妊娠・出産する社員がいる企業向け。制度利用を妨げる言動の禁止と相談体制を定め、男女雇用機会均等法第11条の3の措置義務に対応する規程です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
妊娠・出産等に関するハラスメント防止規程
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本規程は、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)において、妊娠、出産及び育児・介護に関する制度の利用等に関するハラスメント(以下「マタニティハラスメント等」という。)を防止するため、禁止行為、相談体制及び是正措置を定める。本規程は、男女雇用機会均等法第11条の3及び育児介護休業法第25条に定める事業主の雇用管理上の措置義務を履行するために策定する。
第2条(定義) 1. 本規程において「マタニティハラスメント等」とは、妊娠・出産等又は育児・介護に関する制度の利用に関する言動により就業環境を害すること(制度等の利用への嫌がらせ型)及び妊娠・出産等の状態に関する言動により就業環境を害すること(状態への嫌がらせ型)をいう。 2. 「制度等」とは、産前産後休業、育児休業、介護休業、子の看護等休暇、短時間勤務その他育児介護休業法及び男女雇用機会均等法に定める諸制度をいう。
第3条(適用対象者) 本規程は、性別を問わず、制度等の利用対象となる全ての従業員及びその同僚・上司となり得る全ての従業員に適用する。
第4条(禁止行為) 何人も、次の各号に掲げる行為を行ってはならない。 1. 制度等の利用の申出をしないよう、又は取得日数を減らすよう強要すること 2. 制度等の利用を理由として、解雇その他の不利益な取扱いを示唆すること 3. 制度等を利用する従業員に対し、繰り返し又は継続的に、利用を非難し、又は嫌味を言うこと 4. 妊娠、出産、切迫流産その他の状態を理由として、繰り返し又は継続的に嫌がらせを行うこと
第5条(不利益取扱いの禁止) 会社は、男女雇用機会均等法第9条及び育児介護休業法第10条に基づき、妊娠、出産、産前産後休業の請求・取得、育児休業その他の制度等の利用の申出・取得を理由として、解雇、雇止め、降格、不利益な配置転換その他の不利益な取扱いを行わない。
第6条(業務分担の見直し手続) 1. 制度等を利用する従業員が生じたときは、所属長は業務分担の見直しを行い、当該従業員及び周囲の従業員双方の業務負担が過重にならないよう配慮する。 2. 前項の見直しに際し、所属長は周囲の従業員に対する業務分担変更の理由の説明を行い、制度利用者への非難につながらないよう留意する。
第7条(相談窓口) 1. 会社は、人事部門内にマタニティハラスメント等に関する相談窓口を設置する。 2. 相談は、本人からのほか、同僚又は上司からの相談も受け付ける。
第8条(相談者・利用者に対する不利益取扱いの禁止) 会社は、相談を行ったこと、事実確認に協力したこと又は制度等を利用したことを理由として、相談者、協力者及び制度利用者に不利益な取扱いを行わない。
第9条(調査及び是正措置) 1. 会社は、相談を受けたときは、相談者の意向を確認の上、行為者及び関係者への事実確認を行う。 2. 調査の結果、マタニティハラスメント等に該当する行為が認められたときは、就業規則の懲戒規定に基づき対処するとともに、再発防止のための措置を講じる。
第10条(妊娠中及び出産後の健康管理措置) 会社は、男女雇用機会均等法第12条及び第13条に基づき、妊娠中及び出産後の女性従業員が保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保するとともに、指導事項を守ることができるよう勤務時間の変更、業務の軽減等の措置を講じる。
第11条(教育研修) 会社は、管理監督者及び全従業員に対し、マタニティハラスメント等の防止に関する教育研修を年【 】回実施する。
第12条(改廃) 本規程の改廃は、就業規則の変更手続に準じて行う。
第13条(附則) 本規程は【西暦年】年【 】月【 】日から施行する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 女性比率の高い職場向け(産休・育休取得者が多く発生する職場)
