休職期間の満了が近づき復職か退職かの判断を本人へ伝える場面で用いる書式。自然退職の効果と、労働契約法第16条の解雇規制との違いを整理した記載例を収録。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
休職期間満了通知書
第1部: 書式本文
宛先:【従業員氏名】殿 差出人:【会社名】【代表者役職・氏名】 作成日:【西暦】年【 】月【 】日
休職期間満了通知書
貴殿の休職期間の満了に関し、下記の通り通知いたします。
- 休職発令日:【西暦】年【 】月【 】日(休職発令通知書番号【 】)
- 休職期間満了日:【西暦】年【 】月【 】日
- 本通知の趣旨:休職期間満了日までに復職の可否を確認する必要がある旨
- 復職の可否判定に必要な手続:復職を希望する場合は、満了日の【 】週間前までに主治医の診断書を添えて復職申請書を提出すること
- 産業医面談の案内:会社が指定する日時に産業医面談を実施し、就業可能性を確認する場合がある旨
- 復職が認められた場合の取扱い:復職日、配置部署、就業上の措置(時短勤務・業務内容の制限等)の要否を別途「復職可否判定通知書」で通知する
- 満了日までに復職可能と判断できない場合の取扱い:就業規則第【 】条に基づき、休職期間満了をもって当然に退職(自然退職)となる旨
- 自然退職の効力発生日:休職期間満了日の翌日である【西暦】年【 】月【 】日
- 自然退職の法的性質:会社による解雇の意思表示ではなく、休職事由が満了日までに消滅しなかったことによる労働契約の当然終了である旨
- 自然退職となった場合の事後手続:離職票の発行、退職金の有無・計算方法、貸与物の返却期限、社会保険資格喪失手続の予定日
- 本人からの申出があった場合の面談対応:疑問点や異議がある場合、【西暦】年【 】月【 】日までに下記問い合わせ先へ連絡すること
- 問い合わせ先:【部署名・氏名・連絡先】
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節:自然退職となる場合
- 記載例:項目9の後に「本通知は解雇には該当しないが、休職に至った経緯・復職に向けた本人の対応状況等を踏まえ、慎重に手続を進めている」旨を追記し、項目7で参照した就業規則条文の写しを別紙として添付する。
- 一言解説:自然退職は解雇ではないため労働契約法第16条の解雇権濫用法理が直接適用されるものではないが、実質的に解雇に相当すると評価され得るような運用(復職可能性の検討が不十分なまま形式的に満了処理を行う等)は紛争リスクを高めるため、判断過程を記録に残すことが望ましい。
- 記載例:項目10に「退職後の傷病手当金の継続給付の可能性について、健康保険組合等に確認するよう案内する」旨を追記する。
- 一言解説:自然退職後も一定要件下で傷病手当金の継続給付を受けられる場合があり、本人の生活への影響を考慮した案内を行うことがトラブル予防になる。
B節:満了予告・面談案内を行う場合
- 記載例:項目3を「休職期間満了日の【 】か月前にあたるため、復職可否の見通しについて事前に確認したい」とし、項目5の産業医面談の日程候補を複数提示する形式に変更する。
- 一言解説:満了直前に一方的に通知するのではなく、余裕を持った予告と面談案内を行うことで、本人に治療・準備の機会を与え、拙速な自然退職処理と評価されるリスクを下げられる。
- 記載例:項目4の提出期限に加えて「診断書の提出が困難な場合は、その理由と提出可能な見込み時期を連絡すること」を追記する。
- 一言解説:主治医の診断書取得には時間を要することがあり、機械的に期限徒過を理由として満了処理を進めると手続の相当性を欠くと評価されかねないため、猶予的な運用を明記しておく。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、休職を命じた従業員について休職期間の満了が近づき、復職の可否を確認したうえで復職または退職のいずれかの取扱いとなることを本人に伝える場面で使用する。休職開始直後の状況説明や、既に復職が決定した後の事務連絡として用いるのは適切ではなく、あくまで満了前後の判断過程を伝える書式として位置付けるべきである。休職期間は傷病の種類や勤続年数に応じて就業規則で定められているのが通例であり、本書式を用いる時点で満了日そのものに誤りがないかを改めて確認しておくことも重要である。満了日の起算を誤ったまま自然退職の手続を進めてしまうと、本来であればまだ休職期間中であった労働者を退職扱いにしてしまうという重大な誤りにつながりかねない。休職期間満了時の退職は、就業規則の定めにより休職事由が消滅しなかったことを条件として労働契約が当然に終了する「自然退職」の構成をとるのが一般的であり、使用者による一方的な意思表示である解雇(労働契約法第16条)とは法的性質が異なる。もっとも、自然退職の規定があるからといって復職可能性の検討を経ずに機械的に運用してよいわけではなく、実質的な運用実態によっては解雇に類する紛争として争われる可能性がある点に注意が必要である。
