自社の商号や代表者名の表示を他者に認める際の条件を定める書式。会社法第9条の名板貸責任を踏まえ、使用範囲と期間、無断利用が判明した場合の中止請求を明記します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
名義使用承諾書
第1部: 書式本文
【会社名(名義提供者)】(以下「甲」という)は、【使用者名(名義使用者)】(以下「乙」という)に対し、次のとおり甲の商号又は代表者名の使用を承諾する。
第1条(目的) 本書は、乙が【使用目的(店舗表示・広告表示・業務提携表示等)】において、甲の商号、屋号又は代表者名(以下「本名義」という)を使用することについて、甲が承諾する条件を定めることを目的とする。
第2条(使用範囲) 乙が本名義を使用できる範囲は【使用範囲(表示物・媒体・地域等)】に限る。
第3条(使用期間) 本名義の使用を承諾する期間は【開始日】から【終了日】までとする。
第4条(使用態様の制限) 乙は、甲の事前の書面による承諾なく、本名義の表示態様(ロゴ・書体・色彩を含む)を変更しない。
第5条(第三者との誤認防止) 乙は、本名義の使用にあたり、甲と乙が同一の事業主体であるとの誤認を第三者に与えないよう、実際の運営主体を併記する等の措置を講じる。
第6条(対価) 本名義の使用に対する対価は【対価の有無・金額】とする。
第7条(責任の分担) 乙が本名義を使用して行う事業に関し第三者との間に生じた債務又は損害については、乙がその責任を負う。ただし、法令上甲が責任を負うとされる場合はこの限りでない。
第8条(補償) 乙が本名義を使用したことに起因して甲が第三者から損害賠償等の請求を受けた場合、乙は甲に生じた損害を補償する。
第9条(承諾の撤回・中止請求) 甲は、乙による本名義の使用が本書の条件に違反していると認めるとき、又は甲の信用を毀損するおそれがあると認めるときは、乙に対し使用の中止を請求することができる。
第10条(使用終了時の措置) 本書に定める使用期間が満了し、又は前条の中止請求があったときは、乙は速やかに本名義の表示を撤去する。
第11条(反社会的勢力の排除) 乙は、自己が反社会的勢力に該当せず、将来にわたっても該当しないことを表明する。乙が本条に違反した場合、甲は催告を要せず本書を解除することができる。
以上、上記の内容を確認し、承諾する。
【承諾日】 甲: 【氏名・名称】 印 乙: 【氏名・名称】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 経営者・代表の立場から
経営者・代表としては、名義使用を認めることが会社法上の名板貸責任につながるリスクを踏まえ、乙の事業内容を限定し、逸脱した場合には直ちに承諾を撤回できる条項を強化することが望ましい。
修正例:「乙が第2条に定める使用範囲を超えて本名義を使用した場合、甲は催告を要せず直ちに本書を解除し、乙に対し使用の即時停止及び表示物の撤去を求めることができる。」
一言解説:名義の無断使用や逸脱使用を放置すると、取引の相手方に対して甲が名板貸責任を負うリスクが高まるため、逸脱時の即時解除条項が経営者側の防御手段として重要である。
B. 法務担当の立場から
法務担当としては、乙が本名義を用いて締結する契約書や発行する書類に、実際の契約当事者が乙であることを明記させる規定を設けることが有効である。
修正例:「乙は、本名義を用いて作成する契約書、請求書その他の書類に、契約当事者が乙であることを明記し、甲を契約当事者であるかのように表示しない。」
一言解説:取引の相手方が名義上の甲を契約当事者と誤認すると、甲が意図しない契約責任を負わされるおそれがあるため、書類上の当事者表示を明確にさせることが重要である。
C. 総務担当の立場から
総務担当としては、名義使用の実態を把握するため、乙に対し定期的な使用状況の報告を求める運用を追加することが望ましい。
修正例:「乙は、【頻度】ごとに、本名義を使用した表示物、広告及び契約書類の一覧を甲に報告する。」
一言解説:名義使用の実態を継続的に把握しておくことで、逸脱使用の早期発見及び是正につなげることができる。
総務担当としてはさらに、名義使用者が倒産又は事業を廃止した場合に備え、表示物の撤去を速やかに行わせるための連絡体制をあらかじめ整えておくことが望ましい。
修正例:「乙が事業を廃止し、又は破産手続開始の決定を受けたときは、乙又はその清算人若しくは破産管財人は、遅滞なく本名義の表示を撤去する。」
一言解説:名義使用者の事業状況が急変した場合に表示だけが放置されると、第三者の誤認を招く期間が長引くため、事業終了時の対応をあらかじめ明記しておくことが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、自社の商号、屋号又は代表者名の表示を、フランチャイズ関係にない別法人や個人事業主が使用することを認める場面で使用する。子会社やグループ会社が正式な商標ライセンス契約に基づき商号を使用する場合は、より詳細な商標使用許諾契約を別途検討する必要がある。
根拠法令としては、会社法第9条が、自己の商号を使用して事業又は営業を行うことを他人に許諾した会社は、当該会社が当該事業を行うものと誤認して取引をした者に対し、当該他人と連帯してその取引によって生じた債務を弁済する責任を負うと定めている(名板貸責任)。この規定は商法第14条にも同様の趣旨の規定があり、名義提供者にとって重大な責任リスクとなるため、名義使用を軽々に許諾すべきではなく、許諾する場合であっても本書式のように使用条件を具体的に定めておくことが必要である。
実務でよくある失敗として、第一に、知人や取引先に軽い気持ちで屋号の使用を認めたところ、使用者が本名義を用いて多額の負債を負い、名義提供者である甲が名板貸責任を追及されるケースがある。使用範囲を限定し、逸脱時の即時解除条項を設けることが対策となる。第二に、乙が発行する契約書や請求書に甲の名義のみが表示され、実際の契約当事者が乙であることが示されていないため、相手方が甲を契約当事者と誤認するケースがあり、書類上の当事者表示を義務付けることが必要である。第三に、対価を定めずに名義使用を認めたため、後日、無償での使用が既得権のように扱われ、甲が使用条件の見直しや撤回を求めにくくなるケースがあり、対価及び使用期間をあらかじめ明確に定めておくことが望ましい。
第四に、乙が事業を廃止したにもかかわらず、看板や広告における本名義の表示がそのまま放置され、取引先が乙の事業継続を誤信して取引を行ってしまうケースがあり、事業廃止時の表示撤去義務を明記することが対策となる。
名板貸責任の成否は取引の相手方の認識や外観の程度により個別に判断されるため、実際の運用にあたっては弁護士等の専門家に個別に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 使用を認める名義(商号・屋号・代表者名)の範囲を特定したか
- [ ] 使用目的及び使用媒体を具体的に限定したか
- [ ] 使用期間を明記したか
- [ ] 甲と乙が別主体であることを表示する義務を定めたか
- [ ] 契約書類上の当事者表示を乙に義務付けたか
- [ ] 使用範囲を超えた場合の即時解除条項を設けたか
- [ ] 第三者からの請求に対する補償条項を設けたか
- [ ] 使用終了時の表示撤去義務を定めたか
- [ ] 対価の有無及び金額を明記したか
- [ ] 定期的な使用状況報告の要否を検討したか
- [ ] 乙の事業廃止時の表示撤去義務を明記したか
- [ ] 表示態様(ロゴ・書体・色彩)の変更制限を明記したか