専任仲介契約を中途で終了させる際の通知書です。解約事由、テール条項の適用範囲、開示済み情報の返還義務を確認します。後日の紛争を防ぐための確認欄をあらかじめ設けています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
M&A仲介契約解約通知書
第1部: 書式本文
通知書
〇〇〇〇 御中(以下「貴社」という。仲介会社)
差出人:〇〇〇〇(以下「当方」という。依頼者)
当方は、貴社との間で令和〇年〇月〇日付で締結したM&A仲介契約書(以下「原契約」という。)に基づく専任仲介契約(以下「本仲介契約」という。)につき、下記のとおり解約する旨を通知する。
第1(解約の対象及び根拠条項) 本通知は、原契約第〇条(中途解約)に基づき、本仲介契約の全部を解約するものである。
第2(解約事由) 当方が本仲介契約を解約する事由は、次のうち該当する事項のとおりである(該当箇所に丸を付す、又は具体的に記載する)。 1. 貴社による仲介業務の遂行状況及び成果について当方が不信任と判断したこと 2. 相当の期間を経過したにもかかわらず具体的な相手方候補の紹介その他の成果が得られなかったこと 3. 当方の事業方針の変更その他当方の都合により本件M&Aの検討自体を取りやめること 4. その他(具体的に記載する【 】)
第3(解約の効力発生日) 本仲介契約は、本通知が貴社に到達した日から起算して原契約に定める予告期間(【14】日)を経過した日をもって終了する。ただし、貴社が当該予告期間の短縮に同意する場合は、貴社が同意した日をもって終了する。
第4(未払手数料の取扱い) 本仲介契約の終了までに発生していた相談料及び中間金の支払義務は、本通知による解約によっても消滅しない。他方、本仲介契約終了後に発生する成功報酬については、第5に定めるテール条項の適用がある場合を除き、当方はその支払義務を負わない。
第5(テール条項の適用範囲の確認) 原契約第〇条に定めるテール条項が適用される場合、その対象は、貴社が本仲介契約の有効期間中に当方に対し氏名又は名称を明示して書面で紹介した相手方候補との間で、本仲介契約終了日から【12】か月以内に成約した本件M&Aに限られることを、当方及び貴社は相互に確認する。当方が独自に接触した相手方候補又は貴社の紹介によらない相手方候補との取引には、テール条項は適用されない。
第6(開示済み秘密情報及び資料の返還・破棄) 貴社は、本仲介契約の履行の過程で当方から開示を受けた秘密情報及び資料(電磁的記録を含む。)について、本仲介契約終了後【14】日以内に、当方の指示に従い返還し、又は復元不能な状態で破棄し、その旨を証する書面を当方に提出する。
第7(相手方当事者への通知) 貴社は、本仲介契約の終了に伴い、これまで貴社を通じて交渉を行っていた相手方当事者に対し、当方の指示する範囲で仲介契約終了の事実を通知する。
第8(本通知後の直接交渉) 当方は、本仲介契約終了後、貴社の紹介によらない相手方候補との間で本件M&Aに関する交渉を自由に行うことができる。
第9(確認欄) 貴社は、本通知の内容(特に第5に定めるテール条項の適用範囲)に異議がある場合、本通知の到達後【7】日以内に書面で当方に通知するものとし、当該期間内に異議の通知がないときは、本通知記載の内容について貴社の異議がないものとして取り扱う。
令和〇年〇月〇日 〇〇〇〇(当方 記名押印)
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 解約する依頼者向けの修正
A-1. テール条項適用対象からの完全除外を求める場合
追加条文例:「原契約締結後、貴社からの紹介によらず当方が独自に把握し、又は当方の役員若しくは既存の取引先を通じて接触した相手方候補については、原契約に定めるテール条項の適用対象から除外されることを、貴社は本通知により確認する。」 一言解説: 依頼者独自のルートで進めていた交渉先までテール条項の対象になると、解約後も自由な交渉が事実上制約されるため、除外対象を具体的に明記する修正である。
A-2. 返還資料の範囲の明確化(複製物・分析資料を含める)
