セット内容
- M&A基本合意書(LOI)2バージョン(譲渡側/譲受側)Word形式
- 独占交渉権・デューデリジェンス協力義務の解説
- スケジュール・法的拘束力の範囲整理表
こんな場面で
事業譲渡・株式譲渡によるM&Aの検討段階で、条件の大枠と今後の交渉プロセスを書面化したい場面。
特長
- 法的拘束力を持たせる条項(独占交渉権・秘密保持)と持たせない条項(価格等)を区別して構成
- デューデリジェンスへの協力義務・情報開示範囲をあらかじめ規定
- 最終契約(株式譲渡契約書等)に向けた交渉の土台として機能する条項設計
M&A基本合意書(LOI)(監修用ドラフト)
⚠ 本ファイルは弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布を禁止する。
商品ID: m-and-a-kimyakusho / 価格: 4,980円 / 立場バージョン: 譲渡側有利・譲受側有利
本ドラフトは第2部で2バージョンの差分を提示する構成とし、第1部には標準版(中立に近い一般的条項構成)をベース条文として掲載する。株式譲渡・事業譲渡のいずれの取引類型でも使用できるよう、対象を「本件対象事業等」として整理した。
第1部: 契約書本文(標準版)
M&A基本合意書
〇〇〇〇株式会社(以下「甲」という。)と〇〇〇〇株式会社(以下「乙」という。)とは、甲が営む〇〇事業又は甲の発行する株式(以下、対象を総称して「本件対象事業等」という。)に関し、乙が甲又は甲の株主から本件対象事業等を譲り受けること(株式譲渡による場合は甲の株主が保有する株式の譲渡を、事業譲渡による場合は甲から乙への事業譲渡を想定する。以下「本取引」という。)の実現に向けて、令和〇年〇月〇日、以下のとおり基本合意書(以下「本合意書」という。)を締結する。
第1条(目的)
本合意書は、甲及び乙が本取引の実現に向けて、現時点における合意事項及び今後の交渉方針を確認し、最終契約(株式譲渡契約書、事業譲渡契約書その他本取引の実行に必要な契約書をいう。以下「最終契約」という。)の締結に向けた協議を誠実に行うことを目的とする。
第2条(本取引の概要)
- 甲及び乙は、以下の概要により本取引の実現に向けて協議を進めるものとする。 (1)取引類型: 株式譲渡(又は事業譲渡) (2)譲渡対象: 甲の発行済株式の全部(又は甲が営む〇〇事業に関する資産、負債、契約上の地位及び従業員の雇用関係の全部若しくは一部) (3)譲渡実行予定日: 令和〇年〇月〇日を目途とする
- 前項の概要は、本合意書締結時点における当事者の意向を示すものであり、デューデリジェンスの結果その他の事情により、最終契約締結までの間に変更されることがある。
第3条(譲渡価格の目安)
- 本取引における譲渡対象の対価(以下「譲渡価格」という。)は、金〇〇円を目安とする。ただし、当該金額は、本合意書締結時点における予備的な協議の結果を示すものにとどまり、後記第4条に定めるデューデリジェンスの結果、対象事業等の財務状況その他の事情を踏まえて、最終契約において別途合意するものとする。
- 前項の目安額は、次条以下に定める条項を除き、甲及び乙を法的に拘束するものではないと解される。
第4条(デューデリジェンスへの協力義務)
- 乙は、本取引の実行の可否及び条件を検討するため、本合意書締結後、甲の事業、財務、法務、税務、労務及び知的財産等に関する調査(以下「デューデリジェンス」という。)を実施することができる。
- 甲は、乙が実施するデューデリジェンスに協力するものとし、乙から合理的な範囲で求められた資料の開示、質問への回答及び役職員へのインタビューの機会の提供その他の対応を行うものとする。
- 甲は、デューデリジェンスへの対応にあたり、乙に開示する資料及び回答について、重要な点において真実かつ正確であるよう努めるものとする。
- デューデリジェンスの実施期間は、本合意書締結日から〇週間を目途とする。ただし、甲乙協議のうえ、当該期間を延長することができる。
