相手方の加入する保険会社に対し損害の賠償を請求する書面です。事故番号、損害の内訳、支払期限と交渉窓口を明示します。押さえるべき法令上の要件を反映した記載としています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
求償請求書(保険会社宛)
第1部: 書式本文
求償請求書
【送付日】
【保険会社名】御中 損害サービス部 御担当者様
請求者: 【氏名又は名称】 住所: 【 】 連絡先: 【 】
拝啓 貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。下記事故につき、貴社の保険契約者による不法行為に基づき請求者に生じた損害の賠償を、下記のとおり請求いたします。
記
第1条(事故の表示) 事故番号(貴社整理番号): 【 】 発生日時: 【 】 発生場所: 【 】 貴社契約者(加害者)氏名: 【 】 契約車両登録番号又は証券番号: 【 】
第2条(請求の根拠) 本請求は、民法第709条に基づく不法行為による損害賠償請求権に基づくものであり、貴社契約者の過失により請求者に生じた下記損害の賠償を求めるものである。
第3条(損害内訳) (1) 治療費 金【 】円 (2) 通院交通費 金【 】円 (3) 休業損害 金【 】円 (4) 慰謝料 金【 】円 (5) 物的損害(車両・積載物等) 金【 】円 (6) その他【 】 金【 】円 (7) 損害額合計 金【 】円
第4条(過失相殺) 本件事故における請求者の過失割合を【 】割と評価し、前条合計額から当該割合に相当する額を控除した金【 】円を請求額とする。過失割合の算定は別紙【実況見分調書写し・事故状況説明図等】に基づく。
第5条(自賠責保険との関係) 本請求のうち人身損害に係る部分については、自動車損害賠償保障法第16条の3に定める支払基準を踏まえて算定しており、自賠責保険からの既払金がある場合は、当該金額を差し引いた残額を任意保険部分として請求する。
第6条(支払期限) 貴社は、本請求書到達後【30日】以内に、請求額について回答及び支払、又は争う場合はその理由を書面で回答すること。
第7条(交渉窓口) 本件に関する交渉窓口は下記のとおりとする。 請求者側: 【氏名・連絡先、代理人がいる場合はその氏名・資格・連絡先】 貴社側の担当者を、本請求書到達後【7日】以内に請求者側に通知すること。
第8条(資料の追送) 治療費・休業損害等の算定資料(診断書、休業損害証明書、給与明細等)は、順次追送する。貴社が追加資料を要する場合は、具体的な項目を明示して請求すること。
第9条(消滅時効の完成猶予) 本請求書の送付は、民法第724条に定める消滅時効の完成猶予事由としての催告に該当することを念のため申し添える。ただし、催告による完成猶予は送付後6か月に限られるため、請求者は必要に応じて別途時効の更新措置を講じる。
第10条(協議不調の場合の対応) 本請求について協議が調わない場合、請求者は【交通事故紛争処理センターへの申立て、調停、訴訟提起】等の法的手続を検討する。
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節 請求する側の視点による修正パターン
被害者本人又はその代理人が請求書を作成する場合、裁判基準による損害額算定を明示し、保険会社の内部基準による減額提示を牽制する条項を加えることが有効である。第3条に以下を追加する。
追加例: 「本請求における慰謝料及び休業損害の算定は、いわゆる裁判基準(裁判実務で用いられる算定基準)に依拠したものであり、貴社の任意保険基準による算定額との間に差異が生じる場合、その根拠を具体的に開示のうえ回答されたい。」
一言解説: 算定基準を明示することで、保険会社側の一律的な基準提示に対し、金額の妥当性について具体的な反論・協議を促すことができる。
B節 保険会社側(請求を受ける側)の視点による修正パターン
保険会社側が回答書として本書式を修正利用する場合、支払保留事由や過失割合に争いがある旨を明確にする条項を設ける。第6条を次のように修正する。
修正例(第6条): 「貴社は、請求額のうち過失割合又は損害額の算定に争いがない部分については先行して支払い、争いがある部分については、その理由及び貴社の算定根拠を明示した書面をもって、請求書到達後30日以内に回答する。」
一言解説: 争いのない部分の先行払いを条項化することで、全体の解決を待たずに一部の資金繰りに配慮した実務対応が可能になる。
C節 代理人(弁護士等)が請求書を作成する場合の修正パターン