A-1 第6条の修正例 「会社は、産前産後休業・育児休業の取得予定者が生じた時点で、所属長と人事部門が業務引継ぎ計画を作成し、代替要員の確保又は業務分担の再配分を休業開始の【1】か月前までに完了させる。」 一言解説: 取得者が多い職場では個別対応では追いつかないため、業務引継ぎ計画の作成時期をあらかじめ規程化し、周囲への負担偏重を計画的に防ぐことが重要となる。
A-2 第10条の修正例 「妊娠中の従業員から母性健康管理指導事項連絡カードの提出があったときは、会社は速やかに勤務時間の短縮、通勤緩和、休憩の増加等の措置を実施し、実施状況を産業医と共有する。」 一言解説: 対象者が多い職場では、連絡カード提出時の対応を標準化し産業医と共有する体制を明記することで、対応漏れや遅れを防止できる。
B節: 全業種汎用向け(制度利用者が少なく個別対応が中心となる企業)
B-1 第7条の修正例 「相談窓口は人事部門が兼務し、対応が難しい事案が生じたときは【顧問社会保険労務士又は弁護士】に相談の上対応する。相談者が希望する場合、同性の担当者が対応することができる。」 一言解説: 制度利用者が少なく専任窓口を置きにくい企業では、外部専門家との連携体制と担当者の性別配慮を明記し、相談のしやすさを確保することが有効である。
B-2 第9条の修正例 「調査の結果、行為者が管理監督者であった場合、会社は当該者に対する管理職研修の受講を義務付けるとともに、必要に応じて評価者としての適格性を人事考課において見直す。」 一言解説: 業種を問わず、行為者が管理職の場合は影響が大きいため、懲戒に加えて評価者としての適格性の見直しまで踏み込んだ対応を規程上明記しておくことが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本規程を導入すべき場面は、産前産後休業、育児休業その他の制度利用者が在籍し、又は今後在籍する見込みのある全ての企業であり、特に女性従業員の比率が高い、あるいは今後高める方針の企業では優先度が高い。一方、就業規則本体に既にマタニティハラスメント等の禁止条項と相談窓口の設置が具体的に盛り込まれている企業では、重複する下位規程を新設するより、既存規定の実効性(教育研修の実施状況等)を点検する方が有益な場合がある。
根拠法令としては、男女雇用機会均等法第11条の3が妊娠・出産等に関するハラスメント防止のための雇用管理上の措置を事業主に義務付け、育児介護休業法第25条が育児休業等に関するハラスメント防止措置を同様に義務付けている。また、男女雇用機会均等法第9条は婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いを禁止し、育児介護休業法第10条は育児休業等の申出・取得を理由とする不利益取扱いを禁止しており、第5条はこれらを踏まえた条文である。さらに、男女雇用機会均等法第12条・第13条は妊娠中及び出産後の女性従業員の健康管理措置を事業主に義務付けており、第10条の根拠となる。
実務でよくある失敗の一つ目は、制度利用者本人へのハラスメントは意識していても、業務のしわ寄せを受ける周囲の従業員への説明を怠り、周囲から利用者への嫌がらせ(制度等の利用への嫌がらせ型)が発生することである。第6条のように業務分担見直しの説明義務を明記することで防止できる。
二つ目の失敗は、不利益取扱いの禁止を制度上定めていても、実際には人事考課において休業期間を理由に低評価を付けるなど、運用面で規程と矛盾する扱いがなされることである。第5条の趣旨を人事考課の運用ルールにも反映させる必要がある。
三つ目の失敗は、行為者が管理監督者である場合に、懲戒処分のみで対応を終え、評価者としての適格性の検証を行わず、同種の問題が再発することである。第9条のように再発防止措置まで規程に含めておくことが望ましい。
制度利用と業務運営の両立に関する具体的な対応は職場の実情により異なるため、個別事案は専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 制度等の利用への嫌がらせ型と状態への嫌がらせ型を区別して定義したか
- [ ] 禁止行為を具体的に列挙したか
- [ ] 不利益取扱いの禁止(均等法第9条・育介法第10条)を明記したか
- [ ] 業務分担見直しの手続と周囲への説明義務を定めたか
- [ ] 相談窓口の設置及び相談方法を明記したか
- [ ] 相談・制度利用による不利益取扱いの禁止を定めたか
- [ ] 調査及び是正措置の手続を定めたか
- [ ] 妊娠中・出産後の健康管理措置(均等法第12条・第13条)を定めたか
- [ ] 行為者が管理職である場合の追加対応を検討したか
- [ ] 教育研修の実施頻度・対象者を定めたか