- 乙は、デューデリジェンスの実施及びこれに伴う甲の役職員、取引先その他関係者への接触について、事前に甲と協議し、甲の事業運営に支障を来さないよう配慮するものとする。
第5条(独占交渉権)
- 甲は、本合意書締結日から令和〇年〇月〇日まで又は本合意書締結日から〇か月間のいずれか早い時点までの期間(以下「独占交渉期間」という。)、乙以外の第三者との間で、本件対象事業等の全部又は主要な一部の譲渡、合併その他これらに類する取引(以下「競合取引」という。)について、提案の勧誘、交渉又は合意を行ってはならない。
- 甲は、独占交渉期間中に競合取引に関する第三者からの打診を受けた場合、速やかにその内容を乙に通知するものとする。
- 前2項の規定は、甲の取締役会その他の機関が、法令上又は善管注意義務上の観点から対応を要すると判断する場合には、その対応を妨げるものではないと解される。もっとも、その場合であっても、甲は事前に乙へ通知するよう努めるものとする。
第6条(秘密保持)
- 甲及び乙は、本取引の検討の過程で相手方から開示された技術上・営業上その他一切の秘密情報(本合意書の締結及び内容、本取引の存在及び検討状況を含む。)を、相手方の事前の書面による承諾を得ることなく第三者に開示又は漏えいしてはならない。
- 前項の規定にかかわらず、法令、裁判所又は監督官庁の命令若しくは要求に基づく開示、及び本取引の実行のために合理的に必要な範囲での自己の役員、従業員並びに弁護士、公認会計士、税理士、金融機関その他の専門家に対する開示は、相手方の承諾を要しないものとする。ただし、開示を受けた者に本条と同等の秘密保持義務を課すものとする。
- 甲及び乙は、本取引の検討が終了した場合、相手方から開示された秘密情報(複製物を含む。)を返還し、又は相手方の指示に従い廃棄若しくは消去するものとする。
- 本条の規定は、後記第10条の規定にかかわらず、本合意書の第9条に定める有効期間の終了後も〇年間、なお効力を有するものとする。
第7条(本合意書の法的拘束力)
- 本合意書のうち、第4条(デューデリジェンスへの協力義務)、第5条(独占交渉権)、第6条(秘密保持)、第7条(法的拘束力)、第8条(費用負担)、第9条(有効期間)、第10条(本合意書の終了)、第11条(表明保証の概要)第3項、第12条(反社会的勢力の排除)、第13条(権利義務の譲渡禁止)、第14条(協議事項)及び第15条(合意管轄)の各規定は、甲及び乙を法的に拘束するものとする。
- 前項に定める規定を除き、本合意書のその他の条項(第2条の取引概要、第3条の譲渡価格の目安、第16条のスケジュールを含む。)は、甲及び乙の現時点における意向を示すものにとどまり、法的拘束力を有しないものと解される。
- 前項の規定は、甲及び乙が最終契約の締結に向けて誠実に協議を行う義務を免れさせる趣旨ではないと解されるが、最終契約の締結を法的に強制するものではない。
第8条(費用負担)
デューデリジェンス、法務・財務アドバイザーへの報酬その他本取引の検討及び本合意書の締結に要する費用は、法令に別段の定めがある場合を除き、各自の負担とする。
第9条(有効期間)
本合意書の有効期間は、本合意書締結日から令和〇年〇月〇日までとする。ただし、甲乙協議のうえ、書面により当該期間を延長することができる。
第10条(本合意書の終了)
- 本合意書は、次の各号のいずれかに該当した場合、当然に終了するものとする。 (1)前条の有効期間が満了したとき (2)甲及び乙が最終契約を締結したとき (3)甲及び乙が書面により本取引を中止する旨合意したとき
- 甲又は乙は、相手方が本合意書の法的拘束力を有する条項に違反し、相当期間を定めた催告後もこれが是正されない場合、相手方に対する書面による通知をもって本合意書を解除することができる。
- 本合意書が終了した場合であっても、第6条、第7条、本項、第12条第3項及び第14条から第15条までの規定は、なお効力を有するものとする。
第11条(表明保証の概要)
