継続的取引から生じる不特定の債権をまとめて担保する場面の契約書。民法第398条の2の極度額・被担保債権の範囲・元本確定期日の定め方を示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
根抵当権設定契約書
第1部: 書式本文
【根抵当権者商号】(以下「甲」という。)、【設定者商号】(以下「乙」という。)及び【物上保証人氏名】(以下「丙」という。)は、甲乙間の継続的取引から生じる不特定の債権を担保するため、次のとおり根抵当権設定契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(根抵当権の設定) 丙は、乙が甲に対して負担する下記債権を担保するため、丙の所有する下記不動産(以下「本件不動産」という。)につき、極度額金【 】円の根抵当権(以下「本根抵当権」という。)を甲のために設定する。本根抵当権は民法第398条の2に定める根抵当権とする。 記 【不動産の表示:所在・地番・地目・地積等】
第2条(被担保債権の範囲) 本根抵当権の被担保債権の範囲は、甲乙間の下記取引に基づき現在及び将来生じる一切の債権とする。 1. 【〇〇年〇〇月〇〇日】付継続的融資取引契約に基づく債権 2. 手形貸付、当座貸越その他甲乙間の金銭消費貸借取引に基づく債権
第3条(極度額) 本根抵当権の極度額は金【 】円とし、元本、利息、遅延損害金その他の従たる債権を包含して当該極度額を限度として担保する(民法第398条の3)。
第4条(元本確定期日) 1. 本根抵当権の元本は、【〇〇年〇〇月〇〇日】(以下「元本確定期日」という。)に確定する。 2. 元本確定期日を定めない場合、甲又は乙(設定者)は、本根抵当権の設定登記から3年を経過した後、民法第398条の19の規定により元本確定を請求することができる。
第5条(元本確定事由) 第4条のほか、民法第398条の20に定める事由(甲が本件不動産に対し競売若しくは滞納処分による差押えを申し立てたとき、乙又は丙について破産手続開始の決定があったとき等)が生じたときは、本根抵当権の担保すべき元本は確定する。
第6条(登記手続) 丙は、本契約締結後遅滞なく、本根抵当権設定登記手続に必要な一切の書類を甲に交付し、登記手続に協力する。登記に要する費用は乙の負担とする。
第7条(極度額の変更) 本根抵当権の極度額の変更は、利害関係人の承諾を得た上で、甲乙丙の合意により行うことができる(民法第398条の5)。
第8条(被担保債権の範囲又は債務者の変更) 本根抵当権の被担保債権の範囲又は債務者の変更は、元本確定前に限り、甲乙丙の合意により行うことができる(民法第398条の4)。当該変更について後順位の抵当権者その他の第三者の承諾は要しない。
第9条(担保価値維持義務) 丙は、本根抵当権の設定期間中、本件不動産につき善良な管理者の注意をもって維持管理し、甲の書面による事前の承諾なく、譲渡、賃貸、用途変更その他担保価値を減少させるおそれのある行為をしない。
第10条(元本確定後の手続) 元本確定後、甲乙丙は、確定した元本額を基礎として、極度額を限度とする通常の抵当権に準じた清算及び担保解除の手続を行う。
第11条(協議及び合意管轄) 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上を証するため本書3通を作成し、甲乙丙記名押印の上、各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(甲) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】 印 (乙) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】 印 (丙) 住所:【 】 氏名:【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 根抵当権者向け書き換え
A-1. 継続的な手形割引・当座貸越取引を主に担保したい場面
第2条修正例:「被担保債権の範囲は、手形割引取引、当座貸越取引及び手形貸付取引から生じる債権に限定する(民法第398条の2第3項の手形上・小切手上の請求権を含む)。」 解説: 銀行取引実務では被担保債権の範囲を取引類型ごとに限定列挙することが一般的であり、範囲を明確にすることで紛争を防止する。
A-2. 元本確定期日を定めず柔軟に運用したい場面
第4条修正例:「本根抵当権の元本確定期日は定めない。甲乙丙は、民法第398条の19に基づく元本確定請求権の行使について、設定登記後3年間はこれを行使しない旨を合意する。」 解説: 期日を定めない根抵当権は継続的取引に柔軟に対応できる一方、乙・丙はいつでも(登記後3年経過後)確定請求ができるため、当初一定期間は請求しない特約を置く例がある。
B. 設定者・物上保証人向け書き換え
B-1. 物上保証人が保証範囲を限定したい場面
第3条修正例:「本根抵当権の極度額は金【 】円とし、丙は本根抵当権の実行による負担を当該極度額の範囲に限定することを甲に確認する。」 解説: 物上保証人は極度額の範囲でのみ責任を負う立場であることを契約上も明示し、無限責任ではないことを確認する。
B-2. 事業承継を見据えて元本確定期日を早期化したい場面
第4条修正例:「本根抵当権の元本確定期日は【〇〇年〇〇月〇〇日】とし、期日到来後は速やかに確定元本を基礎とした通常の抵当権への移行手続を行う。」 解説: 事業承継や不動産の処分計画がある場合、確定時期を明確にし将来の担保整理を予定しやすくする。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、金融機関と企業との間の継続的な融資取引、手形割引取引等から反復的に生じる不特定の債権をまとめて一つの不動産で担保する場面で用いる。特定の一回限りの貸付債権のみを担保する場合は、不動産抵当権設定契約書を用いるべきであり、本書式はなじまない。根抵当権は極度額の範囲で担保する点が通常の抵当権と異なり、被担保債権の元本確定前は付従性・随伴性が緩和される特殊性がある。
根拠法令 根抵当権は民法第398条の2に基づき、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保する抵当権である。極度額の定めは同法第398条の3、被担保債権の範囲・債務者の変更は元本確定前に限り同法第398条の4により可能である。元本確定期日は同法第398条の6で定めることができ、期日を定めない場合の確定請求権は同法第398条の19に規定される。元本確定事由は同法第398条の20に列挙され、競売・滞納処分による差押えの申立て、破産手続開始決定等が含まれる。極度額の変更には利害関係人の承諾を要する(同法第398条の5)。
実務でよくある失敗と対策 第一に、被担保債権の範囲を「一切の債権」のように包括的に定めすぎ、根抵当権の対象取引が不明確になり、後日どの債権が担保されるか争いになる失敗がある。第2条のように取引類型を具体的に列挙する。第二に、元本確定期日や確定事由を理解せず、確定前後で付従性の扱いが異なることを見落とし、確定後に新たに発生した債権が担保されないという事態を招く失敗がある。第4条・第5条のように確定期日・確定事由を明確にする。第三に、物上保証人である丙の責任範囲を極度額に限定する旨を明示せず、丙が無限の責任を負うかのような誤解を招く失敗がある。B-1修正例のように極度額の範囲に限定することを確認する。元本確定のタイミングや被担保債権範囲の設計は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 被担保債権の範囲(取引類型)を具体的に列挙したか
- [ ] 極度額を明確に定めたか
- [ ] 元本確定期日を定めるか、確定請求権の扱いを検討したか
- [ ] 民法第398条の20の元本確定事由を確認したか
- [ ] 登記手続の実施時期及び費用負担を明記したか
- [ ] 極度額・被担保債権範囲の変更手続(元本確定前に限る)を確認したか
- [ ] 物上保証人の責任範囲が極度額に限定されることを確認したか
- [ ] 担保価値維持義務(譲渡・賃貸等の制限)を定めたか
- [ ] 元本確定後の清算・担保解除手続を確認したか