選考通過者へ入社日と労働条件の概要を伝えて内定を出す場面で用いる書式。始期付解約権留保付労働契約が成立する点と労働基準法第15条の条件明示を整理する。

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採用内定通知書

第1部: 書式本文

【発行年月日】

【候補者氏名】様

【会社名】 【所在地】 【代表者役職・氏名】 印

採用内定通知書

拝啓 貴殿におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 この度、貴殿の採用選考の結果、下記の条件にて採用内定とすることに決定いたしましたので、労働基準法第15条に基づき労働条件の概要を明示のうえ通知いたします。本通知の内容をご確認のうえ、別途交付する採用内定承諾書をご提出くださいますようお願い申し上げます。

第1条(内定の趣旨) 本通知は、【会社名】(以下「甲」という)が【候補者氏名】(以下「乙」という)に対し、下記の条件による労働契約の締結を内定するものである。本内定通知に対し乙が第5条に定める承諾書を期限内に提出した時点をもって、甲乙間に始期付解約権留保付労働契約が成立するものとする。

第2条(就労開始日) 乙の就労開始予定日は【20〇〇年〇月〇日】とする。ただし、天災その他甲の責に帰すべからざる事由により、就労開始日を変更する場合がある。

第3条(配属・職種) 配属予定部署は【部署名】、従事予定業務は【業務内容】とする。ただし、業務上の都合その他合理的な理由により、配属先・職務内容を変更することがある。

第4条(雇用形態・契約期間) 雇用形態は【正社員・契約社員等】とし、契約期間の定めは【無・有(期間:  )】とする。

第5条(内定承諾書の提出) 乙は本通知受領後【2週間】以内に、別途交付する採用内定承諾書及び甲が指定する必要書類を甲に提出するものとする。期限内に提出がない場合、甲は乙の入社意思がないものとして取り扱うことができる。

第6条(労働条件の概要) 賃金、労働時間、休日等の詳細な労働条件は、別紙「労働条件通知書(兼)労働契約書」のとおりとする。正式な労働条件通知書は就労開始日までに別途書面(電子的方法を含む)により交付する。

第7条(内定取消事由) 乙が次の各号のいずれかに該当する場合、甲は内定を取り消すことができる。 (1) 【20〇〇年〇月】までに卒業できなかった場合、又は卒業要件を満たさないことが判明した場合 (2) 心身の健康状態が著しく悪化し、就労が困難と認められる場合 (3) 提出書類又は選考過程における申告に虚偽の記載・発言があったことが判明した場合 (4) 犯罪行為その他社会通念上、雇用関係の継続を期待し難い事由が生じた場合 (5) その他前各号に準じ、内定の基礎となった事実に重大な変動が生じた場合

第8条(内定期間中の誓約事項) 乙は就労開始日までに、甲の求めに応じて健康診断書、卒業(見込)証明書その他必要書類を提出するものとする。

第9条(内定期間中の連絡) 乙は住所・連絡先等に変更が生じた場合、速やかに甲に届け出るものとする。

第10条(連絡窓口) 本通知に関する問い合わせ先は【部署名・担当者名・連絡先】とする。

敬具

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 新卒採用向け

新卒採用では、卒業予定であることが労働契約の停止条件として機能する点が最大の特徴である。第7条(1)は「【20〇〇年〇月】までに【学校名】【学部学科名】を卒業できなかった場合」と学校名・卒業見込み年月を具体的に記載し、抽象的な「卒業できなかった場合」との記載にとどめない。また就労開始日は入社式・集合研修の日程に合わせて確定的に記載し、「入社前研修(任意参加)を【時期】に実施する予定であり、参加の可否は本人の意思による」旨を第8条に追記することが望ましい。卒業延期・留年が判明した場合の報告義務についても「卒業延期が確定した場合は速やかに甲に報告するものとする」との一文を加える。