- 甲は、乙に対し、本合意書締結日現在において、甲が本件対象事業等について適法な権限を有していること、本件対象事業等に関して開示した重要な情報が重要な点において真実かつ正確であること、その他最終契約において具体的に定める表明保証事項の基礎となる事実関係について、重要な相違がないと認識している旨を表明するものとする。
- 前項の規定は、最終契約において規定される詳細な表明保証条項に代わるものではなく、その具体的な内容、対象範囲及び違反時の効果(補償責任の上限、期間制限等を含む。)は、デューデリジェンスの結果を踏まえて最終契約において別途合意するものとする。
- 前2項の規定にかかわらず、甲が本条第1項の表明について故意に虚偽の説明を行った場合、乙は、これによって生じた損害の賠償を甲に請求することができるものと解される。
第12条(反社会的勢力の排除)
- 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自己(自己の役員を含む。)が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ又は特殊知能暴力集団その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力」と総称する。)に該当しないこと、及び次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、保証する。 (1)反社会的勢力が経営を支配していると認められる関係を有すること (2)反社会的勢力が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること (3)自己若しくは第三者の不正の利益を図る目的又は第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に反社会的勢力を利用していると認められる関係を有すること (4)反社会的勢力に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること
- 甲又は乙が前項の表明保証に違反した場合、相手方は、何らの催告を要せず本合意書を解除することができる。この場合、解除した当事者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負わないものと解される。
- 本条の規定は、本合意書終了後もなお効力を有する。
第13条(権利義務の譲渡禁止)
甲及び乙は、相手方の事前の書面による承諾を得ることなく、本合意書上の地位並びに本合意書に基づく権利及び義務を第三者に譲渡し、承継させ、又は担保に供してはならない。
第14条(協議事項)
本合意書に定めのない事項又は本合意書の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠意をもって協議のうえ解決するものとする。
第15条(合意管轄)
本合意書に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第16条(スケジュール)
甲及び乙は、本取引の実行に向けて、概ね以下のスケジュールを目途として手続を進めるよう努めるものとする。ただし、当該スケジュールは目安であり、デューデリジェンスの進捗その他の事情により変更されることがある。
(1)本合意書締結: 令和〇年〇月〇日 (2)デューデリジェンス実施期間: 令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日まで (3)最終契約締結予定日: 令和〇年〇月〇日 (4)本取引実行(クロージング)予定日: 令和〇年〇月〇日
以上、本合意書締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各自1通を保有する。
令和〇年〇月〇日
(甲)住所 商号又は名称 代表者名 印
(乙)住所 商号又は名称 代表者名 印
第2部: 立場別修正パターン
商品には「譲渡側有利」「譲受側有利」の2バージョンを収録する。第1部は標準的なバランスを想定した条文であり、以下は各バージョンを作成する際の差分(代替条文)である。
