相続などで生じた不動産の共有持分を他の共有者や第三者へ売却する契約書。民法第249条以下の共有規定と第256条の分割請求を踏まえ、持分割合と使用収益を明記。

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共有持分売買契約書

第1部: 書式本文

第1条(目的物件) 売主は、別紙物件目録記載の不動産(以下「本物件」という。)について有する共有持分〇分の〇(以下「本持分」という。)を買主に売り渡し、買主はこれを買い受ける。

第2条(共有者の構成) 本物件の共有者は、売主のほか別紙「共有者一覧表」記載のとおりである。買主は、本契約締結時点における他の共有者の氏名、住所及び持分割合を確認したことを表明する。

第3条(売買代金) 売買代金は金〇〇円とし、買主は手付金〇〇円を契約締結時に、残代金を引渡日に支払う。

第4条(持分の範囲) 本持分の売買には、本物件に付随する共有物の使用収益権及び共有物分割請求権を含むものとする。

第5条(他の共有者への通知) 売主は、本契約締結後速やかに他の共有者に対し、持分の譲渡があった旨を通知する。買主は、他の共有者との円満な関係構築に努めるものとする。

第6条(賃貸借契約がある場合の取扱い) 本物件が第三者に賃貸されている場合、売主は当該賃貸借契約の内容を買主に開示し、持分に応じた賃料収受権の承継について別紙で定める。

第7条(共有物の管理費用の分担) 本物件の管理に要する費用(固定資産税、修繕費等)について、引渡日を基準として日割精算する。

第8条(共有物分割請求) 買主は、本持分の取得後、民法第256条に基づき他の共有者に対し共有物分割の請求をすることを妨げられない。ただし、共有者間で分割をしない旨の契約(不分割特約)が存する場合は別紙のとおりとする。

第9条(先買権・優先交渉権の有無) 他の共有者が本物件について優先的に買い受ける権利(法令上又は共有者間の合意上のもの)を有するか否かを別紙に記載する。

第10条(契約不適合責任) 引き渡された本持分に係る本物件が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は民法の定めるところにより履行の追完、代金減額、損害賠償又は解除を請求することができる。

第11条(合意管轄) 本契約に関する紛争は、本物件所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 持分売主向けの修正

A-1. 他の共有者との紛争不存在の表明保証を限定

修正後:「売主は、本契約締結日現在、売主が現に認識している範囲において、他の共有者との間に本物件の管理・使用収益に関する重大な紛争が存しないことを表明する。」 一言解説: 共有者間の人間関係に起因する潜在的な不和まで無条件に保証することを避け、売主の表明保証責任を認識の範囲に限定する修正である。

B. 持分買主向けの修正

B-1. 使用収益の実態調査への協力義務の追加

追加条文例:「売主は、買主が本契約締結前に本物件の現況(占有状況、他の共有者による使用の実態)を調査することに協力し、必要な資料を開示する。」 一言解説: 共有持分の価値は現況の使用収益の実態(誰がどの部分を占有しているか)に大きく左右されるため、買主が事前調査を尽くせるようにする修正である。

B-2. 分割請求権を制限しない旨の確認条項

追加条文例:「本契約のいかなる条項も、買主が民法第256条に基づき有する共有物分割請求権を制限するものと解釈してはならない。」 一言解説: 買主が持分を取得する主目的が最終的な共有物分割(現物分割、代金分割、価格賠償による分割)である場合、当該権利行使が契約上制限されないことを明確にする趣旨である。

C. 他の共有者向けの確認事項

C-1. 持分譲渡通知への回答書式の追加

追加記載例(他の共有者が確認する書面):「本物件の共有者〇〇〇〇は、売主から持分譲渡の通知を受けたことを確認する。当該譲渡について異議はない/以下の懸念がある(具体的に記載)。」 一言解説: 共有持分の譲渡は他の共有者の承諾を要しないのが原則であるが、良好な共有関係を維持するために事実上の通知・確認プロセスを設ける実務対応である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、相続等により生じた不動産の共有関係において、共有者の一人が自己の持分のみを他の共有者又は第三者に売却する場面で用いる。共有不動産の全体(全共有者の持分すべて)を一括して第三者に売却する場合は、通常の不動産売買契約書に全共有者を売主として連署させる形式を用いるべきであり、本書式はあくまで一部の持分のみの譲渡を対象とする。

根拠法令 民法第249条以下は共有に関する基本規定であり、各共有者は共有物の全部について持分に応じた使用をすることができる(第249条)。共有物の変更には共有者全員の同意を要し(第251条)、管理に関する事項は各共有者の持分の価格に従い過半数で決する(第252条)。持分の譲渡自体は各共有者が単独で自由に行うことができ、他の共有者の同意を要しないのが原則である。民法第256条は、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できる旨を定めるが、5年以内の期間を定めて分割をしない旨の契約(不分割特約)をすることも認められている。

実務でよくある失敗と対策 第一に、他の共有者の人数や持分割合を正確に把握しないまま契約し、後日、権利関係の錯誤が判明する失敗がある。第2条のように共有者一覧表を添付し、登記事項証明書で最新の持分割合を確認することが望ましい。第二に、共有物の現況(誰がどの部分を実際に使用しているか)を調査せずに持分のみを取得し、買主が想定した使用収益ができない失敗がある。共有持分は登記上の権利であって特定の部分を排他的に使用する権利を当然に含むものではないため、B-1のように事前調査への協力義務を明記することが有効である。第三に、共有物分割請求権の行使が事実上困難な物件(共有者間の対立が激しい、不分割特約が存在する等)であることを説明せずに売却し、買主が最終的な現金化に長期間を要する失敗がある。分割請求権の行使見込みについて、契約締結前に十分な説明を行うことが望ましい。

第四に、共有持分にのみ抵当権等の担保権が設定されている場合に、担保権の実行リスクを買主に説明しないまま契約し、引渡し後に競売の申立てを受けて買主が不測の損害を被る失敗もある。持分単独に対する担保権の有無は不動産登記事項証明書の乙区で確認できるため、契約締結前に必ず確認し、担保権が存する場合は抹消又は承継の取扱いを条項化しておく必要がある。

共有関係の実態や分割請求の見込みは事案ごとに大きく異なるため、契約締結前に専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 登記事項証明書で他の共有者及び持分割合の最新状況を確認したか
  • [ ] 共有物の現況(占有・使用収益の実態)を調査したか
  • [ ] 不分割特約の有無及びその残存期間を確認したか
  • [ ] 賃貸借契約がある場合、賃料収受権の承継方法を確認したか
  • [ ] 他の共有者との間で紛争(境界、管理費用の未払い等)がないか確認したか
  • [ ] 買主が共有物分割請求権を行使する予定の有無とその見込みを確認したか
  • [ ] 固定資産税等の管理費用の分担・精算方法を確認したか
  • [ ] 先買権又は優先交渉権に関する共有者間合意の有無を確認したか
  • [ ] 買主が持分取得後に他の共有者との協議を行う体制を準備しているか確認したか
  • [ ] 登記事項証明書乙区で持分単独に対する担保権の有無を確認したか
  • [ ] 担保権が存する場合、抹消又は承継の取扱いを条項化したか