同人誌やファンアートの取扱方針を権利者が示す公表文書。著作権法第27条の翻案権を前提に、許容範囲と商業利用の境界を定義します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
二次創作ガイドライン
第1部: 書式本文
1. 目的 本ガイドラインは、【〇〇〇〇株式会社】(以下「当社」という。)が権利を有するキャラクター、世界観その他の著作物(以下「原著作物」という。)を題材とするファンによる創作活動(以下「二次創作」という。)について、著作権法第27条(翻案権等)及び第21条(複製権)の権利処理に関する当社の許諾方針を包括的に公表するものである。
2. 対象範囲 本ガイドラインは、原著作物のキャラクター等を用いた同人誌、イラスト、コスプレ、ファンアート、二次創作小説その他の非商業的な創作物(以下「二次創作物」という。)に適用する。原著作物の映像・音源・ゲームプログラムそのものを複製・改変する行為(いわゆるMAD動画、無断翻訳、リーク配布等)には適用しない。
3. 許諾される行為 ファンは、次条以下の条件のもとで、原著作物のキャラクター等を翻案した二次創作物を制作し、同人誌即売会での頒布、個人のSNS・ウェブサイトへの掲載を行うことができる。当社は、これらの行為について著作権法第27条の翻案権及び第28条の二次的著作物の利用に関する権利を行使しないことを表明する。
4. 表現内容に関する線引き 二次創作物において、次の各号に該当する表現は許容しない。 一 過度に性的な描写であって、児童ポルノ禁止法その他の法令に抵触するおそれのある表現、又は公然わいせつに該当し得る表現 二 原著作物のブランドイメージを著しく毀損する暴力的表現、猟奇的表現 三 実在の人物・事件を題材とし、名誉毀損又はプライバシー侵害のおそれがある表現 四 R-18表現を含む二次創作物について、年齢確認措置及び閲覧制限措置を講じないまま不特定多数に頒布・公開する行為
5. 頒布数量の上限 同人誌即売会等における物理頒布物について、1タイトル・1版当たりの頒布部数は【1,000】部を目安の上限とする。当該部数を超える大量頒布を予定する場合、事前に当社への届出を要する。
6. 商業利用の境界 二次創作物の販売により生じる利益は、印刷実費・会場費等の実費を著しく超えない範囲(いわゆる非営利の同人活動の範囲)にとどめるものとする。商業印刷物への掲載、企業とのタイアップ、クラウドファンディングを通じた大規模な資金調達、グッズの大量生産・卸売りは、本ガイドラインの許諾範囲に含まれず、別途「二次創作物商業利用許諾契約」の締結を要する。
7. AI生成物との関係 生成AIを用いて原著作物のキャラクター等の特徴を再現した画像・文章を生成する行為は、当該生成物が原著作物の表現上の本質的特徴を直接感得できるものである限り、本ガイドラインにおける二次創作物として取り扱う。ただし、原著作物の学習データとしての利用の適法性(著作権法第30条の4)及び生成物の著作物性については別途の考慮を要し、本ガイドラインはこれらを保証するものではない。
8. 権利表記及び禁止行為 二次創作物には原作品名を明記するものとし、あたかも当社の公式商品であるかのような誤認混同を生じさせる表示、公式ロゴの無断使用及び原著作物の設定と矛盾する形での商標的使用を行ってはならない。
9. 違反時の対応 当社は、本ガイドライン違反があると認めた場合、著作権法第112条に基づく差止め請求その他必要な措置を講じることができる。ただし、直ちに法的措置を講じるのではなく、まず当社からの是正要請を行うよう努める。
10. 問い合わせ・変更手続 本ガイドラインの解釈及び個別の掲載可否については【問い合わせ窓口】にて受け付ける。当社は本ガイドラインを予告なく変更できるものとし、変更後の内容は当社ウェブサイト掲載時点から適用する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. IPホルダー向けの修正
A-1. 表現内容の審査基準の具体化
修正後:「第4条一号の該当性判断にあたっては、露出の程度、性的行為の直接的描写の有無、シチュエーションの文脈を総合的に考慮し、【〇〇】(外部審査機関)の年齢区分表示基準を参考指標とする。」 一言解説: 権利者の裁量が広すぎると恣意的な削除要請との批判を招くため、判断基準を客観化しファンとの摩擦を減らす修正である。
A-2. AI生成物への対応方針の明確化
追加条文例:「当社は、原著作物のキャラクターを学習させた特化型AIモデルの公開及び当該モデルによる生成物の商用販売については、本ガイドラインの許諾範囲外とし、個別に判断する。」 一言解説: AI生成物の急増を踏まえ、通常の手描き二次創作とAIモデル公開という異なるリスク類型を区別して権利者の対応方針を明示する修正である。
B. ファン・同人作家向け条件の修正