A. 譲渡側(甲)有利バージョンへの変更
A-1. 第5条(独占交渉権)の期間短縮及び例外拡大
修正前(標準版): 独占交渉期間を「〇か月間」と定め、甲の交渉先変更を原則禁止
修正後(譲渡側有利): 「独占交渉期間は本合意書締結日から〇週間とする。」と短縮したうえ、「甲は、乙が提示した条件を著しく下回らない他の買主候補からの提案を受けた場合、乙に通知のうえ当該候補と交渉することができる。」との例外(いわゆるフィデューシャリー・アウトに類する規定)を追加する。
解説: 独占交渉期間を短縮し、かつより有利な条件を提示する第三者との交渉余地を残すことで、甲がより有利な条件を追求できる余地を確保する修正である。譲受側にとってはデューデリジェンスへの投資が無駄になるリスクが高まるため、強い抵抗が予想される。
A-2. 第3条(譲渡価格の目安)に下限拘束力を付与
追加条文例: 「乙は、デューデリジェンスの結果、重大な悪影響(Material Adverse Change)が判明した場合を除き、前項の目安額を著しく下回る価格を最終契約において提示しないよう努めるものとする。」
解説: 譲渡価格は原則非拘束とされるのが一般的であるが、譲渡側としては、デューデリジェンス後の大幅な価格引き下げ(いわゆるプライス・チップ)を牽制する努力義務規定を設けることで交渉上の安定を図る例が見られる。
A-3. 第11条(表明保証の概要)の限定
修正後: 「甲が本項に基づき表明する事項は、本合意書締結日現在において甲が現に認識している事実の範囲に限るものとし、甲は、乙による独自のデューデリジェンスの結果について責任を負わないものと解される。」との文言を追加し、表明保証の対象を「認識している限りにおいて」に限定する。
解説: 譲渡側の表明保証責任を、認識可能な範囲に限定する修正であり、最終契約に向けた交渉の出発点として譲渡側に有利に働くと考えられる。
A-4. 第4条(デューデリジェンスへの協力義務)に開示範囲の限定を追加
追加条文例: 「甲が乙に開示する資料の範囲は、本取引の検討に合理的に必要と甲が判断する範囲に限るものとし、甲の競業上重要な情報については、開示の順序及び方法(クリーンルーム方式の採用等)について別途協議するものとする。」
解説: 競合他社への情報流出リスクを懸念する譲渡側の実務上の要請を反映した修正である。特に乙が同業他社である場合に重要となる。
A-5. 第10条(本合意書の終了)に解除時の補償規定を追加
追加条文例: 「乙が正当な理由なく独占交渉期間中に本取引の実行を拒絶した場合、乙は、甲に対し、甲が本取引の検討のために要した合理的な費用相当額を支払うものとする。」
解説: 独占交渉権を付与したにもかかわらず取引が実現しない場合の譲渡側の負担(機会損失、他候補との交渉機会の逸失等)を補填する趣旨の規定である。譲受側にとっては負担増となるため、金額の上限設定等のバランス調整が交渉上の論点になりやすい。
B. 譲受側(乙)有利バージョンへの変更
B-1. 第5条(独占交渉権)の長期化及び例外の削除
修正後: 独占交渉期間を「〇か月間」から「〇か月間(自動延長条項付き)」に変更し、「甲は、独占交渉期間中、理由の如何を問わず第三者と競合取引に関する接触をしてはならない。」とし、A-1のような例外規定を設けないものとする。
解説: 譲受側がデューデリジェンス及び資金調達等の準備に要する期間を十分に確保するための修正である。独占交渉期間の長さは実務上最も交渉になりやすい論点の一つである。
B-2. 第4条(デューデリジェンスへの協力義務)を具体化・強化
追加条文例: 「甲は、乙から書面により要求された資料を、原則として要求日から〇営業日以内に開示するものとする。甲が正当な理由なく開示を遅延又は拒否した場合、乙は、独占交渉期間を当該遅延日数分延長することができる。」
解説: デューデリジェンスへの協力義務を努力義務にとどめず、具体的な期限及び違反時の効果(独占交渉期間の延長)を設けることで、実効性を確保する修正である。
