、当職が本供託に係る債権以外の権利を放棄する趣旨を含むものではない。
- 本書面の写しは当職において保管し、還付請求手続の際に供託所へ提出することがある。
- 当職は、本受諾書の提出後、貴殿に対し【還付請求完了予定日】までに還付請求手続を完了する見込みであることを申し添える。
- 還付請求手続に際しては、本受諾書のほか、当職の印鑑証明書及び本人確認資料の提出を求められる場合があるため、供託所の指示に従い準備する。
以上
連絡先 【連絡先住所】 【担当部署・担当者名】 【電話番号・メールアドレス】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 受諾する債権者側
修正後の文例:
当職は、本供託の供託金額が本来の債務額に不足していると考えるが、当面の資金確保を優先し、不足額について別途請求する権利を留保したうえで本供託を受諾する。
一言解説: 供託金額に不服がある場合でも、異議を留めて受諾すれば不足分を後日請求する余地を残せるため、無留保での受諾と使い分ける必要がある。受諾書を提出する前に、供託金額と本来の債権額との差額を具体的に計算し、差額請求の根拠資料を準備しておくとよい。
B. 供託した債務者側
修正後の文例:
貴殿より本供託を受諾する旨のご連絡をいただいた。本受諾により、当職は民法第496条第1項に基づく供託物取戻請求権を失うものと認識し、以後、本供託に係る債務について貴殿から重ねて履行を求められることのないよう申し添える。
一言解説: 債務者側で受諾書を受け取った際は、取戻権喪失の効果を確認し、二重請求を防ぐための返信を残しておくと後日の紛争予防になる。あわせて、受諾書に記載された供託金額や供託番号が自らの供託記録と一致しているかを照合し、不一致があれば速やかに指摘することが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、債務者が行った弁済供託について、債権者がこれを受け入れる意思を明確にし、供託金の還付請求手続に進む前提を整える場面で使用する。供託原因の存在自体に強い疑義があり、供託の有効性そのものを争う予定がある場合には、安易に受諾書を提出すべきではない。受諾は原則として撤回できず、後から供託の無効を主張することが難しくなるためである。また、供託金額に明らかな誤りがあり、まず訂正を求めるべき段階であるにもかかわらず先に受諾書を提出することも避けるべきである。
根拠法令は、民法第498条第1項(供託物の還付請求権は債権者に帰属すること)、同条第2項(反対給付を要する場合の還付請求の条件)、そして本書式に特有の重要な効果として民法第496条第1項(債権者の受諾又は供託を有効と宣告する判決の確定により、供託者の取戻請求権が消滅すること)である。受諾書の提出は、この取戻請求権消滅という効果を確定させる行為である点を理解しておく必要がある。
実務でよくある失敗の一つ目は、供託金額が本来の債権額に満たないことを認識しながら、異議を留めずに無条件で受諾してしまうことである。無留保の受諾は、供託金額を債務全額の弁済として承認したものと評価されるおそれがあり、後日の差額請求が困難になる。対策として、本文7項及び8項に異議留保の有無を明記する条項を設け、不足額の請求権を残す選択肢を示している。
二つ目の失敗は、受諾により供託者の取戻請求権が消滅するという効果を理解しないまま受諾書を出してしまい、後になって供託原因の不存在を理由に供託自体を争おうとすることである。いったん受諾すれば、取戻しは既に不可能であり、原因を争うとしても還付請求とは別の法律構成が必要になる。対策として、本文4項で取戻請求権消滅の効果を明記し、受諾の意味を当事者双方に確認させている。
三つ目の失敗は、反対給付を要する供託であるにもかかわらず、その履行方法や証明手段を確認しないまま還付請求に進み、供託所で手続が停滞することである。対策として、本文6項に反対給付の履行方法を具体的に記載する条項を設けている。受諾によって生じる法的効果は事案ごとの供託原因や契約内容によって異なるため、個別事案は専門家に確認したうえで受諾の可否を判断することが望ましい。
四つ目の失敗は、還付請求手続に必要な添付書類(印鑑証明書、本人確認資料等)を確認しないまま受諾書だけを提出し、実際の還付請求の段階で手続が滞ることである。受諾書はあくまで意思表示の書面であり、還付請求そのものは別途所定の請求書及び添付書類の提出が必要になる。対策として、本文12項に還付請求時の必要書類への言及を置き、受諾書提出後の手続を見据えた準備を促している。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 供託所名、供託番号、供託日、供託金額を正確に転記したか
- [ ] 供託原因(受領拒絶・受領不能・債権者不確知)の存否について自らの認識を整理したか
- [ ] 供託金額が本来の債権額に不足していないか確認したか
- [ ] 不足がある場合、異議を留めて受諾するかどうかを判断したか
- [ ] 受諾により取戻請求権(民法第496条第1項)が消滅する効果を理解しているか
- [ ] 反対給付を要する供託かどうか、その履行方法を確認したか
- [ ] 還付請求(民法第498条)に必要な書類を供託所に確認したか
- [ ] 供託の有効性自体を争う可能性がないか、受諾前に検討したか
- [ ] 受諾書の控えを保管し、供託所提出用の原本を準備したか
- [ ] 還付請求時に必要となる印鑑証明書・本人確認資料を準備したか
- [ ] 供託記録(供託番号・供託金額)と受諾書の記載内容が一致しているか照合したか
- [ ] 内容証明郵便での送付要否を検討したか