B節: 中途採用向け

中途採用では、前職の退職手続の完了が就労開始の前提となる場合が多い。第2条に「乙が現職を円満に退職できない場合、甲乙協議のうえ就労開始日を変更することがある」旨の但書を加える。また第6条の労働条件は、面接・選考過程で提示した処遇(役職・想定年収レンジ・入社時の等級等)との整合性確保が重要であるため、「面接時に提示した労働条件の概要は別紙のとおりとし、正式条件は入社時に交付する労働条件通知書による」と明記し、条件面での期待値のずれによる紛争を防止する。前職での秘密保持義務・競業避止義務が残存している可能性がある場合は、「乙は前職との間で締結した秘密保持契約等に抵触しない範囲で業務に従事するものとする」との確認文言を加えることも検討する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、新卒・中途を問わず、選考を通過した候補者に採用の意思を伝え、就労開始日・配属・労働条件の骨子を示す場面で使用する。既に労働契約書を締結済みの場面や、法的拘束力を発生させる意図のない選考結果の速報連絡(いわゆる内々定)の場面では使用すべきでない。内々定の段階では「正式な内定通知の発出をもって労働契約が成立するものとし、本連絡は労働契約の申込みの誘引にとどまる」旨を明記した別書式を用いる必要がある。

根拠法令としては、まず労働基準法第15条第1項が、労働契約の締結に際して賃金・労働時間その他の労働条件を明示すべき義務を使用者に課しており、判例上、採用内定によって始期付解約権留保付労働契約が成立するとされる時点(大日本印刷事件・最高裁昭和54年7月20日判決)を踏まえると、内定通知の段階で相当程度具体的な労働条件を提示することが望ましい。また職業安定法第5条の3は、募集時に明示した労働条件と実際の労働契約締結時の条件が異なる場合の説明義務を定めており、内定通知の内容が募集時提示条件と乖離しないよう注意する必要がある。

実務でよくある失敗として、第一に、内定通知書に労働条件の詳細を一切記載せず「追って通知する」とのみ記載し、労働条件通知書の交付が入社直前まで遅れるケースが挙げられる。これにより労働条件をめぐる認識の齟齬が生じやすいため、第6条のように概要と別紙交付時期を明記する対策が有効である。第二に、内定取消事由(第7条)を「その他会社が必要と認めた場合」など抽象的にのみ規定し、後日の内定取消しが解約権濫用として無効と判断されるリスクがある。取消事由はできる限り具体的・限定的に列挙することが望ましい。第三に、就労開始日を確定させないまま内定を出し、候補者の他社選考辞退や転居準備等の予定と齟齬が生じるケースもあるため、第2条のように予定日を明記しつつ変更可能性を明示することが望ましい。

また、内定通知と募集時の求人票・求人広告との間で労働条件に相違がある場合には、職業安定法上の是正対応(変更内容の明示)が必要となる場面もあり、社内の採用担当と労務担当の間で条件のすり合わせを事前に行っておくことが実務上のトラブル防止につながる。

なお、内定通知の記載内容の適否や内定取消しの可否は個別の事実関係により判断が分かれるため、疑義がある場合は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 候補者の氏名・所属予定部署・職種が正しく記載されているか
  • [ ] 就労開始予定日が確定しているか、確定していない場合は変更可能性の記載があるか
  • [ ] 労働条件の概要(賃金・勤務地・労働時間等)または別紙交付の予定が明記されているか
  • [ ] 内定取消事由が具体的かつ限定的に列挙されているか
  • [ ] 新卒採用の場合、卒業要件(学校名・卒業見込み時期)が明記されているか
  • [ ] 内定承諾書の提出期限が明記されているか
  • [ ] 募集時に提示した労働条件と齟齬がないか確認したか
  • [ ] 発行日・会社名・代表者名等の記載事項に不備がないか
  • [ ] 労働条件通知書の交付時期・方法が社内で確定しているか
  • [ ] 個人情報(住所・連絡先等)の取扱いについて社内規程に沿っているか
  • [ ] 中途採用の場合、前職の退職時期との調整に関する記載があるか