自社ブランド商品を相手方の設計込みで製造してもらうODM契約書。民法第632条の請負規定と下請法の製造委託規制を踏まえ、仕様・知的財産の帰属を定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
ODM契約書
第1部: 書式本文
ODM契約書
【委託者商号】(以下「委託者」という。)と【ODMメーカー商号】(以下「受託者」という。)は、受託者の設計・開発機能を活用した製品の企画開発及び製造委託に関し、以下のとおりODM契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的)
本契約は、委託者が自社ブランドで販売する製品(以下「本製品」という。)について、受託者が委託者から提示される企画コンセプトに基づき設計・開発(以下「開発業務」という。)を行い、これを踏まえて製造・供給することに関する権利義務を定めることを目的とする。
第2条(定義)
(1)「企画開発資料」とは、本製品の意匠図、回路図、部品表、3Dデータ、試作品その他開発業務の過程で作成される資料及び物品をいう。 (2)「委託者提供情報」とは、委託者が受託者に提示する企画コンセプト、ブランドガイドライン、市場要求仕様をいう。 (3)「金型等」とは、本製品の製造に用いる金型、治具その他の製造用具をいう。
第3条(開発業務の委託)
- 委託者は、受託者に対し、委託者提供情報に基づく本製品の企画開発業務を委託し、受託者はこれを受託する。
- 受託者は、開発業務の進捗(設計案、試作品の完成時期等)について、委託者に定期的に報告する。
第4条(仕様確定手続)
- 受託者は、試作品の提示と併せて、量産仕様書案を委託者に提出する。
- 委託者は、量産仕様書案の内容を確認し、承認又は修正指示を書面により受託者に通知する。
- 量産は、委託者が量産仕様書を承認した後に開始する。
第5条(知的財産権の帰属)
- 企画開発資料に関する著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む。)、意匠登録を受ける権利その他の知的財産権は、量産仕様書の承認時をもって委託者に帰属する。ただし、受託者が本契約締結以前から保有していた汎用的な技術、標準部品の設計及びノウハウについては、受託者に留保する。
- 受託者は、委託者提供情報及び企画開発資料を、本契約に基づく本製品の開発・製造以外の目的に使用し、又は第三者に開示してはならない。
- 委託者が受託者に提供する商標、ブランドガイドラインその他委託者の権利に属する情報について、受託者は本契約の目的の範囲内でのみ使用できるものとする。
第6条(金型等の取扱い)
- 金型等の製作費用は、別紙のとおり委託者が負担する。
- 前項の場合、金型等の所有権は委託者に帰属する。ただし、受託者は本契約の存続中、本製品の製造のために金型等を占有・使用することができる。
- 受託者は、金型等を善良な管理者の注意をもって保管し、委託者の承諾なく他の製品の製造に使用してはならない。
第7条(製造及び供給)
- 委託者は、個別の発注書により本製品の発注を行い、受託者は発注書に記載された納期までに本製品を供給する。
- 製造委託料(単価)及び最低発注数量は別紙のとおりとする。
第8条(下請代金の支払期日)
委託者は、下請代金支払遅延等防止法第2条の2の規定に従い、本製品の給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に定めた支払期日までに製造委託料を支払う。
第9条(競合品開発の制限)
- 受託者は、本契約の存続期間中、委託者の書面による事前承諾なく、企画開発資料を利用又は参考にして、委託者の競合事業者向けに実質的に類似する製品の設計・製造を行ってはならない。
- 前項の制限に対する対価(独占発注の保証等)は別紙のとおりとする。
第10条(品質保証及び検査)
受託者は、量産仕様書に定める品質基準に従い本製品を製造し、委託者は納品後【 】日以内に検査を行い、不合格品がある場合は速やかに受託者に通知する。
第11条(製造物責任)
本製品の欠陥に起因して第三者に損害が生じた場合の内部的な負担割合は、設計に起因する欠陥については受託者が、委託者提供情報自体に内在する欠陥については委託者が、それぞれ負担することを原則とし、詳細は協議のうえ定める。
第12条(秘密保持)
委託者及び受託者は、本契約の履行を通じて知り得た相手方の営業上・技術上の秘密情報を、本契約の目的以外に使用し、又は第三者に開示してはならない。本条の義務は契約終了後【 】年間存続する。
第13条(契約期間及び解除)
本契約の有効期間は締結日から【 】年間とし、期間満了の【 】か月前までに別段の意思表示がない限り同一条件で更新する。当事者は、相手方に重大な契約違反があり、催告後【 】日以内に是正されない場合、本契約を解除できる。
第14条(反社会的勢力の排除)
委託者及び受託者は、自己が反社会的勢力に該当せず、反社会的勢力と関係を有しないことを表明し、保証する。
第15条(合意管轄)
