日常清掃の実施状況を区域別に確認する点検表です。作業項目ごとのチェック欄と是正指示欄を設け品質管理に用います。相手方との認識のずれを防ぐ具体的な記載例を示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
日常清掃点検表
第1部: 書式本文
日常清掃点検表
対象施設:【施設名称・所在地】 対象期間:【〇〇〇〇年〇〇月】 作成者(清掃業者):【会社名・担当者名】 確認者(施設管理者):【会社名・担当者名】
1. 区域別点検項目一覧
| 区域 | 作業項目 | 実施頻度 | 実施可否(○/×) | 是正指示欄 | 確認印 |
|---|---|---|---|---|---|
| エントランス | 床面モップ清掃・マット除塵 | 毎日 | |||
| エントランス | ガラス扉指紋除去 | 毎日 | |||
| 共用トイレ | 便器・洗面台洗浄、消耗品補充 | 毎日 | |||
| 共用廊下・階段 | 床面清掃、手すり清拭 | 毎日 | |||
| エレベーターホール | 床面清掃、操作盤清拭 | 毎日 | |||
| ごみ集積所 | ごみ集積・分別確認、周辺清掃 | 毎日 | |||
| 給湯室 | シンク・調理台清掃 | 毎日 | |||
| 会議室 | 使用後の机・椅子整頓、ゴミ回収 | 使用日のみ | |||
| 駐輪場・外構 | 落葉除去、吸殻・ゴミ拾い | 毎日 | |||
| 喫煙所 | 灰皿清掃、吸殻処分 | 1日2回 |
2. 記載方法 (1) 清掃業者は、当日の実施結果を「実施可否」欄に○又は×で記入し、未実施又は不完全実施の場合はその理由を別紙業務日報に付記する。 (2) 施設管理者は、週次を目途に現地を確認し、不備がある場合は「是正指示欄」に具体的な指示内容(箇所・状態・期限)を記入する。例:「【1階女子トイレ、〇月〇日、床面に水滴残留あり。翌日始業前までに再清掃を求める。】」 (3) 是正指示に対する対応結果は、清掃業者が対応日と対応内容を記入し、双方の確認印をもって完了とする。
3. 特記事項欄 【施設側からの臨時清掃依頼、繁忙期の作業追加、備品の破損発見等を自由記載】
4. 写真記録の取扱い 是正指示に係る箇所については、指示前後の状態を写真で記録し、点検表に紐づけて保管することが望ましい。写真データのファイル名は「区域名_年月日_是正前(後)」の形式で統一し、点検表の該当行に参照番号を付す。
5. 月次確認 本点検表は、対象月終了後【5】営業日以内に清掃業者が施設管理者に提出し、施設管理者は内容を確認のうえ、業務委託契約に定める報告書として保管する。是正未了事項がある場合は、翌月点検表の冒頭に繰越事項として記載する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
清掃業者確認:【 】印 施設管理者確認:【 】印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 清掃業者向け書き換え
A-1. 複数区域を複数人で分担する場合
区域欄への追記例:「担当者氏名欄を新設し、区域ごとに当日の担当清掃員氏名を記入する。同一区域を複数名で担当した場合は、主担当者の氏名のみを記入し、副担当者は備考欄に記載する。」 一言解説: 苦情発生時に担当者を特定できないと原因究明が遅れるため、担当者名の記録は品質管理上の基本事項である。
A-2. 天候等により実施頻度どおりの作業ができない場合
特記事項欄の記載例:「本日は強風のため外構清掃(屋外階段・自転車置場)を翌営業日に順延した。施設管理者へは口頭で〇時〇分に報告済み。」 一言解説: 頻度どおりに実施できなかった事実を隠さず記録に残すことで、後日「清掃していない」との一方的な指摘を防ぐことができる。
B. 施設管理者向け書き換え
B-1. テナントからの苦情を点検表に反映させる場合
是正指示欄の記載例:「〇階テナントより、〇月〇日午前中に共用廊下の清掃が未実施であったとの申告あり。次回巡回時に清掃実施の有無を写真で記録し、本表に添付すること。」 一言解説: テナントからの苦情を口頭のみで処理すると水掛け論になりやすく、点検表上に申告内容と対応記録を残すことで説明責任を果たせる。
B-2. 感染症流行期に消毒作業を追加する場合
作業項目欄への追記例:「エレベーターボタン・手すり・ドアノブ等高頻度接触部位のアルコール消毒を1日2回(始業時・正午)実施する。」 一言解説: 通常清掃と別立てで消毒作業の実施頻度と対象箇所を明記しないと、追加費用の要否をめぐる認識の相違が生じやすい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本点検表は、清掃業務委託契約に基づき継続的に実施される日常清掃について、実施状況を可視化し、施設管理者との間で品質水準の認識を一致させるために用いる。定期的な床面のワックス処理や高所窓ガラス清掃のように、実施頻度が低く別途契約書で個別に条件を定めるべき業務には適さず、それらは専用の業務委託契約書を用いるべきである。また、本点検表への記載のみをもって業務委託契約そのものに代えることはできない点にも留意する。
根拠法令及び留意点 清掃業務の履行状況に関する記録は、業務委託契約における債務の本旨に従った履行(民法第415条)がなされたことを示す証拠資料としての意味を持つ。また、清掃業者が不完全な履行を継続し施設管理者が是正を求めたにもかかわらず改善がない場合は、契約解除(民法第541条)の当否を判断する資料ともなり得る。ビルメンテナンス業務においては建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)第4条に基づく維持管理基準の遵守が求められる場合があり、点検表の記載項目を同法に定める清掃等の基準と整合させておくことが望ましい。個別の施設用途や契約条件によって適用の要否や記載すべき水準は異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
実務でよくある失敗と対策 第一に、点検表を清掃業者側のみが作成・保管し、施設管理者が内容を確認しないまま形骸化する例が多い。対策として、月次確認の署名欄を設け、施設管理者による確認を契約上の義務として明記する。第二に、是正指示に対する対応結果が記録されず、同じ不備が繰り返される例がある。対策として、是正指示欄と対応結果欄を対で設け、未対応事項を翌月に繰り越す運用を徹底する。第三に、実施できなかった作業を「実施済み」として記載してしまう例があり、これは後日の紛争において清掃業者に不利な事実として扱われかねないため、未実施の場合は正直にその旨と理由を記載する運用を周知することが重要である。第四に、点検表の保管期間を定めないまま短期間で廃棄してしまい、後日クレームが発生した際に過去の実施状況を証明できなくなる例もある。業務委託契約の消滅時効期間等を踏まえ、少なくとも過去1年分は原本又は電子データで保管する運用を定めておくことが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象施設・対象期間・作成者・確認者の記載欄を設けたか
- [ ] 区域別の作業項目と実施頻度が業務委託契約の内容と整合しているか
- [ ] 実施可否を客観的に判定できる基準(○/×等)を定めたか
- [ ] 是正指示欄と対応結果欄を対で設けたか
- [ ] 特記事項欄(臨時対応・備品破損等)を設けたか
- [ ] 月次提出期限と保管方法を定めたか
- [ ] 未対応の是正事項を翌月へ繰り越す運用を明記したか
- [ ] 担当清掃員を特定できる記載欄を設けたか
- [ ] 施設管理者による定期確認(現地確認)の頻度を定めたか
- [ ] 感染症対策等の臨時作業を追加する際の記載方法を定めたか
- [ ] 点検表の保管期間及び保管方法(原本・電子データ)を定めたか
- [ ] 苦情・クレーム発生時の記録方法を点検表に組み込んだか