目標管理で評価を行う企業向け。目標設定から中間面談・評価反映までの流れを定め、労働契約法第3条の信義則に基づく公正な評価運用を担保します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
目標管理制度(MBO)運用規程
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本規程は、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)が実施する目標管理制度(Management by Objectives、以下「MBO」という。)について、目標設定から中間面談、評価及び処遇への反映に至る運用の手続を定め、従業員の主体的な業務遂行と公正な評価の実現を図ることを目的とする。
第2条(定義) 本規程において「MBO」とは、従業員が上司との面談を通じて一定期間における個人の業務目標を設定し、期中の進捗確認を経て、期末に達成度を評価する一連の人事管理の仕組みをいう。
第3条(適用対象者) 本規程は、就業規則第【 】条に定める正社員に適用する。ただし、試用期間中の者については、簡略化した手続によることができる。
第4条(評価期間) MBOの評価期間は、【4月1日から9月30日まで及び10月1日から3月31日まで】の半期を1期とする。
第5条(目標設定) 1. 従業員は、各評価期間の開始後【2】週間以内に、業務目標、達成基準及びウェイトを記載した目標設定シートを作成し、上司との面談を経て確定する。 2. 目標の内容は、会社及び所属部門の方針との整合性を有し、かつ達成度を客観的に測定できるものでなければならない。 3. 目標の数は、原則として【3】件以上【5】件以内とし、各目標のウェイトの合計が100パーセントとなるよう設定する。
第6条(目標の難易度) 目標設定に当たっては、上司と従業員が協議のうえ、達成の困難度に応じた区分(挑戦目標・標準目標等)を目標設定シートに明記し、難易度を評価の加点・減点要素として考慮する。
第7条(中間面談) 1. 上司は、評価期間の中間時点において、従業員と面談を行い、目標の進捗状況を確認する。 2. 中間面談の結果、事業環境の変化その他やむを得ない事情により当初設定した目標の達成が困難又は不適当となった場合は、双方の合意により目標の修正を行うことができる。 3. 目標の修正を行った場合は、修正後の内容を目標設定シートに記録する。
第8条(自己評価) 従業員は、評価期間終了後【 】日以内に、各目標の達成状況について自己評価を記入し、上司に提出する。
第9条(上司評価とすり合わせ) 1. 上司は、従業員の自己評価及び業務遂行の実態を踏まえ、目標ごとの達成度評価を行う。 2. 上司は、評価結果を従業員に開示し、評価の根拠を説明するフィードバック面談を実施する。 3. 評価結果について従業員と上司の見解に相違がある場合は、双方が意見を述べたうえで、最終的な評価は上司及び上位者による評価会議において決定する。
第10条(評価の調整) 複数の評価者間の評価基準のばらつきを是正するため、会社は評価会議において部門横断的な評価分布の調整(評価者間調整)を行うことができる。
第11条(賞与・昇給への反映) 1. MBOの評価結果は、賃金規程第【 】条に定める賞与の算定基礎及び昇給の査定要素として反映する。 2. 会社は、業績目標の達成度に加え、目標達成の過程における職務遂行状況(プロセス評価)を評価要素に含めることができる。
第12条(異議申立て) 評価結果に不服がある従業員は、フィードバック面談後【 】日以内に、人事部門に対して再検討を申し立てることができる。
第13条(教育訓練) 会社は、目標設定及び評価の面談を行う上司に対し、評価者研修を実施し、評価基準の統一及び評価スキルの向上を図る。
第14条(記録の管理) 会社は、目標設定シート、評価結果及び面談記録を、就業規則に定める記録保存期間に従い保存する。
第15条(改廃) 本規程の改廃は、就業規則の変更手続に準じて行う。
第16条(附則) 本規程は【西暦年】年【 】月【 】日から施行する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 賞与連動型向け(評価結果を賞与額に直接反映する企業)
A-1 第11条第1項の修正例 「MBOの総合評価点(S・A・B・C・Dの5段階)は、賞与規程第【 】条に定める評価係数表に従い、標準評価(B)を基準【1.0】として、S評価【1.4】からD評価【0.6】までの範囲で賞与額に反映する。」 一言解説: 賞与連動型では評価と金額の対応関係を規程上の係数表として明示しておくと、支給額決定過程の恣意性を排除しやすい。