B-3. 第7条(法的拘束力)に補償条項を追加
追加条文例: 「甲が正当な理由なくデューデリジェンスへの協力を怠り、又は第5条の独占交渉権に違反した場合、乙は、甲に対し、乙が本取引の検討のために支出した弁護士費用、財務アドバイザー費用その他の合理的な費用相当額の賠償を請求することができるものとする。」
解説: 拘束力のある義務(協力義務・独占交渉権)の実効性を高めるため、違反時の損害賠償請求権を明記する修正である。譲受側が多額のデューデリジェンス費用を要する場合に特に重要となる。
B-4. 第11条(表明保証の概要)の対象拡大
修正後: 「甲は、本件対象事業等に関する財務情報、重要な契約、訴訟その他の紛争の有無、労務コンプライアンスの状況について、重要な点において開示済みであり、未開示の重大な事象が存在しないことを表明する。」と対象事項を具体的に列挙する形に拡張する。
解説: 簡易な表明保証にとどめず、最終契約前の段階から譲渡側に開示義務を明確に意識させることで、デューデリジェンスの実効性及び後日の紛争予防を図る修正である。
B-5. 第9条(有効期間)に乙の一方的延長権を追加
追加条文例: 「乙は、デューデリジェンスの完了に合理的な追加期間を要すると判断した場合、甲に通知することにより、本合意書の有効期間を1回に限り〇週間延長することができる。」
解説: デューデリジェンスの遅延リスクをあらかじめ手当てし、譲受側の検討期間を確保するための修正である。譲渡側にとっては独占交渉期間の実質的な延長にもつながるため、延長回数・期間の上限設定が調整の焦点となる。
第3部: 逐条解説(購入者向け)
第1条(目的) LOI(Letter of Intent)ないし基本合意書の位置づけを確認する条項。最終契約に至るまでの中間合意であることを明示し、本合意書自体が最終契約ではない旨を関係者間で共有する意義を持つと考えられる。
第2条(本取引の概要) 株式譲渡・事業譲渡のいずれを想定するかにより、必要となる手続(株主総会決議、債権者保護手続、労働契約承継法上の手続等)が大きく異なるため、取引類型は早期に確定させることが望ましい。本条は変更可能性を明示しており、この点も非拘束的な性質を裏付ける一要素になると考えられる。
第3条(譲渡価格の目安) LOIにおける価格条項は、原則として法的拘束力を持たせない設計が実務上一般的である。デューデリジェンスの結果次第で大きく変動しうるためであり、これを拘束的に扱うと、後日の減額交渉(プライス・チップ)や増額要求が契約違反の問題に発展しかねない。もっとも、後記のとおり、価格変動に一定の枠をはめる努力義務規定(第2部A-2参照)を設ける例もある。
第4条(デューデリジェンスへの協力義務) 本合意書における数少ない拘束的義務の一つ。協力義務の具体性(開示期限、開示範囲、インタビュー対応等)は、デューデリジェンスの実効性を左右するため、購入者の業種・取引規模に応じて具体化することが望ましい。情報開示範囲について、競業関係にある当事者間ではクリーンチーム・クリーンルーム方式の採用を検討する場面も想定される。
第5条(独占交渉権) LOIの中核的な拘束条項であり、実務相場としては1〜3か月程度とする例が多いとされるが、案件の複雑性(規模、業種、必要な許認可の有無等)により半年程度に及ぶ例もあると考えられる。独占交渉権は譲受側の交渉費用(デューデリジェンス費用等)を保護する機能を持つ一方、譲渡側の売却機会を制約する側面があるため、期間の長短及び例外事由(フィデューシャリー・アウト等)の有無が交渉の中心的論点になりやすい。
第6条(秘密保持) 本取引の存在自体を秘密情報に含めている点に留意。上場会社が当事者となる場合、適時開示規則やインサイダー取引規制との関係で、情報管理体制及び開示タイミングについて別途検討が必要になると考えられる。
