事故により休業した期間と減収額を勤務先が証明する書式です。休業日数、給与の支給状況、有給休暇の使用有無を記載します。関連書式とあわせて使うことで手続の漏れを防げます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
休業損害証明書
第1部: 書式本文
休業損害証明書
〇〇〇〇殿(被証明者)について、下記のとおり就労及び休業の状況を証明する。
1. 勤務先の表示 名称【 】、所在地【 】、代表者又は証明担当者の役職・氏名【 】、連絡先電話番号【 】
2. 被証明者(被害者)の表示 氏名【 】、生年月日【 】、入社年月日【 】、所属部署・職種【 】
3. 雇用形態及び給与体系 雇用形態は【正社員・契約社員・パート・アルバイト・日雇い】のいずれかであることを表示し、給与の計算方法は【月給制・日給制・時給制・歩合制】のいずれであるかを記載する。
4. 事故発生日及び受傷内容の把握経緯 事故発生日【 年 月 日】。被証明者からの申告及び診断書の提示により、勤務先が休業の必要性を把握した経緯を付記する。
5. 休業期間 全休業期間【 年 月 日から 年 月 日まで(実働日数換算で 日)】。就業規則上の所定労働日のうち、実際に労務を提供しなかった日数を欄外の別紙(休業日一覧)に日別で明示する。
6. 事故前3か月間の給与支給実績 事故発生日直前の給与締切日から遡る3賃金計算期間について、各期間の総支給額(基本給、諸手当、時間外手当を含み、通勤手当等の実費弁償的なものを除く。)及び稼働日数を月別に記載する。労働基準法第12条にいう平均賃金の算定基礎に準じた記載とする。
7. 休業期間中の給与支給状況 休業日について給与を【全額支給・一部支給・不支給】のいずれとしたかを明示し、一部支給の場合は支給額及び算定根拠を記載する。
8. 有給休暇の使用状況 休業に充てるため年次有給休暇を使用したか否かを明示し、使用した場合はその日数及び使用日を特定する。有給休暇使用日は無給休業日と区別して集計する。
9. 賞与への影響 休業を理由として賞与の減額又は不支給が生じた場合、その減額幅及び算定方法を記載する。生じていない場合はその旨を明記する。
10. 社会保険料等の取扱い 休業期間中における健康保険・厚生年金保険料の被保険者負担分の控除の有無及び方法を記載する。
11. 証明者の宣誓文言 「本証明書に記載した事項は、当社の給与台帳、出勤簿その他の帳簿類に基づき、事実に相違ないことを証明する。」との文言を付す。
12. 証明日及び記名押印 証明作成日【 年 月 日】、勤務先名称及び証明担当者の記名押印又は署名欄を設ける。
13. 添付資料の表示 本証明書の記載内容を裏付ける資料として、賃金台帳の写し、出勤簿(タイムカード)の写し、就業規則(給与規程)の抜粋のいずれを添付するかを列挙する欄を設ける。保険会社によって求める添付資料の範囲が異なるため、提出先の求めに応じて調整する。
14. 二以上の勤務先がある場合の注記 被証明者が複数の事業所で就労している場合、本証明書が対象とする勤務先が全体の収入のうち一部にとどまる旨、及び他の勤務先分は別途証明書を要する旨を注記する欄を設ける。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 勤務先(証明者)の立場での留意点
A-1. 証明範囲の限定文言の追加
追加文言:「本証明書は当社が保有する給与関係帳簿に基づき事実を証明するものであり、休業と受傷との因果関係及び休業の相当性についての医学的判断を含むものではない。」 一言解説: 証明者は給与実績の事実証明を行う立場にとどまり、休業の医学的必要性まで保証する立場にないことを明確にし、勤務先の責任範囲を限定する趣旨である。
A-2. 歩合制・変動給の場合の算定方法の明記
修正後:「基本給に加え歩合給が支給される場合、事故発生前直近6か月間の歩合給実績の平均値を用いて算定した金額を付記する。」 一言解説: 歩合制の労働者は月ごとの変動が大きいため、直近3か月のみでは実態を反映しにくく、より長期の実績を併記することで保険会社等との交渉における説得力を高める修正である。
B. 被害者の立場での留意点
B-1. 有給休暇使用日の逸失利益への算入請求