A-2 第9条第3項の修正例 「評価結果について従業員と上司の見解に相違があり、かつ賞与額に直結する評価区分の変動が生じ得る場合は、当該従業員の直属上司以外の評価会議メンバー1名以上を交えて再評価を行う。」 一言解説: 金銭的処遇に直結する評価であるほど紛争化しやすいため、賞与連動型では単独評価者の判断のみで確定させない二重チェックの仕組みを設けておくとよい。
B節: 育成重視型向け(評価より成長支援に重点を置く企業)
B-1 第7条第1項の修正例 「上司は、評価期間中【2】回以上、進捗確認を目的とした1on1面談を実施し、目標達成に向けた課題の洗い出し及び支援策の検討を行う。中間面談は評価の確定を目的とせず、育成のための対話として位置づける。」 一言解説: 育成重視型では中間面談の回数を増やし評価目的と切り離すことで、従業員が率直に課題を共有しやすい運用になる。
B-2 第11条第2項の修正例 「評価要素のうち、目標達成度(成果評価)とプロセス評価(能力開発への取組み、行動変容等)のウェイトは、それぞれ【 】対【 】とし、プロセス評価のウェイトを成果評価と同等以上に設定する。」 一言解説: 育成重視型では成果のみに偏らない評価配分とすることで、短期的な数値目標の達成に固執させず中長期的な能力開発を促す設計にできる。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本規程を導入すべき場面は、従業員の業績評価を賞与や昇給に反映させたいが、その評価プロセスが上司の主観に大きく依存しており客観性を確保したい企業、あるいは既にMBOを実施しているものの目標設定から評価反映までの手続が規程化されておらず、評価者によって運用にばらつきが生じている企業である。逆に、業務内容が定型的で個人ごとの目標設定になじまない職種が中心の企業や、評価者となる管理職の層が薄く面談や評価会議の実施体制を確保できない企業では、MBOを形だけ導入してもかえって形骸化し、簡易な考課表による評価の方が実態に即する場合がある。
根拠法令として中心となるのは、労働契約法第3条第1項に定める信義誠実の原則であり、使用者は労働契約に基づく義務を信義に従い誠実に履行しなければならず、評価制度の運用においても、恣意的な評価により賃金や賞与を不当に減額することは同条の趣旨に反すると解される余地がある。評価結果が賞与や昇給という賃金に関わる処遇に反映される以上、労働基準法第89条第2号に定める賃金の決定、計算及び支払の方法に関する事項として、評価の反映方法をできる限り規程上明確にしておくことが望ましい。また、評価に関する個人情報の取扱いについては、個人情報の保護に関する法律に基づき、目的外利用の禁止及び安全管理措置を講じる必要がある。評価制度が公正に運用されていることを担保する手続として、第9条・第10条のような評価者間調整や、第12条のような異議申立ての機会を設けることが、信義則違反を問われるリスクの低減に資する。
実務でよくある失敗の一つ目は、目標設定の段階で会社側が一方的に目標を提示し、従業員との協議を経ないまま確定させ、達成困難な目標を課されたとして不満が蓄積することである。第5条のように上司との面談を経て確定させる手続を明記し、実際に協議の場を設けることが対策となる。
二つ目の失敗は、評価者ごとに評価基準の運用にばらつきが生じ、同程度の成果を挙げた従業員間で評価結果に大きな差が生じることである。第10条のように評価者間調整の仕組みを規程上明記し、評価会議で分布を確認する運用とすることが対策となる。
三つ目の失敗は、期中に事業環境が大きく変化したにもかかわらず目標を修正する手続がなく、当初目標の未達成のみをもって低評価とし、従業員の納得感を損なうことである。第7条第2項のように目標修正の手続を設けておくことが対策となる。評価結果と賞与・昇給の連動方法や評価要素の配分は企業の人事戦略により適切な設計が異なるため、個別事案は専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 評価期間及び目標設定の時期・期限を具体的に定めたか
- [ ] 目標の件数・ウェイト・達成基準の設定ルールを明記したか
- [ ] 目標設定を上司との面談を経て確定する手続としたか
- [ ] 中間面談の実施時期と目標修正の手続を定めたか
- [ ] 自己評価と上司評価のすり合わせ手続を明記したか
- [ ] 評価者間のばらつきを是正する調整の仕組みを設けたか
- [ ] 評価結果の賞与・昇給への反映方法(算定基礎・ウェイト等)を明記したか
- [ ] 成果評価とプロセス評価の配分を制度趣旨に応じて定めたか
- [ ] 評価結果に対する異議申立て手続を定めたか
- [ ] 評価者研修等、評価スキル向上のための取組みを定めたか
- [ ] 評価記録・面談記録の保存方法と個人情報の取扱いを定めたか