心の健康づくり計画を策定する企業向け。4つのケアと職場復帰支援の手順を定め、労働安全衛生法第70条の2の指針に沿った対策体制を整えます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
メンタルヘルス対策規程
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本規程は、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)が、労働者の心の健康の保持増進のための指針(労働安全衛生法第70条の2に基づき厚生労働大臣が公表する指針)を踏まえて策定する「心の健康づくり計画」の実施体制、4つのケアの内容及び職場復帰支援の手順を定め、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止と早期対応を図ることを目的とする。
第2条(定義) 本規程において「メンタルヘルス不調」とは、精神及び行動の障害に分類される精神疾患のほか、就業に影響を及ぼす程度の心身のストレス状態を含むものをいう。「4つのケア」とは、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア及び事業場外資源によるケアをいう。
第3条(適用対象者) 本規程は、就業規則第【 】条に定める全ての従業員に適用する。
第4条(心の健康づくり計画) 1. 会社は、毎年度、心の健康づくり計画を策定し、実施体制、教育研修計画及び目標を定める。 2. 心の健康づくり計画の策定及び見直しに当たっては、衛生委員会の調査審議を経るものとする。
第5条(セルフケアの推進) 会社は、従業員に対し、ストレスへの気付き方及び対処方法に関する教育研修を年【 】回以上実施する。
第6条(ラインによるケア) 1. 管理監督者は、部下の日常の様子の変化に注意を払い、いつもと様子が違う部下を把握したときは、速やかに事業場内産業保健スタッフ又は人事部門に相談する。 2. 会社は、管理監督者に対し、部下からの相談対応方法に関する研修を実施する。
第7条(ストレスチェックとの関係) 1. 会社は、労働安全衛生法第66条の10に基づき、常時使用する労働者に対し1年以内ごとに1回、心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を実施する。 2. 高ストレス者と判定され、面接指導を申し出た従業員については、医師による面接指導を実施し、その結果に基づき就業上の措置を検討する。
第8条(相談窓口) 1. 会社は、事業場内産業保健スタッフ及び人事部門内に相談窓口を設置するほか、事業場外資源として【契約先の外部相談機関等】を利用できる体制を整備する。 2. 相談内容及び相談したことを理由として、相談者が不利益な取扱いを受けることはない。
第9条(休業の申出) メンタルヘルス不調により就労が困難と認められる従業員は、就業規則第【 】条に定める私傷病休職制度に基づき休業を申し出ることができる。
第10条(職場復帰支援プログラム) 1. 会社は、休業中の従業員の職場復帰を支援するため、主治医の診断、産業医面談及び試し出勤等の段階を経る職場復帰支援プログラムを実施する。 2. 試し出勤の期間、内容及び処遇は、個別に会社と本人が協議の上定める。
第11条(復職の判定) 1. 復職に当たっては、主治医の診断書に加え、産業医の意見を踏まえて会社が就業の可否を判定する。 2. 会社は、復職後【 】か月間、業務量の調整その他必要な配慮を行う。
第12条(健康情報の管理) 会社は、ストレスチェックの結果、面接指導の記録その他の健康情報を、労働安全衛生法及び個人情報の保護に関する法律に従い、本人の同意なく人事考課等の目的に利用しない。
第13条(改廃) 本規程の改廃は、就業規則の変更手続に準じて行う。
第14条(附則) 本規程は【西暦年】年【 】月【 】日から施行する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 予防重視型向け(不調の未然防止に重点を置く企業)
A-1 第5条の修正例 「会社は、全従業員を対象に、セルフケア研修を年2回実施するほか、ストレスチェックの集団分析結果を踏まえ、高ストレス部署に対する重点的な職場環境改善措置を講じる。」 一言解説: 予防重視型では個人向け教育に加え、集団分析結果を職場環境の改善に直接反映させる仕組みを条文に組み込むと実効性が高まる。
