消化器内視鏡や治療的内視鏡を実施する前に受検者の同意を得る書式。医師法の説明義務に基づき、前処置と鎮静剤の使用、穿孔等の偶発症、検査中止の条件を明記する。

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内視鏡検査同意書

第1部: 書式本文

医療法人〇〇会〇〇クリニック(以下「甲」という。)は、受検者〇〇〇〇(以下「乙」という。)に対し、内視鏡検査の実施に先立ち、その目的、方法その他必要な事項を説明し、乙は当該説明を理解した上で、下記のとおり検査の実施に同意する。

第1条(検査の目的及び内容) 甲は乙に対し、乙の症状又は健康診断の結果を踏まえ、【上部消化管内視鏡検査・下部消化管内視鏡検査等】(以下「本検査」という。)を実施する目的及び検査の方法について説明する。

第2条(前処置) 甲は乙に対し、本検査の実施に先立ち必要となる前処置(下剤の服用、絶食・絶飲の時間、腸管洗浄剤の服用等)の内容及びその目的を説明し、乙は当該前処置の指示に従うものとする。

第3条(鎮静剤の使用) 甲は乙に対し、本検査に際して鎮静剤を使用するか否かの希望を確認する。鎮静剤を使用する場合、甲は乙に対し、鎮静剤の作用、想定される効果(苦痛の軽減等)及びこれに伴う危険性(呼吸抑制、血圧低下、覚醒遅延等)について別途説明し、乙は当該説明を理解した上で鎮静剤の使用に同意する。

第4条(治療的処置への移行) 甲は、本検査の実施中に生検、ポリープ切除その他の治療的処置(以下「追加処置」という。)の必要性が判明した場合、乙が事前に別紙【追加処置に関する事前確認書】において追加処置の実施に同意しているときは、検査を中断することなく引き続き当該追加処置を実施することができる。乙が事前に同意していない場合、甲は、緊急性が高いと判断される場合を除き、検査終了後に改めて追加処置の要否について乙に説明し、同意を得るものとする。

第5条(偶発症の説明) 甲は乙に対し、本検査に伴い発生し得る偶発症(消化管穿孔、出血、誤嚥性肺炎その他【検査固有の偶発症】)の内容及びその発生頻度について、現時点で得られている医学的知見に基づき説明する。

第6条(検査中の中止基準) 甲は、検査中に乙の全身状態の急変、強い苦痛の訴えその他検査の続行が乙の身体に危険を及ぼすと判断される事態が生じた場合、乙の意向を確認する間もなく検査を中止することができる。

第7条(検査後の観察及び帰宅可否の判断) 甲は、本検査終了後、乙の意識状態、バイタルサイン及び鎮静剤の残存作用の程度を観察し、あらかじめ定める基準に基づき、帰宅の可否を判断する。

第8条(送迎者の確保) 鎮静剤を使用した場合、乙は、検査当日、自ら自動車等を運転して帰宅してはならず、家族その他の付添者による送迎又は公共交通機関以外の帰宅手段を確保するものとする。

第9条(同意の撤回) 乙は、本検査の開始前であればいつでも、本同意を撤回することができる。

第10条(記録の保存) 甲は、本同意書及び検査記録を法令に定める期間保存する。

第11条(協議事項) 本同意書に定めのない事項について疑義が生じたときは、甲乙誠実に協議して解決する。

【説明年月日】〇〇〇〇年〇〇月〇〇日

説明医師: 所属・氏名      印

(乙・同意者)住所    氏名      印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 医療機関(甲)側の修正パターン

A-1. 検査方法(経鼻・経口)の選択に関する説明条項

追加条文例:「甲は乙に対し、上部消化管内視鏡検査の実施方法として経鼻内視鏡及び経口内視鏡のいずれも選択可能である場合には、それぞれの利点及び欠点(咽頭反射の程度、画質、挿入時間等)を説明し、乙の選択を確認する。」 一言解説: 検査方法に複数の選択肢がある施設では、いずれを実施するかによって乙の負担感が異なるため、医療機関側は選択肢の説明を条項として明示しておくことが望ましい。

A-2. 抗血栓薬服用患者の休薬確認条項

追加条文例:「甲は、乙が抗血栓薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を服用している場合、生検又はポリープ切除等の追加処置に伴う出血リスクを踏まえ、検査実施前に休薬の要否及び休薬期間について乙の処方医と連携の上確認するものとする。」 一言解説: 休薬が必要な薬剤を服用したまま追加処置を行うと出血性の偶発症リスクが高まるため、医療機関側は事前確認の手順を条項化しておくことが求められる。

