賃金規程の運用細部を補完する企業向け。日割計算や端数処理、控除項目の取扱いを労働基準法第24条の賃金全額払い原則に沿って明文化します。

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給与規程施行細則

第1部: 書式本文

第1条(目的) 本細則は、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)の就業規則第【 】条及び賃金規程に基づき、給与計算の実務上必要な細目を定め、賃金の計算・支払方法を明確にすることを目的とする。

第2条(適用範囲) 本細則は、会社に雇用される全ての労働者(正社員、契約社員、パートタイム労働者、嘱託社員を含む。)に適用する。ただし、雇用契約書又は個別の労働条件通知書に別段の定めがある場合は、当該定めを優先する。

第3条(賃金計算期間及び支払日) 1 賃金計算期間は毎月【1日】から【末日】までとし、賃金支払日は翌月【25日】(支払日が金融機関休業日にあたるときは、その前営業日)とする。 2 前項の支払日は、会社の経営状況その他やむを得ない事情により変更する場合がある。この場合、会社は変更内容を所定の方法により事前に周知する。

第4条(日割計算の方法) 1 月の途中で入社又は退職した労働者の賃金は、次の算式により日割計算する。 日割賃金額 = 月額基本給 ÷ 当該月の所定労働日数 × 実労働対象日数 2 前項の「当該月の所定労働日数」は、会社の年間所定労働日数カレンダーに基づき算出するものとし、暦日数(歴日ベース)を用いない。 3 休職からの復職、育児・介護休業からの復職等、月の途中で就労を再開した場合の賃金計算についても、前2項の例による。

第5条(端数処理の取扱い) 1 労働時間の端数計算については、1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各時間数の合計に1時間未満の端数が生じた場合、30分未満は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げる。 2 1時間あたりの賃金額及び割増賃金額の計算において1円未満の端数が生じた場合は、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる。 3 1か月の賃金支払額に生じた1円未満の端数は、翌月の賃金支払時に繰り越して計算するものとし、切り捨てを行わない。 4 前3項の端数処理は、労働基準法の趣旨に反しない範囲で、賃金計算の事務を簡便化する目的で行うものであり、労働者に恒常的な不利益を生じさせる運用は行わない。

第6条(控除項目) 1 会社は、賃金の支払に際し、法令に別段の定めがある場合(源泉所得税、住民税特別徴収、社会保険料及び雇用保険料等)を除き、次の各号に掲げる費用その他会社が定める費用について、労働者の過半数を代表する者との書面による労使協定(労働基準法第24条第1項但書)を締結した場合に限り控除することができる。 (1) 社宅使用料、寮費 (2) 会社が貸与する物品の代金又は使用料 (3) 財形貯蓄、社内預金等労働者が同意して申し込んだ積立金 (4) その他会社が別途定める費用 2 前項の控除は、労働基準法第24条第1項に定める賃金全額払いの原則の例外として行うものであり、同項但書の労使協定の締結及び所轄労働基準監督署への必要な手続を経た範囲内でのみ行う。 3 会社は、控除項目及び控除額を給与明細に明示し、労働者からの照会に応じるものとする。

第7条(欠勤・遅刻・早退の控除) 1 欠勤、遅刻又は早退があった場合、その時間に相当する賃金は控除する。計算方法は第4条に定める日割計算の方法に準じ、時間単位の控除については月額基本給を月平均所定労働時間数で除して得た額を基準とする。 2 月平均所定労働時間数は、毎年度当初に会社が算定し、労働者に周知する。

第8条(給与計算のアウトソース利用に関する取扱い) 1 会社は、給与計算業務の全部又は一部を外部の給与計算代行事業者(以下「委託先」という。)に委託することができる。 2 委託先を利用する場合であっても、賃金の計算方法、控除項目及び支払日等の労働条件は本細則及び賃金規程の定めるところによるものとし、委託先の内部処理上の都合により労働条件を変更することはない。 3 会社は、委託先に対し労働者の個人情報を提供するにあたり、利用目的を明示し、必要な安全管理措置を求めるものとする。

第9条(最低賃金の確認) 1 会社は、毎年度、最低賃金法に基づき決定される地域別最低賃金及び特定(産業別)最低賃金の改定内容を確認し、労働者に支払う賃金が最低賃金額を下回らないよう管理する。 2 最低賃金額との比較にあたっては、最低賃金法第4条第3項に定めるところにより、賞与その他臨時に支払われる賃金、時間外・休日・深夜の割増賃金、精皆勤手当、通勤手当及び家族手当を除外した賃金額をもって比較する。

第10条(給与明細の交付方法) 会社は、賃金支払の都度、電子的方法又は書面により給与明細を交付する。電子的方法による場合は、労働者が常時確認できる環境を整備する。

第11条(疑義の処理) 本細則の解釈又は運用に疑義が生じた場合は、会社と労働者代表とが協議のうえ決定する。

第12条(改廃) 本細則の改廃は、就業規則及び賃金規程の変更手続に準じ、労働者の過半数を代表する者の意見を聴いたうえで行う。

附則 本細則は【20〇〇年〇月〇日】から施行する。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 中小企業向け

