事実婚のパートナーが生活費分担や解消時の清算を定める書式。民法第752条の扶助義務を準用する判例法理を踏まえ、医療同意等も定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
内縁関係に関する合意書
第1部: 書式本文
パートナー〇〇〇〇(以下「甲」という。)とパートナー〇〇〇〇(以下「乙」という。)は、婚姻の届出をしないまま夫婦としての実質的な共同生活(以下「内縁関係」という。)を営むにあたり、次のとおり合意(以下「本合意」という。)する。
第1条(内縁関係の確認) 甲及び乙は、令和【 】年【 】月【 】日から同居を開始し、夫婦同然の生活を営んでいることを相互に確認する。
第2条(生活費の分担) 甲及び乙は、共同生活に要する費用を、それぞれの収入に応じた割合で分担する。分担方法の詳細は別紙のとおりとする。
第3条(扶助義務) 甲及び乙は、民法第752条の夫婦間の協力扶助義務が判例上内縁関係にも準用されることを踏まえ、相互に協力し扶助する。
第4条(財産の帰属) 甲乙が同居前から有する財産は、それぞれの特有財産とする。同居後に甲乙が共同で取得した財産は、取得資金の拠出割合に応じた共有とする。
第5条(医療同意) 甲又は乙が疾病、傷害等により医療機関を受診し、本人の意思確認ができない状態にある場合、他方は、医療機関に対し、家族に準ずる者として病状説明を受け、また緊急の医療行為について本人に代わり意思を示すことができるものとする。医療機関がこれを認めるかは各医療機関の判断による。
第6条(内縁関係の解消) 甲又は乙は、他方に対する通知により内縁関係を解消することができる。正当な理由のない一方的な解消により他方に損害が生じた場合、判例上の内縁の不当破棄の法理に基づき、解消した当事者は損害賠償責任を負うことがある。
第7条(解消時の財産清算) 内縁関係が解消された場合、甲乙は、共同生活中に形成した財産について、財産分与の趣旨に準じた清算を協議する。
第8条(死亡時の取扱い) 甲又は乙の一方が死亡した場合、内縁関係にある他方は、法律上の相続人とはならない。甲及び乙は、この点を踏まえ、遺言書の作成又は死因贈与契約の締結により、他方への財産の承継について別途対応することを検討する。
第9条(緊急連絡先の指定) 甲及び乙は、相互に緊急連絡先として相手方を指定し、医療機関、勤務先その他の関係先に対しその旨を申し出ることができる。
【合意日】
甲: 【住所・氏名】 印 乙: 【住所・氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. パートナー(収入の少ない側)向けの修正
A-1. 解消時の財産清算における非金銭的貢献の評価
追加条文例:「解消時の財産清算にあたっては、家事、育児その他の非金銭的な貢献についても、金銭的貢献と同等に考慮するものとする。」 一言解説: 内縁関係の解消時の財産清算は法律婚の財産分与の法理に準じて扱われることが多いが、明文の規定がないため、非金銭的貢献の評価をあらかじめ合意しておくことで解消時の紛争を予防する修正である。
A-2. 遺言書作成の相互協力
追加条文例:「甲及び乙は、相手方に財産を承継させる意思がある場合、遅くとも【時期】までに、それぞれ公正証書遺言を作成する。」 一言解説: 内縁の配偶者には相続権がないため、財産を承継させたい場合は遺言が不可欠であり、その作成を相互に促す修正である。
B. パートナー(収入の多い側)向けの修正
B-1. 特有財産の範囲の明確化
追加条文例:「甲が同居前から保有していた【財産の内容】及び甲の名義で取得した退職金・年金給付については、甲の特有財産であることを乙は確認する。」 一言解説: 内縁関係の解消時に財産分与に準じた清算が行われる場合に備え、特有財産の範囲をあらかじめ明確化しておく修正である。
B-2. 生活費分担の上限設定
修正後:「甲の生活費分担額は、甲の手取り月収の【割合】%を上限とする。」 一言解説: 収入変動リスクに備え、生活費分担額に上限を設けることで、収入の多い側が過度な負担を負い続けることを防ぐ修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、婚姻の届出をしないまま夫婦同然の共同生活を営むパートナー同士が、生活費の分担、医療同意、財産関係、関係解消時の清算等について取り決める場面で用いる。同性パートナーの場合にも、内縁関係に準じた保護が判例・自治体のパートナーシップ制度等により一定程度図られる場合があり、本書式を応用することができるが、パートナーシップ制度の利用可否や効果は自治体により異なる点に留意する。婚姻の届出が可能であるにもかかわらずあえて内縁関係にとどまる場合、税制上の配偶者控除や相続における配偶者の法定相続分等、法律婚に認められる保護は原則として及ばない点を十分に理解した上で利用する必要がある。
根拠法令 内縁関係については、民法上「内縁」という語を用いた明文規定はないが、判例は内縁を「婚姻に準ずる関係」(準婚関係)として保護する立場を確立しており、夫婦の同居・協力・扶助義務を定める民法第752条や、婚姻費用分担義務を定める民法第760条の趣旨が類推適用されるとされている。また、内縁関係が正当な理由なく一方的に破棄された場合、破棄した当事者に対し不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償責任を認めた判例がある(最判昭和33年4月11日等)。他方、内縁の配偶者には法定相続分(民法第900条)が認められておらず、相続人ではないため、財産を承継させるには遺言(民法第960条以下)や死因贈与契約(民法第554条)によることが必要である。労働者災害補償保険法や厚生年金保険法など一部の社会保障法制では、内縁配偶者も「配偶者」に準じた扱いを受ける場合がある点も実務上重要である。
実務でよくある失敗と対策 第一に、内縁関係にあることを前提に将来の相続を期待していたにもかかわらず、遺言書を作成しないまま一方が死亡し、他方が何らの財産も承継できない失敗がある。第8条及びA-2のように遺言書作成を促す条項を設けることが対策となる。第二に、医療機関において内縁の配偶者が家族として扱われず、病状説明や緊急時の対応を受けられない失敗がある。第5条のように医療同意に関する取り決めを明記し、あわせて任意後見契約や委任状の準備を検討することが対策となる。第三に、内縁関係の解消時に財産清算の基準が何もなく、感情的な対立により清算協議が長期化する失敗がある。第7条及びA-1のように清算の基本方針をあらかじめ合意しておくことが対策となる。
内縁関係の成立要件や解消時の清算基準は個別の同居実態や地域のパートナーシップ制度の有無により異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 内縁関係の開始時期及び同居の実態を確認したか
- [ ] 生活費の分担方法及び上限を定めたか
- [ ] 特有財産と共有財産の範囲を明確にしたか
- [ ] 医療同意に関する取り決め及び医療機関での取扱いを確認したか
- [ ] 内縁関係解消時の財産清算の基本方針を定めたか
- [ ] 相手方への財産承継を希望する場合、遺言書作成の予定を確認したか
- [ ] パートナーシップ制度の利用可否(自治体による)を確認したか
- [ ] 緊急連絡先としての相互指定を関係先に周知する方法を検討したか
- [ ] 内縁関係の不当破棄に関する損害賠償リスクを理解しているか
- [ ] 税制・社会保障上、法律婚と異なる取扱いを受ける点を理解しているか