修正後:「第6の返還又は破棄の対象には、当方から開示を受けた原資料に加え、貴社が独自に作成した当方に関する分析資料、企業価値算定資料及びこれらの複製物を含む。」 一言解説: 秘密情報の返還対象が原資料のみに限定されると、仲介会社が作成した派生資料が手元に残り続けるため、依頼者側は派生資料まで含めた返還・破棄を求める修正を行う。
B. 仲介会社向けの修正
B-1. 解約理由が不当な場合の成果不十分の反証機会の留保
追加条文例:「貴社は、第2の解約事由(特に第2号)について事実と異なると考える場合、本通知到達後【7】日以内に、これまでの活動実績を記載した書面を当方に提出することができ、当方はこれを踏まえて解約の当否を再検討する。」 一言解説: 成果不十分を理由とする一方的な解約に対し、仲介会社側が活動実績を示して再考を促す機会を確保するための修正である。
B-2. 進行中の交渉案件に関する引継ぎ協力の要請
追加条文例:「当方は、本仲介契約終了時点で貴社の仲介により具体的な交渉が進行中であった相手方候補がある場合、当該交渉の円滑な引継ぎのため、貴社の求めに応じて【14】日を限度として必要な協力を行う。」 一言解説: 解約時点で進行中の交渉が中断すると相手方当事者や成約可能性に悪影響が及ぶため、仲介会社側が一定の引継ぎ協力を依頼者に求める修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、専任仲介契約を契約期間の途中で終了させる際に、解約の意思表示及び解約後の権利義務関係(特にテール条項の適用範囲と資料の返還)を書面で確認するために用いる。単に契約期間満了による自動更新を止める場合(更新拒絶の通知)には手続や記載事項が異なるため、本書式ではなく更新拒絶通知の書式を用いるべきである。また、仲介会社側の債務不履行を理由に契約を解除し損害賠償を求める場面では、本書式の解約事由の記載に加えて債務不履行の内容を具体的に特定する必要がある。
根拠法令 仲介契約は準委任契約(民法第656条)としての性質を有し、委任契約の解除に関する民法第651条第1項により、各当事者はいつでも契約を解除することができるのが原則である。もっとも、同条第2項により、相手方に不利な時期に解除した場合や、委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除した場合には、やむを得ない事由がない限り損害賠償責任を負う可能性がある点に留意が必要である。仲介会社が本仲介契約に基づき既に相当の営業活動を行っていた場合、テール条項に相当する定めがなくとも、民法上の信義則(民法第1条第2項)に基づき一定の配慮が求められる場合がある。手数料体系及び解約時の取扱いについては、中小企業庁「中小M&Aガイドライン」に示された考え方も参考になる。
実務でよくある失敗と対策 第一に、解約通知にテール条項の適用範囲を明記せず、後日「紹介を受けていない相手方との成約についてまで成功報酬を請求された」という紛争が生じる失敗がある。第5のように紹介実績のある相手方候補に限定して確認することが対策となる。第二に、開示済み秘密情報の返還・破棄の確認を怠り、解約後も仲介会社の手元に依頼者の財務情報等が残存する失敗がある。第6のように返還・破棄及びその証明書の提出を明記することが対策となる。第三に、解約の効力発生日が曖昧なまま通知を送付し、予告期間の起算点をめぐって争いになる失敗がある。第3のように到達日を起点とする効力発生日を明記することが対策となる。
委任の解除に伴う損害賠償責任の有無は個別の事情により判断が異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 原契約における中途解約条項及び予告期間を確認したか
- [ ] 解約事由を具体的に記載したか(不信任、成果不十分、自己都合等)
- [ ] 解約の効力発生日(到達日起算)を明記したか
- [ ] 未払の相談料・中間金の取扱いを確認したか
- [ ] テール条項の適用対象(紹介実績のある相手方候補に限定するか)を明記したか
- [ ] 開示済み秘密情報・資料(派生資料を含む)の返還又は破棄の期限を定めたか
- [ ] 相手方当事者への終了通知の要否及び範囲を確認したか
- [ ] 解約後の依頼者による直接交渉の自由を確認したか
- [ ] 仲介会社からの異議申出期間及び手続を設けたか
- [ ] 進行中の交渉案件がある場合の引継ぎ対応を検討したか