中小企業では給与計算担当者が少人数であることが多く、端数処理や日割計算のルールが担当者の裁量に委ねられがちである。属人化を避けるため、計算式そのものを条文に明記する書き換えが有効である。

修正条文例(第4条第1項の書き換え): 「日割賃金額は、月額基本給を当該月の暦日数で除して得た額に、在籍した暦日数を乗じて算出する。」

一言解説: 所定労働日数ベースではなく暦日数ベースの日割計算に変更する例。中小企業では給与ソフトの設定が簡易な暦日方式であることが多く、実際の運用に条文を合わせることでトラブルを防げる。ただしどちらの方式を採るかで日割額が変動するため、変更時は労働者への周知が必要である。

B節: 給与計算アウトソース利用企業向け

給与計算を社労士事務所や給与計算代行会社に委託する企業では、委託先のシステム仕様(端数処理単位、支払日の設定可能範囲等)に条文を合わせる必要がある。

修正条文例(第8条に追加する項): 「4 委託先のシステム上の制約により、第5条に定める端数処理の単位を採用できない場合は、会社は労働者に不利益とならない範囲で最も近い処理方法を採用し、変更内容を書面で労働者に通知する。」

一言解説: 委託先のシステム制約で規程どおりの処理ができない事態はしばしば発生する。あらかじめ代替ルールと通知義務を定めておくことで、規程と実務の乖離による紛争リスクを軽減できる。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本規程は、賃金規程や就業規則本体に定められた抽象的な賃金ルールを、日々の給与計算実務で使えるレベルまで具体化する下位規程である。導入すべき場面は、複数の給与計算担当者が交代で業務を行う企業、給与計算を外部委託している企業、あるいは日割計算・端数処理のルールが曖昧なまま慣行として続いている企業である。逆に、従業員数が極めて少なく賃金規程本体に計算方法が既に詳細に記載されている企業では、屋上屋を架す規程となり管理コストが増すだけの場合もあるため、導入の要否を精査すべきである。

根拠法令としては、まず労働基準法第24条第1項が賃金の全額払いの原則を定めており、法令に別段の定めがある場合又は労使協定を締結した場合に限り賃金からの控除が認められる(同項但書)。第6条の控除条項はこの規定に対応するものであり、労使協定を締結せずに控除項目を規程に列挙するだけでは足りない点に注意を要する。また、労働基準法第89条は就業規則の絶対的必要記載事項として賃金の決定・計算・支払方法を掲げており、本細則はその記載を補完する位置づけとなる。最低賃金法との関係では、日割計算や端数処理の結果として実質的な時間単価が最低賃金を下回っていないかを定期的に検証する必要がある。

実務上よくある失敗の一つは、時間外労働の端数処理を「1時間未満切り捨て」のように労働者に一方的に不利益な形で定めてしまうことである。行政解釈上、端数処理は事務簡便化のための例外的取扱いとして許容される範囲(30分未満切り捨て・以上切り上げ等)にとどめる必要があり、本細則第5条ではその範囲に収まる形で条項を設計している。二つ目の失敗は、控除項目を規程に記載しただけで労使協定の締結を怠ることである。労働基準法第24条但書の要求する書面協定がなければ、規程に記載があっても控除自体が違法となり得る。三つ目の失敗は、給与計算を外部委託した際に委託先のシステム仕様と規程の内容が食い違ったまま放置されることである。第8条及び第2部B節のように、委託先都合による例外的対応とその通知手続きをあらかじめ規定しておくことが望ましい。

なお、端数処理や控除項目の適法性は労使協定の締結状況や運用実態によって個別に判断が分かれ得るため、規程の導入・改定にあたっては社会保険労務士や弁護士等の専門家に個別事案として確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 賃金締切日・支払日が就業規則及び賃金規程と矛盾していないか確認したか
  • [ ] 日割計算の基準(所定労働日数ベースか暦日数ベースか)を実際の給与ソフト設定と一致させたか
  • [ ] 時間外労働等の端数処理ルールが労働者に不利益な方向に偏っていないか確認したか
  • [ ] 控除項目について労働基準法第24条第1項但書に基づく労使協定を締結済みか、又は締結予定か
  • [ ] 控除できる費目が就業規則・賃金規程に列挙された範囲を超えていないか確認したか
  • [ ] 最低賃金法第4条第3項の除外賃金の範囲を踏まえて最低賃金額との比較を行っているか
  • [ ] 給与計算アウトソース利用時の委託先システム仕様と本細則の整合性を確認したか
  • [ ] 給与明細の交付方法(電子・書面)が労働者にとって常時確認可能な方法になっているか
  • [ ] 改廃時に労働者代表からの意見聴取手続を経る運用になっているか
  • [ ] 施行日及び経過措置(既存労働者への適用開始時期)を明記したか