B-1. 頒布数量上限の緩和交渉条項
修正後:「1タイトル・1版当たりの頒布部数が上限を超える見込みの場合、頒布開始の【30】日前までに当社所定の届出書を提出することで、当社の個別承認を得て上限を超えて頒布することができる。」 一言解説: 人気創作者が上限に達して機械的に頒布を止めることを避けるため、事前届出による柔軟な例外運用を設ける修正である。
B-2. 年齢確認措置の具体的手段の明記
追加条文例:「R-18表現を含む二次創作物をウェブ上で公開する場合、年齢確認プラグインの設置又は年齢確認質問への同意取得のいずれかの措置を講じるものとする。」 一言解説: 抽象的な「年齢確認措置」では作家側が何をすればよいか分からないため、具体的な手段を例示し遵守を容易にする修正である。
C. 商業利用の線引きに関する修正
C-1. グレーゾーンの例示追加
修正後:「同人誌即売会での頒布に伴う実費回収は非商業利用に該当するが、オンライン通販サイトでの継続的な在庫販売、法人名義での出店、広告収益を伴う二次創作物の有料配信は商業利用とみなす。」 一言解説: 「非営利の範囲」という抽象的基準だけでは判断が割れやすいため、典型的なグレーゾーン事例を列挙して境界を明確化する修正である。
C-2. クラウドファンディング利用の個別許諾条項
追加条文例:「二次創作物の制作費用を目的とした少額のクラウドファンディング(目標金額【30万円】以下)は事前届出により許容するが、これを超える資金調達は商業利用として別途許諾を要する。」 一言解説: クラウドファンディングは規模により性質が大きく異なるため、金額基準を設けて非商業/商業の線引きを明確にする修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本ガイドラインは、多数の個人ファンによる同人誌・イラスト等の非商業的な二次創作活動を、個別許諾なしに包括的に許容する場面で用いる。他方、特定のクリエイターへのコラボ発注、公式アンソロジーへの寄稿、企業案件としてのイラスト制作には適さず、個別の業務委託契約書又は原著作物利用許諾契約書を締結すべきである。
根拠法令の解説 キャラクターを用いた二次創作は、著作権法第27条にいう「翻案」に該当し得る行為であり、原著作物の著作権者はこれを許諾又は禁止する権利(翻案権)を有する。また、二次創作物自体が二次的著作物として保護される場合、同法第28条により、原著作者は二次的著作物の利用に関しても原著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。本ガイドラインは、権利者があらかじめ翻案権の行使方針を包括的に表明することで、個々のファン活動について都度の許諾手続を不要とするものである。なお、性的・暴力的表現の線引きについては著作権法自体が直接規律するものではなく、児童ポルノ禁止法、刑法第175条(わいせつ物頒布等)等の別法令との関係で権利者が自主的に基準を設ける必要がある。また、実在の人物を題材とする場合は著作権法の枠を超えパブリシティ権・名誉権の問題を生じる点にも留意する。
実務でよくある失敗と対策 第一に、表現内容の線引きが「常識の範囲で」といった抽象的な記載にとどまり、作家ごとに解釈が割れ、削除要請時に「なぜ自分だけ」という不満を招く失敗がある。A-1のように判断基準を具体化し、可能な範囲で客観的指標を示すことが対策となる。第二に、頒布数量の上限を機械的に設定した結果、人気作家の正当な活動機会を奪い、かえってファンコミュニティとの関係を悪化させる失敗がある。B-1のような事前届出による例外運用を組み込むことが望ましい。第三に、生成AIを用いた二次創作物への対応方針を定めないまま放置し、手描き創作とAIモデル公開という性質の異なる行為を同列に扱ってしまう失敗がある。A-2のようにAI関連の取扱いを別途明記することが対策となる。表現の線引きは社会的評価やIPの性質によって大きく異なるため、個別事案は専門家に確認してください。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 原著作物の範囲(タイトル名・キャラクター名)を明記したか
- [ ] 翻案権(第27条)及び二次的著作物の利用権(第28条)の不行使範囲を明確にしたか
- [ ] 性的・暴力的表現の線引き基準を具体的に定めたか
- [ ] 年齢確認措置の具体的手段を例示したか
- [ ] 頒布部数の上限及び上限超過時の届出手続を定めたか
- [ ] 非商業利用と商業利用の境界を具体例で示したか
- [ ] クラウドファンディング等の資金調達手段への対応方針を定めたか
- [ ] AI生成物の取扱い及び学習利用との関係を整理したか
- [ ] 実在人物・事件を題材とする場合の別リスクへの言及があるか
- [ ] 違反時の是正要請から差止めまでの段階的対応を定めたか