内定者が入社の意思と提出書類・他社選考の状況を会社へ確約する場面の様式。労働契約の成立時期を明確にし、民法第627条を踏まえた辞退の取扱いも記載する。

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採用内定承諾書

第1部: 書式本文

【提出年月日】

【会社名】 【代表者役職・氏名】 殿

【内定者住所】 【内定者氏名】 印

採用内定承諾書

私は、貴社より【20〇〇年〇月〇日】付で通知された採用内定(以下「本内定」という)の内容を確認し、下記の事項を承諾のうえ、入社することを誓約いたします。

第1条(承諾の意思表示) 本内定者は、貴社が提示した労働条件の概要及び採用内定通知書記載の内容を承知のうえ、貴社への入社を承諾する。本承諾書の提出をもって、本内定者と貴社との間に始期付解約権留保付労働契約が成立することを確認する。

第2条(就労開始日) 本内定者は、【20〇〇年〇月〇日】を就労開始日として就労を開始することを約束する。

第3条(提出書類) 本内定者は、貴社が指定する下記書類を【20〇〇年〇月〇日】までに提出する。 (1) 卒業(見込)証明書及び成績証明書(新卒者の場合) (2) 健康診断書 (3) 誓約書・身元保証書 (4) 給与振込口座届、マイナンバー提出書類その他貴社が定める書類

第4条(他社選考状況の申告) 本内定者は、本承諾書提出時点における他社への就職活動・内定の状況について、貴社の求めに応じ誠実に申告するものとする。

第5条(内定辞退の取扱い) 本内定者が就労開始日前に本内定を辞退しようとする場合は、民法第627条第1項の規定を踏まえ、就労開始予定日の【2週間】前までに書面により貴社に申し出るものとする。なお、辞退の申出は本内定者の自由な意思によるものであり、貴社は不当に辞退を妨げないものとする。

第6条(虚偽申告の効果) 本内定者は、選考過程における申告及び本承諾書記載事項に虚偽がある場合、貴社が本内定を取り消すことがあることを承知する。

第7条(提出書類の取扱い) 貴社は、本内定者から提出された書類に含まれる個人情報を、採用手続及び入社後の労務管理の目的の範囲内で利用するものとする。

第8条(連絡事項) 本内定者は、住所・連絡先その他届出事項に変更が生じた場合、速やかに貴社に届け出るものとする。

第9条(入社前研修等への参加) 貴社が就労開始日前に任意の説明会・懇親会・研修等を実施する場合、本内定者はその参加が任意であることを確認する。参加に伴う交通費等の取扱いは別途貴社の定めによる。

第10条(健康状態の申告) 本内定者は、就労開始に支障を来す健康上の重大な事情がある場合、貴社にあらかじめ申告するものとする。

第11条(承諾内容の確認) 本内定者は、貴社から提示された労働条件の概要につき疑義がある場合、本承諾書提出前に貴社担当者に確認したうえで提出するものとする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 内定者記入用

内定者本人が記入・提出する場面では、第4条の他社選考状況の申告について、正直な申告を促すため「申告内容は採否や配属の決定には影響しない」旨を注記に加えることが望ましい。強制的な色彩が強い記載(「他社への就職活動を直ちに中止すること」等、いわゆるオワハラと評価されうる表現)は避け、あくまで任意の情報提供として位置づける。また第5条の辞退手続についても、内定者の心理的負担を軽減するため「辞退にあたり理由の詳細な説明は不要とする」旨を補足することも検討する。内定者が学生である場合は、学業への影響(卒業論文・国家試験受験等)に配慮し、提出書類の期限設定に一定の余裕を持たせることも実務上望ましい。

B節: 会社側(案内文付き)

