海外ベンダーへ開発を委託する際の契約書。準拠法・仲裁地の指定、外国為替及び外国貿易法の技術輸出規制、個人情報保護法第28条の越境移転に対応する。

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オフショア開発委託契約書

第1部: 書式本文

Offshore Software Development Agreement / オフショア開発委託契約書

【委託者名】(以下「甲」という。)と【海外受託者名・所在国】(以下「乙」という。)は、乙が甲のために行うソフトウェア開発業務(以下「本件業務」という。)の委託に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。本契約は日本語版及び【英語】版を作成する。

第1条(業務内容) 乙は、別紙【仕様書】に定める内容に従い、本件業務を遂行し、成果物(以下「本件成果物」という。)を甲に納品する。

第2条(納品及び検収) 1 乙は、別紙記載の納期までに本件成果物を甲に納品する。 2 甲は、納品後【 】営業日以内に検収を行い、その結果を乙に通知する。検収の基準及び手続の詳細は別紙【検収基準書】に定める。

第3条(準拠法) 本契約の成立、効力、履行及び解釈は、日本法に準拠し、これに従って解釈される。

第4条(裁判管轄又は仲裁) 1 本契約に関する甲乙間の紛争については、【東京地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。 2 前項にかかわらず、甲乙が別途合意する場合、当該紛争は【一般社団法人日本商事仲裁協会】の商事仲裁規則に従い【東京】を仲裁地として行う仲裁により最終的に解決するものとし、当該仲裁判断は外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(ニューヨーク条約)に基づき締約国において承認及び執行され得る。

第5条(技術提供と外国為替及び外国貿易法上の留意事項) 1 甲は、本件業務のために乙に提供する技術、設計情報、ソースコード等(以下「提供技術」という。)が、外国為替及び外国貿易法(以下「外為法」という。)及び関連法令に定める規制対象技術(同法第25条第1項に基づく技術取引規制、輸出貿易管理令別表第1及び外国為替令別表に掲げる貨物・技術等)に該当するか否かを、提供に先立ち確認する。 2 提供技術が外為法上の規制対象に該当する場合、甲は、経済産業大臣の許可その他所定の手続を要することを乙に説明し、必要な手続を履践した後でなければ提供技術を乙に提供しない。 3 乙は、提供技術を本契約の目的以外に使用せず、また甲の事前の書面による承諾なく第三国の者に再移転してはならない。

第6条(個人情報の越境移転) 1 甲が、本件業務のために乙に個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)第2条第1項に定める個人情報を含むデータ(以下「対象個人データ」という。)を提供する場合、甲は同法第28条の規律に従い、次のいずれかの措置を講じたうえで対象個人データを乙(外国にある第三者)に提供する。 一 本人からあらかじめ、外国にある第三者への提供を認める旨の同意を得ること 二 乙が、個人情報保護法が定める体制に相当する取扱体制を整備していることを確認すること(基準適合体制の整備) 三 個人情報保護委員会が指定する国・地域に乙の所在地が含まれる場合における当該指定に基づく対応 2 乙は、対象個人データを本件業務の遂行以外の目的に使用してはならず、甲が求める場合、取扱状況について報告する。 3 甲及び乙は、対象個人データの取扱いに関し、別紙【個人データ取扱いに関する覚書】を作成し、本契約の一部とする。

第7条(対価及び支払方法) 1 甲は乙に対し、本件業務の対価として金【 】【通貨単位】を、別紙記載の支払スケジュールに従い【 】(送金方法)により支払う。 2 送金に伴う銀行手数料、為替手数料その他の費用は【甲/乙】の負担とする。 3 本契約に基づく支払において源泉徴収等の税務上の取扱いが生じる場合、甲乙は適用ある租税条約及び各国税法に従って処理する。

第8条(コミュニケーション体制及び解釈の齟齬対策) 1 甲及び乙は、本件業務の主たる連絡言語を【英語/日本語】とし、重要な仕様変更、納期変更その他履行に重大な影響を及ぼす事項は書面(電子メールを含む。)により行う。 2 甲及び乙は、それぞれの標準労働日及び所在地の標準時(甲:【日本標準時】、乙:【 】)を踏まえ、定例会議の開催時刻及び緊急連絡方法をあらかじめ合意する。 3 本契約の日本語版と外国語版との間に解釈の齟齬が生じた場合は日本語版を優先する。ただし、第4条第2項の仲裁手続で使用する言語は【日本語又は英語】とする。

第9条(知的財産権) 本件成果物に関する著作権その他の知的財産権は、対価の完済を条件として甲に帰属する。乙は甲に対し、本件成果物について著作者人格権を行使しない。

第10条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の履行を通じて知り得た相手方の秘密情報(対象個人データを含む。)を、事前の書面承諾なく第三者に開示又は漏えいしてはならない。本義務は本契約終了後【3】年間存続する。

第11条(不可抗力) 天災、戦争、内乱、感染症の流行、政府による輸出入規制その他当事者の合理的支配を超える事由により本契約上の義務の履行が妨げられた場合、影響を受けた当事者は当該義務の不履行につき責任を負わない。

