屋外作業や高温職場を抱える企業向け。WBGT測定や休憩・水分補給、発症時の報告体制を定め、労働安全衛生規則第612条の2の熱中症対策義務に対応します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
熱中症予防対策規程
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本規程は、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)における熱中症の予防及び発症時の対応について、暑さ指数(WBGT値)の測定、作業管理、健康管理及び報告体制を定め、労働安全衛生規則第612条の2に定める熱中症対策の実施体制を確立することを目的とする。
第2条(定義) 本規程において「暑さ指数(WBGT値)」とは、気温、湿度及び輻射熱を総合的に評価する暑熱環境の指標をいう。「熱中症のおそれがある作業」とは、WBGT値が【28】度以上となる環境下での作業その他会社が指定する高温多湿作業をいう。
第3条(適用対象者) 本規程は、屋外作業、高温作業場での作業その他熱中症の発症するおそれのある業務に従事する全ての従業員に適用する。
第4条(熱中症対策管理者) 1. 会社は、事業場ごとに熱中症対策管理者を選任し、WBGT値の測定、作業計画の見直し及び発症時対応の統括を行わせる。 2. 熱中症対策管理者は、当該作業場を管理する職長又はこれに準ずる者から選任する。
第5条(WBGT値の測定及び対応区分) 1. 会社は、対象作業場において作業開始前及び作業中定期的にWBGT値を測定し、記録する。 2. WBGT値が【31】度以上の場合、原則として作業を中止する。WBGT値が【28】度以上【31】度未満の場合、休憩時間を通常より延長するとともに、作業の強度を軽減する。
第6条(暑熱順化期間の設定) 1. 会社は、新規に高温作業に従事する従業員及び長期休暇明けの従業員に対し、作業開始後【7】日間を暑熱順化期間とし、作業時間及び強度を段階的に増加させる。 2. 熱中症対策管理者は、暑熱順化期間中の対象者の健康状態を重点的に確認する。
第7条(休憩及び水分・塩分補給) 1. 会社は、対象作業場に涼しい休憩場所を確保し、少なくとも【1】時間ごとに休憩時間を設ける。 2. 会社は、飲料水及び塩分補給物を作業場に常備し、従業員に対し定期的な水分・塩分の摂取を励行する。
第8条(服装及び作業環境の整備) 会社は、通気性のよい服装の着用を認めるとともに、送風機、ミスト設備その他の暑熱環境を緩和する設備の設置に努める。
第9条(初期症状の把握及び報告体制) 1. 従業員は、めまい、大量の発汗、頭痛、吐き気その他熱中症を疑う症状を自覚したときは、直ちに作業を中止し、熱中症対策管理者又は職長に報告しなければならない。 2. 職長は、部下に前項の症状が疑われるときは、速やかに作業を中止させ、涼しい場所へ移動させるとともに、応急処置を行う。
第10条(緊急時の対応) 1. 前条の措置を講じても症状が改善しない場合又は意識障害が疑われる場合、会社は直ちに救急要請を行う。 2. 会社は、熱中症の発症事案について、原因分析を行い、労働基準監督署への報告を要する場合は労働安全衛生規則の定めるところにより報告する。
第11条(教育研修) 会社は、対象作業に従事する従業員及び管理監督者に対し、熱中症の症状、予防方法及び発症時の対応手順に関する教育を、作業開始前及び毎年【 】月に実施する。
第12条(記録の管理) 会社は、WBGT値の測定記録及び熱中症の発症事案の記録を【3】年間保存する。
第13条(改廃) 本規程の改廃は、就業規則の変更手続に準じて行う。
第14条(附則) 本規程は【西暦年】年【 】月【 】日から施行する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 建設・屋外作業向け(現場ごとに環境が変化する企業)
A-1 第5条の修正例 「現場代理人は、各作業現場において作業開始前に携帯型WBGT測定器で測定を行い、測定結果を朝礼で周知する。WBGT値が31度以上と予想される日は、前日までに作業計画を早朝作業への変更等に見直す。」 一言解説: 屋外作業では日々現場が変わるため、固定設備での測定を前提とせず、携帯測定器による現場ごとの当日判断と事前の作業計画見直しを組み合わせる規程が実務に適合する。
