共有の不動産を分割し単独所有にする場面の書式。民法第256条の分割請求と第258条の裁判分割を踏まえ、現物・代償・換価の方法を定めます。

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共有物分割協議書

第1部: 書式本文

共有者〇〇〇〇(以下「甲」という。)及び共有者〇〇〇〇(以下「乙」という。)は、下記共有不動産(以下「本件共有物」という。)について、次のとおり分割協議が成立したので、これを証するため本協議書(以下「本協議書」という。)を作成する。

第1条(共有物の表示及び持分) 本件共有物は別紙物件目録記載の不動産であり、甲の持分は〇分の〇、乙の持分は〇分の〇である。

第2条(分割の方法) 甲及び乙は、本件共有物について、【現物分割・代償分割・換価分割】のいずれかの方法により分割することに合意する。本書式では代償分割を前提とし、次条以下に定める。

第3条(代償分割の内容) 甲は、本件共有物の全部を単独で取得する。乙は、本件共有物に対する持分の全部を甲に移転する。

第4条(代償金の支払) 甲は、乙に対し、前条の持分取得の代償として金【代償金額】円を、【支払期限】までに乙が指定する銀行口座に振り込んで支払う。

第5条(所有権移転登記) 乙は、前条の代償金の支払を受けたときは、甲に対し、乙の持分について持分移転登記手続をする。登記費用は【負担者】の負担とする。

第6条(現物分割を選択する場合の代替条項) 現物分割による場合、甲及び乙は、本件共有物を別紙分割図のとおり分筆し、甲は【分筆後の甲取得部分】を、乙は【分筆後の乙取得部分】を、それぞれ単独所有とする。

第7条(換価分割を選択する場合の代替条項) 換価分割による場合、甲及び乙は、本件共有物を第三者に売却し、売却代金から売却に要した費用を控除した残額を、甲乙の持分割合に応じて分配する。

第8条(公租公課の清算) 本件共有物に係る固定資産税その他の公租公課は、分割の効力発生日を基準として日割り計算により清算する。

第9条(既存の使用貸借・賃貸借の取扱い) 本件共有物について第三者との間で賃貸借契約が存在する場合、当該契約上の地位は、分割後に本件共有物を取得する当事者が承継する。

第10条(清算条項) 甲及び乙は、本協議書に定めるもののほか、本件共有物に関し何らの債権債務がないことを相互に確認する。

【協議成立日】

甲: 【住所・氏名】 印 乙: 【住所・氏名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 共有者(取得する側)向けの修正

A-1. 代償金の分割払いと持分移転のリンク

修正後:「甲は、代償金を【回数】回に分割して支払うことができるものとし、乙の持分移転登記は、代償金全額の支払完了と同時に行う。」 一言解説: 一括での代償金支払が困難な場合、取得者側は分割払いを求めつつ、登記移転を完済とリンクさせることで乙側の未払リスクへの配慮を両立させる修正である。

A-2. 取得後の担保責任の限定

追加条文例:「乙は、本件共有物の物理的状態について、甲に対し契約不適合責任を負わない。ただし、乙が知りながら告げなかった事実に基づく損害についてはこの限りでない。」 一言解説: 共有物分割は通常の売買とは性質が異なるため、取得者側の過度な責任追及を避けつつ悪意隠匿には例外を残す修正である。

B. 共有者(持分を手放す側)向けの修正

B-1. 代償金額算定根拠の明記

追加条文例:「本件共有物の評価額は、不動産鑑定士による鑑定評価書(令和【 】年【 】月【 】日付)に基づき算定した金【評価額】円とし、乙の代償金額は当該評価額に乙の持分割合を乗じた金額とする。」 一言解説: 代償金額が持分の実際の価値を反映しているかは手放す側にとって重要であるため、客観的な評価根拠を明記する修正である。

B-2. 支払遅延時の遅延損害金及び解除条項

追加条文例:「甲が代償金の支払を遅滞した場合、乙は年【利率】%の割合による遅延損害金を請求できるほか、【猶予期間】を経過してもなお支払われないときは本協議を解除し、共有関係が復元されたものとみなすことができる。」 一言解説: 代償金の支払が滞ったまま持分を失う事態を避けるため、手放す側は遅延損害金と解除による原状回復の手段を確保する修正である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、相続や共同購入などにより複数人が共有する不動産について、共有者間の協議により単独所有への転換又は共有関係の解消を図る場面で用いる。共有者間で協議が調わない場合には、本書式のような協議書を作成することはできず、裁判所への共有物分割請求訴訟による裁判分割によることになる。また、共有物分割は遺産分割前の共同相続財産(遺産共有)には原則として適用されず、遺産共有の場合は家庭裁判所における遺産分割手続によるべき点にも注意する(ただし、令和5年施行の改正民法により相続開始から10年経過後は共有物分割の手続による解消も可能となる場合がある)。

根拠法令 共有物の分割については、民法第256条第1項が各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができる旨を定める(ただし5年以内の期間を定めた不分割特約は有効)。協議が調わないときは、同法第258条に基づき裁判所に分割を請求することができ、裁判所は現物分割、賠償分割(代償分割)又は競売による換価分割を命ずることができる。令和3年民法改正により、裁判による共有物分割の方法として賠償分割(共有者の一人に他の共有者の持分を取得させ、その者に価格を賠償させる方法)が明文化された(改正民法第258条第2項第2号)。また、相続財産である不動産の共有(遺産共有)については、遺産分割協議(民法第907条)によるのが原則だが、相続開始から10年を経過した場合には、民法第904条の3の例外に該当しない限り、通常の共有物分割の手続で処理できる場合がある。

実務でよくある失敗と対策 第一に、代償分割において代償金額の算定根拠が曖昧なまま合意し、後日その金額の相当性を巡って紛争が再燃する失敗がある。B-1のように鑑定評価等の客観的根拠を明記することが対策となる。第二に、代償金を分割払いとしたにもかかわらず持分移転登記を先行して行ってしまい、支払が滞った後の回収が困難になる失敗がある。A-1のように登記移転と代償金完済をリンクさせることが対策となる。第三に、遺産共有の状態にある不動産について、遺産分割手続を経ずに共有物分割協議書のみで処理しようとし、後日その効力が争われる失敗がある。対象不動産が遺産共有か通常共有かを事前に確認することが対策となる。

分割方法の選択及び代償金額の算定は不動産の性質や共有者の意向により異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 本件共有物が遺産共有か通常共有かを確認したか
  • [ ] 分割方法(現物分割・代償分割・換価分割)を共有者間で合意したか
  • [ ] 代償分割の場合、評価額の算定根拠(鑑定評価等)を用意したか
  • [ ] 代償金の支払方法及び期限を明記したか
  • [ ] 代償金支払と持分移転登記のタイミングを整理したか
  • [ ] 代償金支払遅延時の遅延損害金・解除条項を検討したか
  • [ ] 登記費用等の諸費用の負担者を確認したか
  • [ ] 既存の賃貸借契約がある場合の承継関係を確認したか
  • [ ] 公租公課の清算方法(日割り計算)を定めたか
  • [ ] 分割後に共有者間で債権債務が残らないことを確認する清算条項を設けたか