任意後見の発効前に定期的な訪問や連絡で本人の状況を確認する書式。任意後見契約に関する法律の移行型運用を支え、委任の範囲を明確化します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
見守り契約書
第1部: 書式本文
本人〇〇〇〇(以下「甲」という。)と見守り受任者〇〇〇〇(以下「乙」という。)は、甲の生活状況の把握及び将来の支援体制の準備のため、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(契約の趣旨) 甲は、乙に対し、甲の生活状況、健康状態その他の見守りに関する事務(以下「本件事務」という。)を委任し、乙はこれを受任する。本契約は、民法第643条の委任契約として締結する。
第2条(見守りの方法) 乙は、次の方法により甲の状況を確認する。 1. 【頻度(例:月1回)】の電話又は訪問による安否確認 2. 甲の健康状態に関する情報の甲又は関係者からの聴取 3. 甲の生活環境(住居、近隣関係等)の確認
第3条(異常時の対応) 乙は、甲の安否確認ができない場合、又は甲の心身の状態に急激な変化が見られる場合、甲があらかじめ指定する緊急連絡先(【氏名・続柄】)に連絡するとともに、必要に応じて医療機関への連絡その他の措置を講じる。
第4条(任意後見契約との関係) 甲及び乙は、【別途締結する任意後見契約公正証書の日付】に係る任意後見契約を締結しており、乙が甲の判断能力の低下を認めた場合、乙は速やかに家庭裁判所に対する任意後見監督人選任の申立てを検討し、甲又はその親族と協議する。
第5条(財産管理事務との関係) 本契約は、甲の財産の管理又は処分に関する代理権を伴わない。財産管理を委任する場合は、別途財産管理等委任契約を締結する。
第6条(報酬) 甲は、乙に対し、本件事務の報酬として月額金【報酬額】円を、毎月【支払期日】までに支払う。
第7条(報告) 乙は、甲又は甲があらかじめ指定する者に対し、【頻度】ごとに見守りの実施状況を報告する。
第8条(契約期間) 本契約の有効期間は、契約締結日から【期間・任意後見契約の効力発生時まで等】とする。
第9条(解除) 甲又は乙は、相手方に対する【予告期間】の予告をもって、本契約を解除することができる。
【契約日】
甲: 【住所・氏名】 印 乙: 【住所・氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 本人(高齢者)向けの修正
A-1. プライバシーへの配慮の明記
追加条文例:「乙は、本件事務の実施にあたり、甲の私生活上の秘密を尊重し、必要最小限の範囲で情報を取得するものとする。」 一言解説: 見守りの名目で過度に生活に立ち入られることへの懸念に配慮し、本人側がプライバシー保護の姿勢を明記する修正である。
A-2. 緊急連絡先の複数指定
修正後:「甲は、緊急連絡先として第一順位を【氏名】、第二順位を【氏名】と指定し、乙は第一順位の者と連絡が取れない場合、速やかに第二順位の者に連絡する。」 一言解説: 緊急連絡先が単一だと連絡が取れない場合に対応が遅れるため、本人側は複数の連絡先を指定し確実性を高める修正を行う。
B. 見守り受任者(専門職・親族)向けの修正
B-1. 訪問拒否時の対応方針
追加条文例:「甲が正当な理由なく複数回にわたり訪問又は連絡に応じない場合、乙は緊急連絡先に状況を報告し、対応方針について協議する。乙はこれにより本件事務の懈怠を問われない。」 一言解説: 本人の協力が得られない場合の受任者の責任範囲を限定するため、受任者側は訪問拒否時の対応方針と免責を明記する修正を行う。
B-2. 専門職受任者の資格明示と報酬改定
追加条文例:「乙は【資格(弁護士・司法書士・社会福祉士等)】の資格を有する専門職として本件事務を受任する。本件事務の内容が大幅に変更された場合、乙は甲に対し報酬の改定を申し入れることができる。」 一言解説: 専門職が受任する場合、資格に基づく専門性を明示しつつ、事務内容の変化に応じた報酬改定の余地を確保する修正である。
B-3. 任意後見受任者との情報共有義務
追加条文例:「乙は、甲の任意後見受任者が乙と異なる者である場合、当該任意後見受任者に対し、【頻度】ごとに見守りの実施状況を共有する。」 一言解説: 見守り受任者と任意後見受任者が別人である場合の連携不足を防ぐため、受任者側があらかじめ情報共有の仕組みを構築する修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、任意後見契約を締結した本人について、契約の効力が発生するまでの間(判断能力が低下する前)、生活状況を定期的に確認し、将来の後見開始のタイミングを適切に見極める場面で用いる。いわゆる「移行型」の任意後見契約の運用において、財産管理等委任契約と組み合わせて利用されることが多い。既に判断能力が低下し任意後見監督人が選任されている場合には、見守り契約ではなく任意後見契約に基づく事務として処理すべきであり、本書式は使用場面が異なる。単身高齢者の孤独死対策としての見守りサービス契約(民間事業者によるもの)とも近接するが、本書式は法律専門職や親族による契約類型を想定している。
根拠法令 見守り契約は民法上の典型契約ではなく、民法第643条以下に定める委任契約(準委任契約、同法第656条)の一類型として構成される。見守り契約自体を直接規律する特別法は存在しないが、任意後見契約に関する法律が定める任意後見制度の実効性を高めるための運用上の工夫として、日本公証人連合会や家庭裁判所の実務解説等において「移行型」の一部として位置付けられている。移行型とは、判断能力が低下する前は見守り契約及び財産管理等委任契約により対応し、判断能力低下後は任意後見契約に移行するという、切れ目のない支援を実現する契約設計の考え方である。委任契約であるため、受任者は善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務(民法第644条)を負う。
実務でよくある失敗と対策 第一に、見守り契約を締結したにもかかわらず本人の判断能力低下の兆候を見逃し、任意後見監督人選任の申立てが遅れる失敗がある。第4条のように任意後見契約との連携を明記し、判断能力低下を認めた場合の対応手順を定めることが対策となる。第二に、見守り契約に財産管理の権限が含まれると誤解し、実際に必要な場面(急な出費への対応等)で代理権がなく対応できない失敗がある。第5条のように財産管理事務は別契約による旨を明記することが対策となる。第三に、本人が訪問や連絡を拒否する時期が続いても受任者が有効な対応を取れず、見守りが実質的に機能しなくなる失敗がある。B-1のように訪問拒否時の対応方針と受任者の免責を明記することが対策となる。
見守りの頻度や方法の適切性は本人の心身の状況により異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。また、見守り契約の受任者と任意後見受任者が異なる者である場合には、両者の間で情報共有の方法をあらかじめ取り決めておかないと、判断能力低下の兆候を把握してから任意後見監督人選任の申立てまでに時間を要し、本人保護に空白が生じるおそれがある点にも注意が必要である。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 見守りの方法(訪問・電話等)及び頻度を具体的に定めたか
- [ ] 緊急連絡先を複数指定し優先順位を定めたか
- [ ] 任意後見契約との連携(判断能力低下時の対応手順)を明記したか
- [ ] 財産管理事務が本契約の対象外であることを明確にしたか
- [ ] 報酬額及び支払方法を定めたか
- [ ] 報告の頻度及び報告先を確認したか
- [ ] 契約期間及び終了事由(任意後見契約への移行時等)を定めたか
- [ ] 本人が訪問・連絡を拒否した場合の対応方針を検討したか
- [ ] プライバシーへの配慮に関する条項を設けたか
- [ ] 解除の予告期間及び手続を確認したか