A-2 第10条の修正例 「現場代理人は、熱中症の疑いがある者を発見したときは、直ちに元請の安全衛生責任者に報告するとともに、救急搬送に備え現場周辺の医療機関の連絡先を作業所内に掲示しておく。」 一言解説: 建設現場では複数事業者が混在するため、自社内の報告に加え元請への報告経路と救急搬送先の事前把握を明記しておくことが被害拡大の防止につながる。
B節: 高温作業のある製造業向け(炉前作業等の恒常的高温環境がある企業)
B-1 第7条の修正例 「炉前作業その他会社が指定する高温作業に従事する従業員には、作業開始前及び作業中30分ごとに水分・塩分の摂取を義務付け、熱中症対策管理者は摂取状況を確認表により管理する。」 一言解説: 恒常的に高温にさらされる製造ラインでは、水分補給を努力目標とせず義務化し、確認表で摂取状況を可視化することで管理を徹底できる。
B-2 第6条の修正例 「配置転換により新たに高温作業ラインに従事する従業員については、作業開始後2週間を暑熱順化期間とし、この間は必ず経験者と2名以上で作業を行わせる。」 一言解説: 製造業では配置転換による未順化の従業員が発生しやすいため、順化期間中の複数人体制を明記し、単独作業による発見の遅れを防ぐ設計が有効である。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本規程を導入すべき場面は、屋外作業、建設現場、炉前作業その他WBGT値が高くなりやすい作業環境を有する企業であり、特に令和7年の労働安全衛生規則改正により事業者に熱中症の自覚症状の把握体制及び重篤化防止の措置が義務付けられた業種では、規程整備の優先度が高い。一方、空調が完備された屋内オフィス業務のみを行う企業では、本規程のような詳細な作業管理条項までは不要であり、一般的な健康管理規程の範囲で足りる場合が多い。
根拠法令としては、労働安全衛生規則第612条の2が中核となり、事業者に対し熱中症の自覚症状及び他者からの発見の情報を把握する体制の整備、並びに重篤化を防止するための措置の実施手順の作成を義務付けている。加えて、労働安全衛生法第22条は健康障害を防止するための措置を事業者に義務付けており、暑熱環境における作業管理はこれに含まれる。また、労働安全衛生規則第606条は作業場の温度・湿度等の作業環境管理に関する努力義務を定めており、送風設備の設置等(第8条)の根拠となる。労働契約法第5条の安全配慮義務も、熱中症による健康被害を防止するための体制整備を怠った場合の責任根拠として位置付けられる。
実務でよくある失敗の一つ目は、WBGT値の測定を行うのみで、測定結果に応じた作業中止・休憩延長等の対応基準を定めておらず、測定が形骸化することである。第5条のように数値ごとの具体的な対応区分を明記することで、測定を実効的な対応に結び付けられる。
二つ目の失敗は、新規配属者や休暇明けの従業員が暑熱順化前に通常作業に従事し、発症リスクが高い期間の管理がなされないことである。第6条のように順化期間を明確に設けることで、この失敗を防止できる。
三つ目の失敗は、初期症状を発見した際の報告経路が定まっておらず、現場の判断のみで様子を見てしまい、重篤化してから対応が始まることである。第9条・第10条のように報告義務と緊急対応手順を明記し、周知徹底することが重要である。
作業内容・現場の実情によって適切なWBGT基準値や体制は異なるため、個別事案は専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] WBGT値の測定方法及び測定頻度を定めたか
- [ ] WBGT値の区分ごとの作業中止・休憩延長基準を具体的に定めたか
- [ ] 熱中症対策管理者の選任及び役割を明記したか
- [ ] 暑熱順化期間の設定及び対象者を定めたか
- [ ] 休憩場所の確保及び水分・塩分補給の方法を定めたか
- [ ] 初期症状発見時の報告体制(本人・周囲双方)を明記したか
- [ ] 緊急時の救急要請及び搬送手順を定めたか
- [ ] 熱中症の発症事案の労働基準監督署への報告要否を確認したか
- [ ] 教育研修の実施時期及び対象者を定めたか
- [ ] 測定記録及び発症記録の保存期間を定めたか