また、自然退職と解雇の区別は、退職後に本人が求職者給付(いわゆる失業給付)を受給する際の離職理由の区分にも影響し得るため、離職票に記載する離職理由の欄をどのように整理するかについても、本通知の内容と整合させておく必要がある。自然退職の場合であっても、実質的に会社都合の退職に近い事情がある場合には、離職理由の記載を巡って本人との認識の齟齬が生じやすく、この点も事前の説明で丁寧にカバーしておくことが望ましい。
実務でよくある失敗の一つは、自然退職と解雇の違いを社内で正しく理解しないまま、通知書に「解雇する」といった表現を用いてしまうことである。項目9で自然退職の法的性質を明確に説明し、解雇の意思表示ではないことを明記することで、この混同を防ぐ。第二に、満了日ギリギリになって初めて通知を行い、本人が診断書取得や復職準備をする時間的余裕がないまま自然退職に至ってしまう失敗がある。B節のように満了の一定期間前に予告と産業医面談の案内を行うことで、判断過程の相当性を確保する。第三に、復職可否の判断基準や産業医面談の位置付けを説明せず、本人が「なぜ復職できないのか」を理解できないまま退職扱いとなり、感情的な対立や紛争に発展する例がある。項目5・項目6で産業医面談と復職可否判定の手続を明示し、判定結果は別途「復職可否判定通知書」で丁寧に伝える運用とすることで、この失敗を避けられる。第四に、休職期間の満了と自然退職の効力発生日をひとまとめに記載し、両者が別の日付であることを見落とす例がある。項目2の満了日と項目8の効力発生日を明確に書き分けることで、退職日を巡る認識の齟齬を防ぐことができる。
また、休職期間満了通知書は「休職発令通知書」と「復職可否判定通知書」の間をつなぐ手続として位置付けられる点にも留意が必要である。休職発令通知書が休職の開始とその条件を示すものであるのに対し、本書式は満了に向けた手続の進め方と、復職・退職いずれの結論に至る可能性があるかを事前に説明するものであり、復職可否判定通知書のように最終的な判定結果そのものを通知するものではない。この三つの書式の役割を混同し、本書式の段階で復職の可否を確定的に記載してしまうと、産業医面談や診断書の検討を経ないまま結論を出したと受け取られかねない。
さらに、休職期間の延長を検討する場合の取扱いについても整理しておく必要がある。就業規則によっては、会社の裁量で休職期間を延長できる旨の規定を置いている例があり、その場合は項目7の自然退職に関する記載の前提として、延長の可否をどのように検討したかを記録に残しておくことが望ましい。延長の検討を怠ったまま満了日到来のみを理由に自然退職とする運用は、判断過程の相当性を欠くと評価されるおそれがある。
なお、自然退職の有効性は就業規則の規定内容、休職に至った経緯、復職可能性の検討状況等の個別事情によって評価が分かれるため、実際の運用にあたっては弁護士等の専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 休職発令日・休職期間・満了日を正確に特定しているか
- [ ] 就業規則上の自然退職規定の条文を確認し、根拠として引用したか
- [ ] 満了日の十分前に予告通知を行うスケジュールになっているか
- [ ] 復職申請の期限・提出書類(診断書等)を明記したか
- [ ] 産業医面談の実施予定・日程調整の案内をしたか
- [ ] 「解雇」ではなく「自然退職」である旨の法的性質を正確に記載したか
- [ ] 復職が認められた場合の通知(復職可否判定通知書)につながる導線を明記したか
- [ ] 自然退職となった場合の離職票・退職金・貸与物返却等の事務手続を案内したか
- [ ] 本人からの異議・問い合わせ受付の期限と窓口を明示したか
- [ ] 診断書提出が遅れる場合の猶予的な取扱いを検討したか
- [ ] 休職期間延長の可否を検討した場合、その検討過程を記録に残しているか
- [ ] 離職理由の区分について本通知の内容と離職票記載の整合性を確認したか