第7条(法的拘束力) LOIにおいて最も重要な条項の一つ。日本の実務では、LOI全体を非拘束とし、秘密保持・独占交渉権・デューデリジェンス協力義務・費用負担・有効期間等の手続的規定のみを拘束的とする「一部拘束型」が広く採用されていると考えられる。どの条項を拘束的とするかは当事者間の交渉によるため、本条の列挙内容が契約書全体の他条項と整合しているかを都度確認する必要がある。第3項は、非拘束条項について契約締結を強制しない旨を明確化し、いわゆる「誠実交渉義務」が最終契約締結義務にまで拡張して解釈されることを避ける趣旨と考えられる。
第8条(費用負担) 各自負担が実務上の標準的な取扱いであるが、独占交渉権違反等の場合の費用補償については第2部A-5及びB-3のとおり別途手当てする例がある。
第9条(有効期間) 独占交渉期間及びデューデリジェンス期間の設計と整合させる必要がある。有効期間内に最終契約締結に至らない場合の取扱い(自動終了、協議による延長等)をあらかじめ明確にしておくことが望ましい。
第10条(本合意書の終了) 解除事由を法的拘束力のある条項の違反に限定している点がポイント。非拘束条項(価格の目安等)についての「違反」を理由とする解除は想定しにくいため、拘束条項と非拘束条項の区別(第7条)と平仄を合わせて設計する必要があると考えられる。
第11条(表明保証の概要) 最終契約における詳細な表明保証条項の「前哨」としての位置づけ。LOI段階での表明保証は簡易なものにとどめ、詳細はデューデリジェンス後の最終契約に委ねる設計が一般的である。もっとも、第3項のように、故意の虚偽説明については例外的に責任を負う旨を明記する例があり、この点は非拘束原則の中でも一定の誠実交渉を担保する機能を持つと考えられる。
第12条(反社会的勢力の排除) M&A取引においても契約実務上ほぼ必須の条項。対象会社の役職員や主要取引先が反社会的勢力に該当しないかは、デューデリジェンスの調査事項としても重要性が高い。
第13条〜第15条(譲渡禁止・協議・合意管轄) 一般的な契約書の標準条項であるが、M&A特有の論点として、譲受側がSPC(特別目的会社)を通じて取引を実行する場合に、本合意書上の地位を当該SPCに譲渡できる旨の例外を設けるか検討する余地があると考えられる。
第16条(スケジュール) 非拘束条項として整理されるのが一般的であるが、デューデリジェンス期間・最終契約締結予定日・クロージング予定日を明示することで、両当事者の認識をすり合わせ、手続の停滞を防ぐ実務的な意義がある。株式譲渡の場合は表明保証保険の手配、事業譲渡の場合は労働契約承継や許認可の再取得等、スケジュールに影響する手続を個別に洗い出すことが望ましい。
第4部: 監修者への確認依頼事項
- 第5条の独占交渉権について、期間の標準的な目安(1か月、3か月、6か月等)を業種・取引規模別にどの程度具体的に例示すべきか確認いただきたい。
- 第7条で列挙する拘束条項の範囲(特に第11条第3項の表明保証の一部拘束化、第16条スケジュールを非拘束とする整理)が実務上の標準的な設計として妥当か確認いただきたい。
- 第2部A-1のフィデューシャリー・アウトに類する例外規定について、日本のM&A実務(非上場会社間の相対取引を想定)でどの程度採用例があるか、また文言として適切か確認いただきたい。
- 第4条のデューデリジェンス協力義務について、情報開示の範囲や方法(クリーンルーム方式等)に関する解説を第3部に追加すべきか、追加する場合の水準感を確認いただきたい。
- 第11条の表明保証の概要について、LOI段階でどこまで具体的な事項(財務・法務・労務等)を列挙するのが望ましいか、簡易版とすべきか確認いただきたい。
- 株式譲渡と事業譲渡とで必要となる法的手続(株主総会特別決議、債権者保護手続、労働契約承継法上の手続等)の違いについて、第3部又は別紙で解説を追加する必要があるか確認いただきたい。
- 独占禁止法上の企業結合規制(一定規模以上の株式取得・事業譲渡に係る公正取引委員会への届出義務)との関係で、本合意書に届出義務に関する留意事項を追記すべきか確認いただきたい。
- 上場会社が当事者となる場合の適時開示・インサイダー取引規制との関係について、本商品の対象を非上場会社間の取引に限定する注記を追加すべきか確認いただきたい。