無期転換の申込みを受けた会社が承諾みなしの効果と転換後の労働条件を伝える場面の書式。労働契約法第18条に基づき転換日や適用される規程を明示する。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
無期転換申込受理通知書
第1部: 書式本文
無期転換申込受理通知書
【通知年月日: 西暦〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
【従業員氏名: 〇〇〇〇】殿
【会社名: 株式会社〇〇】 【代表者役職・氏名: 代表取締役〇〇〇〇】 印
貴殿より【西暦〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】付で提出された無期転換申込書を受領いたしましたので、下記のとおり通知いたします。
記
- 申込受理日: 【西暦〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】(貴殿の申込書が当社に到達した日)
- 転換前の有期労働契約の満了日: 【西暦〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
- 無期労働契約への転換日: 【西暦〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】(転換前契約の満了日の翌日)
- 労働契約法第18条第1項の規定により、貴殿の申込みが当社に到達した時点で、当社の承諾の意思表示を要することなく、上記3記載の日から期間の定めのない労働契約が成立していることを確認いたします。
- 転換後に適用される就業規則・諸規程: 【就業規則第〇条、〇〇規程等の名称を記載】
- 転換後の労働条件: 【従前の有期労働契約と同一の内容とする・別紙労働条件通知書のとおり変更する】のいずれかを記載
- 転換後の契約における定年に関する定め: 【就業規則第〇条(定年〇〇歳)を適用する】
- 無期労働契約であることに伴い、契約期間の更新に関する定めは適用されない旨
- 本通知に関する問い合わせ窓口: 【部署名・担当者名・連絡先】
以上、貴殿の無期転換申込みを受理したことを通知するとともに、転換後の労働条件を記載した労働条件通知書を別途交付いたします。ご不明な点がございましたら、上記9記載の窓口までお問い合わせください。
【会社使用欄】受理担当者: 【 】 就業規則との整合確認: 【済・未済】 別段の定めの適用: 【無・有(根拠規程: 【 】)】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 労働条件を据え置く場合
A-1 第6項の修正例 「転換後の労働条件は、賃金、労働時間、職務内容、勤務地その他の労働条件のいずれについても、転換前の有期労働契約の内容から変更しない。契約期間の定めのみが撤廃されるものとする。」 一言解説: 労働契約法第18条は契約期間以外の労働条件を当然に変更するものではないため、別段の定めを置かない場合は据置きである旨を明記し、従業員の誤解を防ぐ。
A-2 第7項の修正例 「転換後の契約には、就業規則第〇条に定める定年制がそのまま適用され、満〇〇歳に達した年度末をもって定年退職とする。」 一言解説: 無期労働契約に転換したことにより定年の定めがない状態が生じないよう、適用される定年規程を明示しておく必要がある。
B節: 無期転換後の条件を変更する場合
B-1 第6項の修正例 「転換後の労働条件については、就業規則第〇条及び無期転換社員就業規則第〇条に定める『別段の定め』に基づき、別紙労働条件通知書に記載のとおり、職務内容を〇〇に、賃金体系を〇〇に変更する。」 一言解説: 労働条件を従前と異なる内容に変更する場合は、転換前の申込み時点で既に就業規則等に「別段の定め」として定められていることが前提であり、通知時に初めて新設した基準を遡って適用することはできない。
B-2 経過措置に関する追加例 「本条による労働条件の変更については、転換日から【〇】か月間、経過措置として従前の賃金水準との差額調整を行う。」 一言解説: 労働条件を切り下げる内容の変更を行う場合、急激な変更による不利益を緩和する経過措置を設けることが、後の紛争予防及び労働契約法第10条の合理性判断の観点から有用である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式を使用すべき場面は、従業員から有効な無期転換の申込みを受け、その申込みへの対応として転換日及び転換後の労働条件を書面で明確にしたい場面である。ここで重要なのは、労働契約法第18条第1項に基づく無期労働契約への転換は、使用者の承諾の意思表示を要件とせず、申込みが到達した時点で法律上当然に成立するという点である。したがって、本通知書は転換を「承諾」する行為ではなく、既に成立した無期労働契約の内容を確認し、従業員に周知するための書面にすぎない。本書式を使用してはならない場面は、既に成立している無期転換の効力を通知の留保や条件付けによって否定しようとする場面、及び転換前の申込み時点で就業規則等に定めのなかった不利益な労働条件を、通知書の交付をもって新たに適用しようとする場面である。
根拠法令は、労働契約法第18条第1項本文(申込みによる無期転換の効力発生)、同項ただし書(別段の定めがある場合の労働条件)、労働契約法第9条及び第10条(就業規則の不利益変更の要件)、労働基準法第15条(労働条件明示義務)である。無期転換後の従業員は、パートタイム・有期雇用労働法の適用対象である「有期雇用労働者」ではなくなるため、同法に基づく均衡・均等待遇の規律の適用関係が変わる点にも留意が必要である。また、労働契約法第18条第1項ただし書にいう「別段の定め」とは、就業規則、労働協約又は個別の合意により、転換後の労働条件を転換前と異なる内容とする旨を、無期転換の申込みがされるより前に定めておくものを指すと解されている。通知書の作成段階になって初めて条件変更の基準を策定するのでは、この「別段の定め」の要件を満たさないおそれがあるため、無期転換制度を導入する企業は、転換後の労働条件に関する規程をあらかじめ整備しておくことが望ましい。
実務でよくある失敗の一つ目は、通知書を交付しなければ無期転換が成立しないと誤解し、対応を先送りした結果、従業員との間で転換日や労働条件の認識にずれが生じ紛争化することである。無期転換は申込みの到達により当然に成立するため、通知書の交付の有無にかかわらず効力は発生している。二つ目は、転換前の就業規則等に「別段の定め」が存在しないにもかかわらず、通知書の交付段階で一方的に賃金や職務内容を切り下げる内容を記載してしまうことである。このような変更は労働契約法第9条及び第10条の不利益変更法理に抵触するおそれがある。三つ目は、有期契約時には適用のなかった定年に関する定めを転換後の契約に反映し忘れ、無期労働契約となった従業員に定年のない状態が生じてしまうことである。第7項のように定年規程の適用関係を明記しておくことが望ましい。四つ目は、転換後もパートタイム・有期雇用労働法の均衡待遇規律が及ぶ有期雇用労働者のままであると誤認し、正社員との待遇差是正の検討を怠ってしまうことである。無期転換後は同法上の「有期雇用労働者」には該当しなくなるため、待遇の位置付けを就業規則上で整理し直す必要がある。個別の労働条件の変更の適法性やその根拠となる規程整備の要否については、専門家に確認した上で通知書の内容を確定することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 従業員からの申込みが労働契約法第18条の要件(通算5年超・有効な申込み)を満たしていることを確認したか
- [ ] 申込書の到達日と転換前契約の満了日から、転換日を正確に算定したか
- [ ] 転換後の労働条件を「据置き」とするか「別段の定めに基づく変更」とするかを整理したか
- [ ] 労働条件を変更する場合、その根拠となる就業規則等の規定が申込み以前から存在していたか確認したか
- [ ] 転換後に適用される定年に関する規程を明示したか
- [ ] 転換後の労働条件通知書(労働基準法第15条に基づく書面)を別途準備したか
- [ ] 本通知が「承諾」ではなく既に成立した契約内容の確認である旨を理解した記載になっているか
- [ ] 問い合わせ窓口を明記し、従業員からの質問に対応できる体制を整えたか
- [ ] 社内(人事部・所属長等)での回付・保管ルールを定めたか
- [ ] 交付日及び受領確認(受領印・受領日)を記録する運用にしたか