B. 受検者側の修正パターン

B-1. 鎮静剤を希望しない場合の代替対応条項

追加条文例:「乙が鎮静剤の使用を希望しない場合、甲は、鎮静剤を使用しない方法により本検査を実施するものとし、検査中の苦痛の訴えに応じて随時検査の続行可否を乙に確認する。」 一言解説: 鎮静剤の使用には送迎者の確保等の負担が伴うため、受検者側の希望として鎮静剤なしでの実施を選択できることを明記しておくことが有用である。

B-2. 追加処置の範囲を限定する条項

追加条文例:「乙は、第4条の事前同意の範囲を、生検(組織採取)に限定し、ポリープ切除等の治療的処置については、検査終了後に改めて説明を受けた上で同意するものとする。」 一言解説: 追加処置への包括同意に不安がある受検者は、あらかじめ同意の範囲を生検のみに限定する等、段階的な同意取得の方式に修正することができる。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面と使ってはいけない場面の解説 本書式は、消化器内視鏡検査(上部・下部消化管内視鏡)及びこれに付随する生検・ポリープ切除等の治療的処置を実施する場面で用いる。単純なレントゲン撮影や採血のように身体への侵襲が軽微な検査には本書式は不要である。他方、鎮静剤を使用する検査でありながら送迎者の確保等の帰宅時安全確保の説明を省略したまま実施することは避けるべきである。

根拠法令及び関連指針の解説 医師法第23条は、医師が診療をしたときは本人又はその保護者に対し療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない旨を定め、医療法第1条の4第2項は医療の担い手に対し適切な説明を行い医療を受ける者の理解を得るよう努める義務を課している。本書式の各説明条項は、これらの規定に基づく説明義務を具体化したものである。なお、鎮静下内視鏡検査の実施に当たっては、日本消化器内視鏡学会が公表する内視鏡診療における鎮静に関する指針の考え方が実務上参照されることが多く、モニタリング体制や帰宅基準の設定に際して参考とされている。もっとも、同学会の指針は法令ではなく、法的な拘束力を有するものではない点に留意が必要であり、各医療機関の実情に応じた運用体制の整備が求められる。

実務でよくある失敗と対策の解説 第一に、検査そのものへの同意と鎮静剤使用への同意を一体の書面上で区別なく取得し、鎮静に伴うリスク(呼吸抑制、血圧低下等)についての個別の説明が尽くされないまま検査を実施してしまう失敗がある。第3条のように鎮静剤の使用に関する説明及び同意欄を検査本体の同意から独立させることが対策となる。第二に、検査中に生検やポリープ切除等の必要性が判明した際、事前の包括同意がどこまで追加処置に及ぶのか不明確であり、実施後に受検者から「聞いていない処置をされた」との指摘を受ける失敗がある。第4条のように追加処置への同意の有無及び範囲を事前確認書によって明確化することが対策となる。第三に、鎮静剤投与後の受検者が十分に覚醒しないまま単独で帰宅させてしまい、転倒等の事故につながる失敗がある。第7条及び第8条のように、帰宅可否の判断基準及び送迎者確保の要否を条文上定めておくことが対策となる。鎮静の可否や偶発症のリスク評価は受検者の全身状態によって左右されるため、対応に迷う場合は個別に弁護士等の専門家へ確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 検査の目的及び方法(経鼻・経口、上部・下部の別等)を説明したか
  • [ ] 前処置(下剤・絶食等)の内容を説明し指示を伝えたか
  • [ ] 鎮静剤使用の希望を確認し、使用する場合は個別にリスクを説明したか
  • [ ] 生検・ポリープ切除等の追加処置に関する事前同意の範囲を確認したか
  • [ ] 偶発症(穿孔・出血・誤嚥等)の発生率を現時点の知見に基づき説明したか
  • [ ] 検査中の中止基準を明確にしたか
  • [ ] 検査後の帰宅可否判断基準を定めたか
  • [ ] 鎮静剤使用時の送迎者確保を確認したか
  • [ ] 抗血栓薬等服用状況を確認し休薬要否を検討したか
  • [ ] 同意の撤回が可能であることを説明したか