本契約に関する紛争については、【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 委託者(ブランド側)向け修正パターン
A-1. 第5条(知的財産権の帰属)の帰属時期を早める
「企画開発資料に関する知的財産権は、作成の都度、委託者に帰属する。」に修正し、量産仕様書承認前の試作段階の成果物についても委託者帰属とする。開発途中で契約が破談した場合の資料流出リスクを抑える狙いがあるが、受託者にとっては投下した開発コストの回収手段が限定されるため、開発協力金等の対価設定とセットで検討する必要がある。
A-2. 第9条(競合品開発の制限)の範囲を拡張
「受託者は、本製品と同一のカテゴリーに属する製品について、委託者以外の事業者からの開発委託を一切受けてはならない。」とし、カテゴリー単位での専属義務に拡張する。対価なくこの修正のみを行うと、下請法上の優越的地位の濫用や独占禁止法上の拘束条件付取引に該当するおそれがある。
B. 受託者(ODMメーカー)向け修正パターン
B-1. 第5条(知的財産権の帰属)に留保技術の範囲を明確化する条項を追加
「受託者が本契約締結前から保有し、又は本契約の履行と無関係に開発した設計手法、標準部品、共通基盤技術(以下「背景技術」という。)に関する権利は受託者に留保され、委託者は本製品の範囲を超えて背景技術を利用することはできない。」との一文を加え、他案件への技術転用の余地を確保する。
B-2. 第6条(金型等の取扱い)に金型返還時の買取請求権を追加
「本契約終了時、委託者は金型等の返還を受託者に求めることができるほか、受託者は残存簿価相当額での金型等の買取りを委託者に請求できる。」との条項を加え、専用金型の陳腐化リスクを軽減する。
B-3. 第9条(競合品開発の制限)に正当な対価を明記
「委託者は、前項の制限の対価として、年間最低発注保証額【 】円を保証する。」との条項を追加し、専属義務と対価の対応関係を明確にする。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、委託者が完成品の仕様の細部までを指定するのではなく、受託者側の設計力・開発力を活用して製品を企画開発し、その成果物を量産する取引で使用する。委託者が仕様を全て確定させたうえで製造のみを委託する場合は、設計を伴わないOEM契約書の方が実態に即している。また、受託者に著作権や意匠登録を受ける権利を帰属させたい場合、本書式をそのまま用いると委託者帰属が原則となるため、修正が必要である。
根拠法令としては、開発業務の性質上、民法第632条以下の請負に関する規定が基本となる。企画開発資料のうち意匠図面や3Dデータについては著作権法上の著作物に該当し得るため、著作権法第27条(翻案権)及び第28条(二次的著作物の利用に関する権利)を含めた帰属の明記が重要である。意匠登録を受ける権利の帰属については意匠法上の扱いも踏まえる必要がある。製造委託の側面については下請代金支払遅延等防止法が適用される場合があり、支払期日(同法第2条の2)等の規制を遵守する必要がある。また、開発段階で得た営業秘密の保護については不正競争防止法上の営業秘密の要件(秘密管理性、有用性、非公知性)を意識した秘密保持条項の設計が望ましい。
実務でよくある失敗として、第一に、知的財産権の帰属時期を明記せず、量産開始後に受託者が同一デザインを競合他社にも提供してしまうケースがある。第5条のように帰属時期と対象範囲を明記することが対策となる。第二に、金型等の費用負担と所有権の帰属をリンクさせずに規定した結果、委託者が費用を負担したにもかかわらず金型の所有権や返還請求権が不明確になるケースがあり、第6条のように費用負担と所有権、保管義務を一体で規定することが望ましい。第三に、試作段階の資料の権利帰属を曖昧にしたまま量産に移行し、契約が中途解約された際に試作データの取扱いを巡って紛争になるケースがあり、開発段階ごとの権利帰属を条項上区分しておくことが有効である。
なお、競合品開発の制限は取引条件次第で独占禁止法上の問題を生じ得るため、個別事案については弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 委託者提供情報(企画コンセプト、ブランドガイドライン)の範囲を具体的に特定したか
- [ ] 企画開発資料の定義に、意匠図・3Dデータ・試作品等を漏れなく含めたか
- [ ] 知的財産権の帰属時期(作成時か量産仕様書承認時か)を明確にしたか
- [ ] 受託者の背景技術・留保技術の範囲を区別して規定したか
- [ ] 金型等の費用負担者と所有権の帰属を対応させて記載したか
- [ ] 金型等の保管義務及び目的外使用の禁止を規定したか
- [ ] 競合品開発を制限する場合、対価(独占発注保証等)を明記したか
- [ ] 支払期日が給付受領後60日以内に収まるよう設定したか
- [ ] 製造物責任に関する内部負担割合の考え方を明記したか
- [ ] 秘密保持義務の存続期間を契約終了後も設定したか
- [ ] 契約終了時の企画開発資料・試作品・金型等の返還又は廃棄の取扱いを定めたか