農地を宅地や駐車場へ転用するにあたり所有者や耕作者が同意する承諾書。農地法第4条・第5条の都道府県知事許可の申請添付書類として用いる場面を想定した書式。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
農地転用に関する承諾書
第1部: 書式本文
第1条(前提) 農地所有者甲、転用事業者乙及び賃借人(耕作者)丙は、別紙物件目録記載の農地(以下「本農地」という。)を宅地、駐車場その他の非農地に転用する計画について、次のとおり承諾する。
第2条(転用計画の概要) 乙は、本農地を〔選択A: 宅地/選択B: 駐車場/選択C: 資材置場/選択D: 太陽光発電設備用地〕として利用するため、転用工事を実施する計画である。
第3条(甲の承諾) 甲(所有者)は、乙が本農地について農地法第4条又は第5条に基づく転用許可(甲自らが転用する場合は第4条許可、権利移転を伴う場合は第5条許可)を申請することを承諾する。
第4条(丙の承諾(耕作者がいる場合)) 丙(賃借人・耕作者)は、本農地の賃貸借契約を合意解約し、転用計画に協力することを承諾する。丙が受けるべき離作補償の金額は別紙のとおりとする。
第5条(許可申請への協力) 甲及び丙は、乙が転用許可申請を行うために必要な書類(印鑑証明書、承諾書、賃貸借契約解約合意書等)を提出する。
第6条(許可を停止条件とする合意) 本農地に係る所有権の移転又は賃借権の設定を伴う取引がある場合、当該取引は農地法第5条の許可を得ることを停止条件として効力を生じる。
第7条(許可が得られない場合の措置) 転用許可申請が不許可となった場合、甲乙丙間の合意は当然に効力を失い、既に授受された金銭があるときは無利息で返還する。
第8条(転用後の用途変更の制限) 乙は、許可を受けた転用目的以外の用途に本農地を使用してはならない。用途を変更する場合は、改めて農地法上の手続を行う。
第9条(原状回復義務) 転用許可の条件に違反した場合、又は転用事業が中止された場合、乙は本農地を原則として農地への原状回復義務を負う。
第10条(離作補償の算定根拠) 丙に支払う離作補償金は、耕作権の残存年数、当該農地の収益性、地域の慣行的な補償基準を参考に算定したものであることを甲乙丙は相互に確認する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 農地所有者向けの修正
A-1. 転用許可取得までの土地利用制限の明確化
追加条文例:「甲は、転用許可が下りるまでの間、本農地について現状の農地としての利用を継続するものとし、乙による無許可での造成工事の着手を認めない。」 一言解説: 無許可転用(農地法違反)による原状回復命令等のリスクを回避するため、許可取得前の造成工事着手を明確に禁止する修正である。
B. 転用事業者向けの修正
B-1. 許可取得スケジュールの明記
追加条文例:「乙は、本承諾書締結後速やかに転用許可申請書類を整え、〇か月以内に許可申請を行うものとする。」 一言解説: 転用事業者が許可取得の見通しなく計画を放置し、農地所有者や耕作者を長期間拘束することを防ぐための修正である。
C. 賃借人(耕作者)向けの修正
C-1. 離作補償の支払時期の明確化
追加条文例:「離作補償金は、転用許可が確定した日から〇日以内に、丙の指定する口座に一括で支払う。」 一言解説: 耕作者にとって離作補償は生活・営農継続の原資となるため、支払時期を明確にし、許可確定後速やかな支払を確保する修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、農地を宅地や駐車場、資材置場等の非農地に転用する計画にあたり、所有者及び耕作者(賃借人がいる場合)から事前の承諾を取得し、農地法上の転用許可申請の準備を整える場面で用いる。農地を農地のまま第三者に売却する場合は農地法第3条の許可が根拠となるため、前掲の農地売買契約書を用いるべきであり、本書式は転用(非農地化)を伴う場面に限定される。
根拠法令 農地法第4条第1項は、農地の所有者が自らその農地を農地以外のものに転用する場合、都道府県知事等の許可を受けなければならない旨を定める。同法第5条第1項は、農地について所有権の移転や賃借権の設定等と転用を同時に行う場合、当該権利を取得しようとする者及び所有者が都道府県知事等の許可を受けなければならない旨を定める。いずれも市街化区域内にある農地については、あらかじめ農業委員会に届出をすることで許可を要しない特例がある(農地法第4条第1項第7号・第5条第1項第6号)。賃借人がいる農地を転用する場合、賃貸借契約の合意解約及び離作補償の授受が実務上必要となることが多いが、離作補償の法的根拠は明文の規定があるわけではなく、当事者間の合意や地域の慣行に基づくものである。
実務でよくある失敗と対策 第一に、転用許可を得る前に造成工事に着手してしまい、無断転用として都道府県知事等から工事停止命令や原状回復命令を受ける失敗がある。A-1のように許可取得前の工事着手を禁止する条項を設けることが重要である。第二に、市街化区域内の農地であるため届出のみで足りると誤解し、実際には市街化調整区域に該当していたために無許可転用となってしまう失敗がある。対象農地の都市計画法上の区域区分(市街化区域か市街化調整区域か)を事前に確認する必要がある。第三に、賃借人への離作補償の算定根拠を明確にせず、金額の妥当性をめぐって賃借人との交渉が長期化する失敗がある。第10条のように算定根拠を明記し、地域の慣行的な基準を参考にすることが望ましい。
第四に、農用地区域内(農業振興地域整備計画において農用地区域として指定された農地)の農地について、通常の転用許可手続だけでは足りず、あらかじめ農用地区域からの除外手続(農振除外)を経る必要があることを見落とし、想定より許可取得に長期間を要してしまう失敗もある。対象農地が農業振興地域内の農用地区域に該当するかを市町村の農業担当課で事前に確認し、除外手続が必要な場合はそのスケジュールを織り込んでおく必要がある。第五に、太陽光発電設備用地への転用のように、地目変更後の土地の利用形態によっては、農地法の許可に加えて森林法や砂防法等の他の規制法令の適用も検討すべき場合があるにもかかわらず、農地法の手続のみで完結すると誤解してしまう失敗もある。
農地転用の許可要件や離作補償の相場は地域や農地の区分によって異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。農業委員会への事前確認もあわせて行うことが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象農地が市街化区域内(届出制)か市街化調整区域内(許可制)かを確認したか
- [ ] 転用計画が農地法第4条(所有者自らの転用)か第5条(権利移転を伴う転用)のいずれに該当するかを確認したか
- [ ] 賃借人(耕作者)がいる場合、賃貸借契約の合意解約及び離作補償について合意したか
- [ ] 離作補償の算定根拠及び支払時期を明確にしたか
- [ ] 許可取得前の造成工事着手を禁止する条項を設けたか
- [ ] 許可申請に必要な書類(承諾書、印鑑証明書等)を準備したか
- [ ] 不許可の場合の金銭返還条項を明記したか
- [ ] 転用後の用途制限及び原状回復義務について確認したか
- [ ] 農用地区域内に該当する場合、農振除外手続の要否及びスケジュールを確認したか
- [ ] 転用後の利用形態に応じ、農地法以外の規制法令(森林法等)の適用の要否を確認したか