会社が内定者へ交付する案内文を付す場合は、承諾書の様式に加えて、提出方法(郵送・電子データ・オンライン人事システム等)、提出期限徒過時の取扱い、入社前の懇親会・研修日程の案内を別紙として添付する構成にする。第3条の提出書類一覧は、正社員・契約社員・エリア限定社員等の雇用区分によって必要書類が異なる場合があるため、「雇用区分に応じ下記のうち該当する書類を提出する」との文言を加え、区分ごとにチェックボックス形式で示すと実務上の運用がしやすい。加えて、提出期限を徒過した場合の会社側対応(督促連絡の方法、再提出期限の設定、長期未提出時の内定意思確認)を案内文中に明記しておくと、担当者間での対応のばらつきを防止できる。オンライン提出を採用する場合は、提出システムのアクセス方法や問い合わせ窓口も併せて案内する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、内定通知を受けた候補者が入社の意思を確定的に表明し、必要書類の提出や他社選考の状況を会社に申告する場面で使用する。単に選考結果に対する謝意を伝えるだけの場面や、入社意思が未確定な段階(検討期間中の仮回答)では使用すべきでなく、その場合は「入社について検討中である」旨を明記した別の回答書式を用いるべきである。

法的な観点では、本承諾書の提出時点で労働契約が成立するとされる場合が多く(大日本印刷事件・最高裁昭和54年7月20日判決が示す始期付解約権留保付労働契約の考え方)、承諾書提出後は使用者・労働者双方に一定の契約上の拘束が生じる。もっとも、内定者からの内定辞退(労働契約の解約)については、民法第627条第1項により、期間の定めのない労働契約の場合は解約の申入れから2週間の経過をもって終了するとされており、内定者は原則として自由に辞退できる立場にあることを承諾書上も明確にしておくことが望ましい。会社側が違約金や損害賠償を予定する条項を設けることは、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)に抵触するおそれがあるため、辞退を過度に制限する記載は避ける必要がある。

実務でよくある失敗として、第一に、承諾書に「内定辞退の場合は違約金〇〇円を支払う」等の記載を設け、労働基準法第16条違反として無効と判断されるリスクを負うケースがある。金銭的な制裁ではなく、円滑な引継ぎのための事前連絡を促す規定にとどめることが望ましい。第二に、提出書類の期限管理が曖昧なまま運用し、入社直前になって卒業証明書等の必須書類が未提出であることが判明するケースがある。第3条のように期限を明記し、リマインドの仕組みを別途設けることが有効である。第三に、他社選考状況の申告(第4条)を強制的な色彩で求め、内定者の就職活動の自由を不当に制約していると評価されるリスクもある。申告はあくまで任意かつ参考情報である旨を明記することが望ましい。

また、内定者が就労開始日直前になって辞退を申し出るケースでは、会社側の入社手続・研修計画に影響が生じやすい。第9条のように任意参加の説明会・研修の機会を設け、入社前の段階的なコミュニケーションを通じて意思確認の機会を増やすことで、直前辞退のリスクを軽減する運用上の工夫も有効である。もっとも、こうした接触機会の設定自体が事実上の就労強制と評価されないよう、あくまで任意参加である旨を明記する必要がある。

なお、内定辞退の可否や違約金条項の有効性については個別の事案により判断が異なるため、疑義がある場合は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 内定者の氏名・住所・提出年月日が正しく記載されているか
  • [ ] 就労開始予定日が採用内定通知書の記載と一致しているか
  • [ ] 提出書類の一覧と提出期限が明記されているか
  • [ ] 内定辞退に関する条項が民法第627条の趣旨に沿った内容になっているか
  • [ ] 違約金・損害賠償を予定する条項が含まれていないか(労働基準法第16条抵触の回避)
  • [ ] 他社選考状況の申告が強制的な表現になっていないか
  • [ ] 個人情報の利用目的が明記されているか
  • [ ] 虚偽申告があった場合の取扱いが明記されているか
  • [ ] 雇用区分に応じた提出書類の分岐が反映されているか
  • [ ] 提出方法(郵送・電子データ等)が案内文に明記されているか