田畑など農地を農地のまま売買する場面の契約書。農地法第3条の農業委員会許可を停止条件とし、許可されない場合の解除と代金返還、引渡し時期の定めを整理した書式。

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農地売買契約書

第1部: 書式本文

第1条(目的物件) 売主は、別紙物件目録記載の農地(以下「本物件」という。)を農地のまま買主に売り渡し、買主はこれを買い受ける。

第2条(売買代金) 売買代金は金〇〇円とし、買主は手付金〇〇円を契約締結時に、残代金を農地法所定の許可取得後の引渡日に支払う。

第3条(農業委員会の許可を停止条件とする旨) 本契約は、農地法第3条第1項に基づく農業委員会(又は都道府県知事)の許可を得ることを停止条件として効力を生じる。

第4条(許可申請への協力) 売主及び買主は、本契約締結後速やかに、農地法第3条の許可申請に必要な書類を相互に提出し、許可取得に協力する。

第5条(買主の適格性) 買主は、農地法第3条第2項各号に定める許可要件(農地の全てを効率的に利用して耕作を行うと認められること、一定の農作業への常時従事等)を満たす者であることを表明する。

第6条(許可が得られない場合の措置) 農業委員会の許可申請が不許可となった場合、本契約は当然に効力を失い、売主は受領済みの手付金を無利息で買主に返還する。

第7条(引渡し及び所有権移転登記) 売主は、許可取得後、残代金の支払と引換えに本物件を引き渡し、所有権移転登記に必要な書類を買主に交付する。

第8条(現況の確認) 売主は、本物件の土壌の状況、耕作の履歴、用排水施設の利用関係について買主に開示する。

第9条(農業経営基盤強化促進法との関係) 本物件が農用地区域内にある場合、農業経営基盤強化促進法に基づく農用地利用集積計画等の別の手続によることができるかを別紙で確認する。当該手続による場合、農地法第3条の許可を要しない特例が適用される可能性があるため、市町村担当課への事前確認結果を別紙に記載する。

第10条(契約不適合責任) 引き渡された本物件が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は民法の定めるところにより履行の追完、代金減額、損害賠償又は解除を請求することができる。

第11条(危険負担) 引渡し前の滅失・毀損の危険は売主が、引渡し後は買主が負担する。

第12条(合意管轄) 本契約に関する紛争は、本物件所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 売主(耕作者)向けの修正

A-1. 許可申請の遅延に対する解除権の追加

追加条文例:「本契約締結後〇か月以内に許可申請がされないとき、売主は本契約を解除することができる。」 一言解説: 買主側の準備不足により許可申請が遅延し、売主が長期間拘束されることを防ぐための修正である。

B. 買主(農業者)向けの修正

B-1. 不許可時の違約金免除の明確化

追加条文例:「農業委員会の許可が得られないことにより本契約が効力を失った場合、買主は違約金支払義務を負わない。ただし、買主の虚偽申請その他買主の責めに帰すべき事由により不許可となった場合はこの限りでない。」 一言解説: 許可の可否は行政庁の判断に依存するため、買主に帰責性がない場合の違約金免除を明記し、買主の予測可能性を確保する修正である。

B-2. 土壌汚染・耕作障害の有無に関する調査協力義務の追加

追加条文例:「売主は、買主が本物件の土壌調査を実施することに協力し、過去に生じた耕作障害(病害虫、連作障害等)があれば開示する。」 一言解説: 農地の取引においては土壌の状態が収穫量に直結するため、宅地建物取引とは異なる観点での事前調査協力を明記する修正である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、田畑等の農地を農地としての利用を継続する前提で売買する場面で用いる。農地を宅地や資材置場等の非農地に転用する目的で取引する場合には、農地法第5条に基づく転用目的の権利移転許可が必要となり、本書式(農地法第3条を前提とする書式)とは適用条文が異なるため、別書式(農地転用に関する承諾書等)を用いるべきである。

根拠法令 農地法第3条第1項は、農地について所有権を移転する場合には、原則として農業委員会(一定の面積を超える場合は都道府県知事)の許可を受けなければならない旨を定める。同条第2項は、許可をしてはならない場合として、譲受人が農地の全部を効率的に利用して耕作の事業を行うと認められない場合等を列挙しており、これが買主(譲受人)の適格性要件となる。無許可でされた所有権移転は効力を生じないとされているため(農地法第3条第6項)、許可を停止条件とする契約構成が実務上定着している。

実務でよくある失敗と対策 第一に、買主が農業委員会の許可要件(下限面積要件の緩和、地域の実態に応じた要件等)を満たすか事前に確認せず契約し、不許可となって契約が空振りに終わる失敗がある。第5条のとおり買主の適格性を契約書上で表明させ、事前に農業委員会へ相談しておくことが望ましい。第二に、農地が農業振興地域内の農用地区域に指定されている場合、農地法の許可に加えて別途の除外手続が必要となることを見落とす失敗がある。第9条のように農業経営基盤強化促進法等の関連制度との関係を確認する条項を設けることが有効である。第三に、許可申請中に売主が翻意し、他の買主に転売しようとする失敗がある。停止条件付契約であっても当事者間の契約上の拘束力は生じているため、A-1のような解除権の設計と合わせて、二重譲渡を防止する実務上の対応(仮登記等)を検討する必要がある。

第四に、下限面積要件(農地法第3条第2項第5号、いわゆる別段面積を含む)を確認せず、買主が既に保有する農地面積との合計が基準に満たないために不許可となる失敗もある。買主の既存の耕作面積を事前に棚卸しし、取得後の合計面積が地域の下限面積要件を満たすかを確認しておくことが望ましい。第五に、農地に用水路・畦畔等の第三者との共用施設が存在する場合に、その利用関係(水利権、通行権等)を書面で確認しないまま引き渡し、買主が耕作開始後に近隣農家との間で利用をめぐるトラブルに直面する失敗もある。

農地法上の許可要件の当てはめは地域の農業委員会の運用によって異なる部分があるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。農業委員会への事前確認もあわせて行うことが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 対象農地が農地法第3条の許可対象か、第5条の転用許可対象かを区別したか
  • [ ] 買主が農地法第3条第2項の許可要件(効率利用要件、常時従事要件等)を満たすか事前に確認したか
  • [ ] 対象農地が農業振興地域内の農用地区域に指定されていないか確認したか
  • [ ] 農業委員会への事前相談を実施したか
  • [ ] 許可申請に必要な書類(耕作証明、営農計画書等)を準備したか
  • [ ] 不許可の場合の契約失効及び手付金返還の条項を明記したか
  • [ ] 土壌の状況及び耕作履歴(連作障害等)を確認したか
  • [ ] 用排水施設・農業用道路の利用関係を確認したか
  • [ ] 引渡し時期を許可取得後に設定しているか確認したか
  • [ ] 買主の既存耕作面積と合計した下限面積要件の充足を確認したか
  • [ ] 用水路・畦畔等の共用施設の利用関係(水利権等)を確認したか