第12条(契約終了) 甲又は乙が本契約に違反し、相当期間の催告後も是正されない場合、相手方は本契約を解除することができる。

第13条(協議) 本契約に定めのない事項又は解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議のうえ解決する。

以上、本契約締結の証として本書を作成し、甲乙記名(署名)のうえ各自1通を保有する。

【 】年【 】月【 】日

甲(委託者) 住所: 名称: 代表者: (署名/印)

乙(海外受託者) 所在地: 名称: 代表者: (署名/印)

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 委託者向けの修正例

輸出管理確認義務の明確化 第5条第1項を次のように修正する。 「甲は、提供技術の外為法該当性について、乙への提供前に社内の輸出管理責任者による該非判定を実施し、その結果を記録として保存する。該当性が不明な場合、甲は経済産業省又は専門機関に相談のうえ判定する。」 一言解説:委託者側に該非判定の実施義務を明記し、輸出管理コンプライアンス体制の実効性を高める。

越境移転同意の取得責任 第6条第1項第一号に次の一文を追加する。 「甲は、本人の同意取得にあたり、移転先の国名及び当該国における個人情報保護制度の有無等の情報を本人に提供したうえで同意を取得する。」 一言解説:個人情報保護法第28条第2項が求める情報提供義務を具体的に落とし込み、同意の有効性を確保する。

B. 海外受託者向けの修正例

再移転制限の明確化 第5条第3項を次のように修正する。 「乙は、甲の事前の書面による承諾なく、提供技術を第三国の事業者に再委託又は再移転してはならず、輸出管理当局から提供技術に関する照会があった場合は直ちに甲に通知する。」 一言解説:再委託先への技術流出は受託者の管理責任も問われうるため、通知義務を含めて明確化しておく。

支払通貨・為替変動リスクの分担 第7条第1項に次の一文を追加する。 「支払通貨は【米ドル】とし、契約締結時の為替レートから【10】パーセントを超える変動が生じた場合、甲乙は対価の調整について協議する。」 一言解説:自国通貨での受注が多い海外ベンダーにとって、為替変動リスクの分担ルールの明記は重要な保護策となる。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

この書式を使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、日本企業が海外のベンダーに開発業務を委託する場合に用いる。委託先が日本国内に開発拠点を有し実質的に日本法人同様の管理体制下にある場合は、通常の国内向け契約書で足りる。逆に、提供技術にセンシティブな暗号技術や軍事転用可能性のある技術が含まれる場合、外為法条項だけでは不十分であり、専門家による該非判定・許可申請の要否確認を経るべきである。

根拠法令 準拠法及び紛争解決手段は当事者自治の原則により契約で指定でき、仲裁を選択する場合、ニューヨーク条約の締約国であれば仲裁判断の執行が期待できる。技術情報の提供については、外国為替及び外国貿易法第25条及び関連する輸出貿易管理令・外国為替令に基づき、居住者から非居住者への技術提供が「取引」に該当し許可を要する場合がある。海外の受託者に個人データを提供する場合は、個人情報保護法第28条が本人同意又は基準適合体制の整備等を求めており、秘密保持条項だけでは同条の要請を満たさない。

実務でよくある失敗と対策 第一に、設計情報や仕様書に技術的ノウハウが含まれるにもかかわらず、該非判定を行わないまま海外に送付してしまう失敗がある。第5条のような手続を社内プロセスに組み込むことが対策となる。第二に、開発対象に個人データが含まれる場合、外国の第三者への提供という認識が担当者に欠け、同意取得を怠るケースがある。第6条のような越境移転条項の明記が有効である。第三に、言語・タイムゾーンの違いから仕様理解に齟齬が生じ紛争化するケースがある。第8条のように優先言語版の指定及び定例連絡体制の明記が望ましい。

外為法の該非判定及び越境移転規制の適用関係は個別判断を要するため、専門家に確認のうえ契約及び社内運用を確定することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 準拠法及び紛争解決手段(裁判管轄又は仲裁)が明記されているか
  • [ ] 仲裁を選択する場合、仲裁機関・仲裁地・仲裁規則が具体的に定められているか
  • [ ] 提供技術について外為法上の該非判定を行う体制と、規制該当時の許可取得手続が定められているか
  • [ ] 提供技術の第三国への再移転制限が定められているか
  • [ ] 個人データを扱う場合、個人情報保護法第28条に基づく越境移転の根拠(同意・基準適合体制等)が明記されているか
  • [ ] 対価の通貨・送金方法・為替変動リスクの分担が明記されているか
  • [ ] 日本語版と外国語版の優先関係が定められているか
  • [ ] 主たる連絡言語及びタイムゾーンを踏まえた連絡体制が定められているか
  • [ ] 知的財産権の帰属時期及び著作者人格権の不行使が明記されているか
  • [ ] 不可抗力条項が輸出入規制等の渉外的リスクをカバーしているか