代理人が請求者に代わって作成する場合、委任の範囲と交渉権限を明確にする条項を第7条に加えることが望ましい。
追加例(第7条): 「請求者は、本請求に関する一切の交渉権限を代理人【氏名・資格・所属】に委任しており、貴社は以後、請求者本人ではなく代理人を窓口として対応すること。委任状の写しを本請求書に添付する。」
一言解説: 委任状の添付と窓口の一本化を明記することで、保険会社側の対応窓口の混乱を避け、交渉の実効性を高めることができる。特に治療が長期にわたる事案では、代理人経由での連絡に一本化しておくことが、請求者本人の負担軽減にもつながる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面
交通事故等の被害者が、加害者の加入する任意保険会社に対して直接損害賠償を請求する場面(いわゆる直接請求・示談交渉)で使用する。事故番号、損害内訳、過失割合、支払期限、交渉窓口を一体で明示することで、初期段階の交渉を円滑にする目的がある。
使ってはいけない場面
加害者に任意保険が付保されていない場合や、保険会社が既に代理人弁護士を選任し窓口が一本化されている場合には、宛先を誤ると回答が遅延する。また、損害額が未確定な治療継続中の段階で総額を確定的に請求すると、後の損害拡大分の請求に支障が生じ得るため、症状固定前は暫定請求である旨を明記すべきである。
根拠法令
民法第709条は、故意又は過失によって他人の権利利益を侵害した者が、これによって生じた損害を賠償する責任を負う旨を定める、不法行為責任の基本規定である。自動車損害賠償保障法第16条の3は、保険会社が支払うべき保険金等の額について国土交通大臣及び内閣総理大臣が定める支払基準に従うべきことを定めており、人身損害の算定において参照される。また、民法第724条は、不法行為による損害賠償請求権が、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年(人の生命又は身体を害する不法行為による場合は5年)、不法行為の時から20年で時効により消滅する旨を定める。
よくある失敗と条項上の対策
- 過失割合の根拠を示さないまま金額のみ請求してしまう: 第4条のように実況見分調書等の根拠資料を明示し、算定過程を可視化する。
- 時効管理の失念: 治療の長期化により時効期間の管理が疎かになりやすいため、第9条のように催告の効果とその限界(6か月)を明記し、別途更新措置の必要性を意識させる。
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症状固定前の総額確定請求: 治療継続中に総額を確定請求すると、後遺障害分の追加請求で不整合が生じるため、暫定請求である旨を明示する条項を加える。
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宛先部署の誤り: 損害サービス部門以外の部署宛てに送付すると、社内転送に時間を要し回答が遅延することがあるため、事前に担当窓口を電話等で確認したうえで送付先を特定する。
また、請求書送付後は、貴社からの回答内容(争いの有無、算定根拠)を記録化し、協議経過を時系列で整理しておくことが、後日の紛争処理センター申立てや訴訟提起の際の資料として有用となる。
損害額の算定基準や過失割合の評価は事案ごとに大きく異なるため、個別事案は専門家に確認のうえ、本書式の金額根拠を具体的資料に基づいて調整する必要がある。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 事故番号・発生日時・発生場所・加害者情報を正確に記載したか
- [ ] 損害内訳(治療費・休業損害・慰謝料・物損等)を項目別に記載したか
- [ ] 過失割合とその算定根拠資料を明示したか
- [ ] 自賠責保険の既払金の有無と充当関係を整理したか(自動車損害賠償保障法第16条の3)
- [ ] 症状固定前か後かを明記し、暫定請求か確定請求かを明示したか
- [ ] 支払期限と回答期限を記載したか
- [ ] 交渉窓口(担当者・連絡先)を明示したか
- [ ] 追送予定の証拠資料の一覧を整理したか
- [ ] 消滅時効(民法第724条)の起算点と期間を確認したか
- [ ] 協議不調時の次の手続(紛争処理センター・調停・訴訟等)を検討したか
- [ ] 代理人を選任している場合、委任状の準備を確認したか
- [ ] 送付先部署・担当窓口を事前に電話等で確認したか
- [ ] 協議経過を時系列で記録する体制を整えたか