商業施設やオフィスビルを一括で借り上げ転貸するマスターリース契約書。民法第613条の転貸借と第612条の承諾を前提に、賃料保証、免責期間、解除条件を規定。

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マスターリース契約書(商業施設・オフィス一括借上げ)

第1部: 書式本文

【建物オーナー】〇〇(以下「甲」という。)と【借上げ事業者】〇〇(以下「乙」という。)は、下記建物(以下「本建物」という。)の一括賃貸借及び転貸に関し、次のとおりマスターリース契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的) 甲は乙に対し本建物を一括して賃貸し、乙は本建物を第三者(以下「転借人」という。)に転貸し商業施設又はオフィスとして運営することを目的とする。

第2条(賃貸借の目的物及び使用目的) 本建物の所在・構造・面積は別紙物件目録記載のとおりとし、乙は本建物を店舗又は事務所として第三者へ転貸する用途に限り使用する。

第3条(転貸の承諾) 甲は、民法第612条第1項の規定に基づき、乙が本建物の全部又は一部を第三者に転貸することをあらかじめ書面で承諾する。乙は転貸に際し、転借人との間で締結する転貸借契約の内容を事前に甲へ通知するものとする。

第4条(賃料及び賃料保証) 1. 乙は甲に対し、毎月末日限り翌月分の賃料として金〇〇円を支払う。 2. 乙は、本建物の稼働率にかかわらず、前項の賃料(以下「保証賃料」という。)の支払義務を負うものとする。ただし、第5条に定める免責期間中はこの限りでない。

第5条(免責期間) 契約開始日から〇か月間は免責期間とし、乙は当該期間中の賃料支払を免除される。

第6条(敷金及び保証金) 乙は甲に対し、本契約締結時に敷金として金〇〇円を預託する。敷金は本契約終了時、未払賃料及び原状回復費用を控除のうえ返還する。

第7条(修繕義務の分担) 1. 建物の躯体・共用部分・主要設備の修繕は甲の負担とする。 2. 乙が転貸のために設置した内装・専用設備の修繕は乙の負担とする。

第8条(賃料の改定) 1. 甲又は乙は、公租公課の増減、近傍同種建物の賃料相場の変動その他経済事情の変動により本契約の賃料が不相当となったときは、相手方に対し賃料改定の協議を申し入れることができる。 2. 前項の協議が調わない場合の取扱いについては、借地借家法第32条の規定によるものとする。

第9条(中途解約) 乙は、甲に対し〇か月前までに書面で予告することにより、本契約を中途解約することができる。甲による解約の申入れについては、正当の事由を要するものとする。

第10条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己及び転借人が暴力団員等反社会的勢力に該当しないことを表明し、これに違反した場合は無催告で本契約を解除できるものとする。

第11条(契約解除) 甲又は乙は、相手方が賃料の支払を〇か月分以上怠り、又は本契約の重要な条項に違反し、相当期間の催告後もこれが是正されないときは、本契約を解除することができる。

第12条(契約終了時の原状回復及び転借人との関係) 1. 本契約が終了したときは、乙は本建物を原状に回復のうえ甲に返還する。 2. 甲は、本契約終了時点で存続する転貸借契約について、借地借家法の定めるところに従い転借人との関係を処理するものとする。

第13条(協議事項) 本契約に定めのない事項は、甲乙誠実に協議のうえ定める。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 借上げ事業者向け

A-1 第4条第2項の修正例 「乙は、稼働率が80%を下回る月については、保証賃料を実収賃料の90%相当額まで減額できるものとする。」 一言解説: 転貸収入の変動リスクを一方的に事業者が負わないよう、保証賃料に稼働率連動の減額条項を組み込むことで、空室リスクをオーナーとある程度分担できる。

A-2 第9条の修正例 「乙は、天災その他不可抗力により本建物の使用が継続困難となった場合、予告期間を置かず本契約を解約できるものとする。」 一言解説: 借上げ事業者にとっては、建物滅失や重大な法令改正など予測不能な事態に備え、即時解約の余地を残しておくことが重要である。

B節: 建物オーナー向け

B-1 第4条第2項の修正例 「乙の賃料支払義務は、稼働率にかかわらず固定額とし、天災その他不可抗力による減額を除き変更しないものとする。」 一言解説: オーナー側は保証賃料の安定性こそがマスターリースの利点であるため、減額事由を天災等の限定的な場合に絞り込む修正が有効である。

B-2 第9条の修正例 「乙による中途解約の予告期間は12か月とし、予告期間中の賃料支払義務は免除されない。」 一言解説: 短期解約による収入の急減を防ぐため、オーナー側では予告期間を長期化し、解約通知後も賃料債務を存続させる条項が交渉上の防御になる。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、商業施設やオフィスビルの所有者が、運営ノウハウを持つ事業者に建物を一括賃貸し、その事業者が個別テナントへ転貸するマスターリース(サブリース)方式を組成する場面で使用する。個人が居住する住宅を対象とするサブリースで賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の適用対象となる場合や、単純な又貸し(転貸人が自ら運営を行わない名義貸し的な転貸)には適さないため、対象に応じて書式を使い分ける必要がある。

法的根拠としては、民法第613条が転貸の効果として、適法な転貸借がされたときは転借人は賃貸人に対して直接に義務を負うことを定めており、原賃貸借契約(甲乙間)が終了した場合の転借人の地位に影響することから、第12条のように契約終了時の転借人との関係整理を明記する意義がある。また民法第612条第1項は、賃借人が賃貸人の承諾を得なければ賃借物を転貸できない旨を定めており、承諾がない転貸は同条第2項により賃貸人による解除事由となり得るため、第3条で包括的な事前承諾を明確にしておくことが不可欠である。賃料改定に関しては借地借家法第32条の借賃増減請求権が適用され得ることも踏まえ、協議手続を条項化しておく必要がある。

実務でよくある失敗としては、まず賃料保証の稼働率連動の有無を曖昧にしたまま契約し、空室が増加した局面で保証賃料の支払能力を借上げ事業者が失い、賃料未払が長期化するケースが挙げられる。第4条・第5条のように保証賃料額と免責期間を数値で明記し、減額条件を限定列挙することで予防できる。次に、原賃貸借契約が中途解除された場合の転借人保護の手当てを欠き、転借人との紛争にオーナーが巻き込まれる例も多いため、第12条のような終了時処理条項が必要である。さらに、修繕義務の分担が曖昧なまま放置され、設備故障時に甲乙間で費用負担をめぐる対立が生じることも少なくないため、躯体と内装・専用設備を区分した第7条のような整理が有効である。契約金額や建物の用途によって適切な条項構成は異なるため、締結前に専門家へ確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 本建物の所在・面積・用途区分を物件目録で正確に記載したか
  • [ ] 保証賃料の金額及び支払期日を明記したか
  • [ ] 免責期間の開始日・終了日を具体的に定めたか
  • [ ] 敷金・保証金の額と返還条件を明記したか
  • [ ] 修繕義務の分担(躯体・共用部分と専用部分・内装)を区分したか
  • [ ] 賃料改定協議の手続と借地借家法第32条との関係を確認したか
  • [ ] 中途解約の予告期間及び正当事由の要否を借上げ側・オーナー側それぞれ確認したか
  • [ ] 転貸の事前承諾範囲(全部・一部、業種制限の有無)を明確にしたか
  • [ ] 契約終了時の転借人との関係整理の方法を定めたか
  • [ ] 反社会的勢力排除条項を挿入したか