分譲マンションの管理組合が管理会社へ事務管理や設備管理を委託する契約書。マンション管理適正化法と建物の区分所有等に関する法律上の管理者規定に準拠する。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
マンション管理委託契約書
第1部: 書式本文
第1条(目的) 【マンション名】管理組合(以下「甲」という。)は、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)第3条に基づき組織された団体であり、区分所有法第25条に定める管理者としての職務の一部を、マンション管理業者【商号】(登録番号:マンション管理業 国土交通大臣(【 】)第【 】号、以下「乙」という。)に委託し、乙はこれを受託する。
第2条(委託業務の内容) 乙が受託する業務は、次の各号のとおりとする。 1. 事務管理業務(管理費・修繕積立金の収納、会計帳簿の作成、総会・理事会の運営支援) 2. 管理員業務(受付、点検、立会い等) 3. 清掃業務(共用部分の日常清掃及び定期清掃) 4. 建物・設備管理業務(建物、給排水設備、電気設備等の点検及び保守の手配)
第3条(重要事項説明) 乙は、本契約の締結又は更新に先立ち、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「適正化法」という。)第72条に基づき、甲(管理者等又は管理組合集会)に対して重要事項説明会を開催し、業務内容、委託費、契約期間その他の事項を記載した書面を交付して説明する。
第4条(契約の締結時の書面交付) 乙は、本契約の締結後、適正化法第73条に基づき、契約の内容を記載した書面を遅滞なく甲に交付する。
第5条(管理業務主任者の設置) 乙は、適正化法第56条に基づき、事務所ごとに一定数のマンション管理業務主任者を設置し、重要事項説明及び契約締結時書面への記名は管理業務主任者が行う。
第6条(管理費等の収納・保管) 1. 乙は、適正化法第76条及び国土交通省の定める財産の分別管理に関するガイドラインに基づき、甲から収納した管理費及び修繕積立金を、乙の固有財産及び他の管理組合の財産と分別して管理する。 2. 乙は、収納した管理費等の月次収支状況を、翌月【10】日までに甲(理事長)に報告する。
第7条(管理者としての権限の代行の範囲) 乙は、区分所有法第26条に定める管理者の権限のうち、共用部分の保存行為及び甲があらかじめ書面で委任した範囲の行為について、甲の名において事務を代行することができる。ただし、規約の変更、大規模修繕工事の実施決定その他集会の決議を要する事項について、乙が単独で意思決定することはできない。
第8条(管理費滞納者への対応) 1. 乙は、管理費等の滞納が生じたときは、滞納者に対し督促状の送付その他の督促業務を行う。 2. 滞納が【3】か月以上continued した場合の法的措置(支払督促、少額訴訟又は通常訴訟の提起)の要否については、乙は甲に報告し、甲の総会又は理事会の決議に基づき対応する。乙は自らの判断で訴訟提起の代理を行うものではない。
第9条(善管注意義務) 乙は、善良な管理者の注意をもって委託業務を行う(民法第644条)。
第10条(第三者への再委託) 乙は、清掃業務、建物・設備管理業務の全部又は一部を、甲の承諾を得て第三者に再委託することができる。ただし、事務管理業務のうち会計に関する業務を再委託してはならない。
第11条(甲の協力義務) 甲は、乙が委託業務を遂行するために必要な範囲で、総会及び理事会への出席の機会を確保し、規約及び総会決議の内容を乙に通知する。
第12条(委託費用) 甲は、乙に対し、委託業務の対価として月額金【 】円(消費税別)を、毎月末日までに乙の指定口座に振り込む方法により支払う。
第13条(契約期間及び更新) 本契約の有効期間は、契約締結日から【1】年間とする。期間満了の【3】か月前までに甲乙いずれからも更新拒絶の申出がないときは、同一条件でさらに【1】年間更新するものとし、以後も同様とする。
第14条(解除) 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、相当の期間を定めた催告後もその違反が是正されないときは、本契約を解除することができる。
第15条(契約終了時の引継ぎ) 本契約が終了したときは、乙は、甲又は甲が指定する新管理業者に対し、会計帳簿、管理費等の預り金、区分所有者名簿その他の資料を遅滞なく引き継ぐ。
第16条(協議及び管轄) 本契約に定めのない事項は甲乙協議して定める。本契約に関する紛争については【地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 管理組合向け