A-2 第6条の修正例 「管理監督者は、部下との定期面談を月1回以上実施し、業務量及び心身の状態を確認するとともに、確認結果を人事部門に報告する。」 一言解説: 予防を重視する企業では、変化への気付きを待つだけでなく、定期面談を制度化して早期発見の機会を積極的に設けることが有効である。
B節: 職場復帰支援重視型向け(休業からの復帰支援に重点を置く企業)
B-1 第10条の修正例 「試し出勤は、原則として【2週間】から【1か月】の期間で実施し、出勤時間・業務内容は産業医の意見を踏まえ段階的に通常勤務に近づける。試し出勤中の賃金は【 】とする。」 一言解説: 復帰支援重視型では試し出勤の期間・処遇を具体的に定めておくことで、従業員・会社双方の予測可能性が高まり、復職準備が円滑になる。
B-2 第11条の修正例 「復職後6か月間は、産業医との月1回の面談を必須とし、就業上の配慮の要否を継続的に見直す。再発の兆候が認められる場合、会社は業務の一部制限等の措置を講じることができる。」 一言解説: 復帰後の再発防止までを制度に組み込むことで、復職を一時的な対応で終わらせず、継続的なフォローアップ体制として機能させられる。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本規程を導入すべき場面は、ストレスチェック制度の実施義務を負う常時50人以上の労働者を使用する事業場はもちろん、メンタルヘルス不調による休業・退職が発生しており、休業から復職までの手順が場当たり的になっている企業である。一方で、従業員数が極めて少なく、産業医の選任義務もなく事業場内の相談体制を独自に整備することが困難な企業では、本規程を単独で新設するより、都道府県産業保健総合支援センター等の外部資源の利用手順を簡潔に定める方が実態に適合する場合がある。
根拠法令としては、労働安全衛生法第70条の2に基づき公表される「労働者の心の健康の保持増進のための指針」が4つのケアと心の健康づくり計画の考え方の基礎となる。加えて、労働安全衛生法第66条の10はストレスチェックの実施及び高ストレス者に対する医師の面接指導を事業者に義務付けており、第7条はこれに対応する。さらに、労働契約法第5条の安全配慮義務は、メンタルヘルス不調の予防及び発見後の適切な対応を怠った場合の損害賠償責任の根拠となり得るため、相談窓口の整備(第8条)や職場復帰支援プログラム(第10条)を規程上明確にしておくことが望ましい。
実務でよくある失敗の一つ目は、ストレスチェックを実施するのみで、その結果を組織的な職場環境改善に活用せず、個人への通知で終わらせてしまうことである。第4条・第7条のように、集団分析結果を心の健康づくり計画の見直しに反映させる仕組みを設けることで、この失敗を防げる。
二つ目の失敗は、休業から復職までの判断基準が曖昧なまま主治医の診断書のみで復職を許可し、結果として体調が回復しきらないまま就労させてしまい、早期に再休業に至ることである。第11条のように産業医の意見を踏まえた判定プロセスを明記することで、この種のリスクを軽減できる。
三つ目の失敗は、相談窓口を形式的に設置するのみで、相談したことによる不利益取扱いの禁止を明記せず、従業員が利用をためらう結果、不調の発見が遅れることである。第8条のように不利益取扱いの禁止を明記し、相談経路を複数用意することが有効である。
制度設計に当たっては産業医・保健師等の専門職の関与状況によって適切な体制が異なるため、個別事案は専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 心の健康づくり計画の策定・見直し手続を定めたか
- [ ] 4つのケア(セルフケア・ラインケア・産業保健スタッフ・事業場外資源)の役割分担を明記したか
- [ ] ストレスチェック(労働安全衛生法第66条の10)の実施方法を定めたか
- [ ] 高ストレス者に対する医師の面接指導の実施手順を定めたか
- [ ] 相談窓口の設置場所(社内・社外)を明記したか
- [ ] 相談による不利益取扱いの禁止を明記したか
- [ ] 職場復帰支援プログラム(試し出勤等)の内容を具体的に定めたか
- [ ] 復職判定における産業医の関与を明記したか
- [ ] 復職後の継続的なフォローアップ方法を定めたか
- [ ] 健康情報の管理方法及び目的外利用の禁止を定めたか