追加文言:「有給休暇を使用して休業した日についても、当該休暇が本件事故による受傷の療養のために使用されたものである限り、休業損害の対象日数に含めて算定されたい。」 一言解説: 有給休暇を使用すると給与自体は減少しないため証明書上は無給日と区別されがちだが、被害者側としては休暇という財産的利益の喪失を主張するために対象日数への算入を求める修正である。
B-2. 賞与減額分の明細請求
追加文言:「賞与減額が生じた場合、減額の算定根拠となる評価期間及び出勤率算定式を具体的に開示されたい。」 一言解説: 賞与減額の算定根拠が不透明なまま証明書に金額のみ記載されると損害額の当否を検証できないため、被害者側は算定式の開示を求める必要がある。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、交通事故その他の不法行為により被害者が就労できなかった期間の減収を、加害者側保険会社又は加害者本人に対して請求する際に、休業の事実と給与への影響を勤務先が客観的に証明するために用いる。他方、休業損害の算定そのもの(基礎収入の確定、休業の必要性の医学的評価)を勤務先が行うものではなく、あくまで給与台帳に基づく事実証明にとどまる点に注意する。個人事業主やフリーランスなど雇用関係にない者の休業損害立証には、本書式ではなく確定申告書や帳簿類に基づく別の疎明資料を用いるべきである。
根拠法令 休業損害の算定実務では、労働基準法第12条が定める平均賃金の算定方法(事由発生日以前3か月間の賃金総額を、その期間の総日数で除して算定する考え方)が参考にされることが多い。もっとも、交通事故等の損害賠償実務における休業損害は労働基準法上の平均賃金そのものではなく、民法第709条に基づく不法行為責任の一環として、被害者に生じた現実の減収を基礎収入日額に休業日数を乗じる方法等により算定される。証明書上の「事故前3か月間の給与支給実績」欄は、この基礎収入日額の算定資料として用いられることを念頭に、実際の稼働実態を反映した数値を記載する必要がある。
実務でよくある失敗と対策 第一に、通勤手当等の実費弁償的な性質を持つ手当を総支給額に含めてしまい、基礎収入が過大又は過小に算定される失敗がある。第6項のとおり実費弁償的な費目を除外して記載することが対策となる。第二に、有給休暇を使用した日を「出勤扱い」として休業日数に計上せず、被害者の損害が過小評価される失敗がある。第8項で有給休暇使用日を独立の欄として明示し、B-1のような取扱いを併記することが対策となる。第三に、歩合制や変動給の労働者について直近3か月の実績のみで算定し、季節変動等が反映されない失敗がある。A-2のように長期実績を付記する対応が有効である。また、複数の勤務先を掛け持ちする被害者について一方の勤務先分の証明書のみで請求を行い、他方の減収分が損害から漏れてしまう失敗も見られる。第14項のように複数勤務先の存在を証明書上で注記し、双方から証明書を取得する運用が対策となる。休業損害の基礎収入算定方法は職種や雇用形態によって判断が分かれやすく、また保険会社によって求める添付資料や様式の運用にも差があるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 被証明者の氏名・生年月日・入社年月日を給与台帳と照合したか
- [ ] 雇用形態(月給制・日給制・時給制・歩合制)を正確に区分したか
- [ ] 事故前3か月間の給与総額から実費弁償的な手当を除外したか
- [ ] 休業期間の実働日数を出勤簿等の一次資料と突合したか
- [ ] 休業期間中の給与支給の有無及び一部支給額の算定根拠を確認したか
- [ ] 有給休暇使用日を無給休業日と区別して記載したか
- [ ] 賞与への影響の有無及び減額算定根拠を確認したか
- [ ] 歩合給・変動給がある場合の算定期間の妥当性を検討したか
- [ ] 証明担当者の役職及び記名押印の権限を確認したか
- [ ] 証明作成日が請求時点の直近であるかを確認したか
- [ ] 添付資料(賃金台帳・出勤簿・就業規則抜粋)の範囲を提出先の求めに合わせて確認したか
- [ ] 被証明者が複数の勤務先を有する場合、他の勤務先分の証明書取得の要否を確認したか