A-1 第8条の修正例 「乙は、滞納額が管理費等の【6】か月分に達した場合、区分所有法第7条の先取特権の行使又は競売の申立ての可能性について、速やかに甲の理事会に報告し、法的助言を得るための顧問弁護士等の紹介を行う。」 一言解説: 滞納の長期化は管理組合の財政を直接圧迫するため、乙の報告義務のトリガーを金額・期間で具体的に設定し、対応の遅れを防ぐ。
A-2 第7条の修正例 「乙が甲の名において行うことができる保存行為は、金【20万】円以下の緊急補修に限るものとし、これを超える支出を要する行為は理事会の事前承認を要する。」 一言解説: 管理者権限の代行範囲が曖昧だと、区分所有者から「知らないうちに支出が決まっていた」との不満が生じるため、金額基準で線引きする。
B節: マンション管理会社向け
B-1 第10条の修正例 「乙は、再委託先の選定にあたり、当該業務に必要な有資格者(消防設備士、電気主任技術者等)を配置していることを確認し、再委託先の名称及び業務範囲を甲に通知する。」 一言解説: 管理会社が再委託先の管理を怠ると善管注意義務違反を問われかねないため、再委託先の適格性確認と通知の手続を明文化する。
B-2 第6条の修正例 「乙は、収支報告に加え、管理費等の残高証明又は通帳の写しを、甲の求めに応じて提示する。」 一言解説: 分別管理義務(適正化法第76条)の履行状況を可視化し、横領等の疑いをめぐる紛争を未然に防ぐ。
C節: 区分所有者向け
C-1 第6条の修正例 「甲は、乙から提出された月次収支報告を、区分所有者が閲覧できるよう掲示板又は電磁的方法により速やかに周知する。」 一言解説: 委託契約の当事者は管理組合であるが、実際に費用を負担する区分所有者への情報開示が不十分だと不信感につながるため、周知義務を組合内規約と整合させて明記する。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、分譲マンションの管理組合が、区分所有法上の管理者の職務の一部をマンション管理業者に委託する場面で使用する。使用してはならない場面としては、管理組合が法人化(区分所有法第47条の管理組合法人)されている場合で、法人としての意思決定手続や代表理事の権限に関する規定との整合を別途確認する必要がある場合、及び委託先が適正化法上の登録を受けていない者である場合が挙げられる。
法的な根拠としては、区分所有法第3条が管理組合の団体性を、第25条・第26条が管理者の選任及び権限をそれぞれ定めており、管理組合が管理者としての事務の一部を管理業者に委託する構造がここに基づく。適正化法については、第2条第3号がマンション管理業を定義し、第44条以下がマンション管理業者の登録制度を、第56条がマンション管理業務主任者の設置を、第72条・第73条が重要事項説明及び契約締結時書面の交付を義務付けている。財産の分別管理については第76条及び国土交通省の分別管理ガイドラインが実務上の基準となる。国土交通省が公表する「マンション標準管理委託契約書」も条項作成の参考になる。
実務でよくある失敗の一つ目は、乙が代行できる管理者権限の範囲が曖昧なまま契約し、大規模修繕工事の業者選定や高額な緊急補修を乙が独断で進めてしまい、区分所有者集会の決議事項(区分所有法第17条・第18条)を潜脱したとの批判を招くケースである。第7条のように代行範囲を金額や行為類型で具体的に限定することが対策となる。二つ目は、管理費等の滞納が長期化しても督促の記録が残らず、時効(民法第166条)の管理を怠るケースであり、第8条の督促手続と法的措置の判断フローを明記することが対策となる。三つ目は、重要事項説明(適正化法第72条)を書面交付のみで済ませ、実質的な説明会を開催しなかったために管理組合との認識齟齬が生じるケースであり、第3条で説明会の開催を明記することが対策となる。管理規約の内容は物件ごとに異なるため、個別事案は専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 乙が適正化法第44条に基づくマンション管理業者登録を受けているか
- [ ] 契約締結・更新前に適正化法第72条の重要事項説明会を実施したか
- [ ] 契約締結後に適正化法第73条の契約締結時書面を交付したか
- [ ] マンション管理業務主任者(適正化法第56条)の設置及び記名がなされているか
- [ ] 委託業務の内容(事務管理・管理員・清掃・建物設備管理)が号ごとに明確か
- [ ] 区分所有法上の管理者権限のうち乙が代行できる範囲が金額等で限定されているか
- [ ] 大規模修繕や規約変更など集会決議事項が乙の権限外であることが明記されているか
- [ ] 管理費等の分別管理(適正化法第76条)の方法が明記されているか
- [ ] 管理費滞納者への督促手続と法的措置の判断主体が明確か
- [ ] 再委託の可否と再委託先の要件が定められているか
- [ ] 契約終了時の会計帳簿・預り金の引継ぎ方法が定められているか
- [ ] 区分所有者への情報開示・周知の方法が組合規約と整合しているか