広告主が建物壁面や野立て看板に広告を掲出する際の契約書。屋外広告物法と自治体条例の許可申請、工作物の保守責任と落下事故の賠償を定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
屋外広告物の掲出に関する契約書
第1部: 書式本文
【広告主名】(以下「甲」という。)、【掲出場所の所有者名】(以下「乙」という。)及び【広告会社名】(以下「丙」という。)は、乙が所有し又は管理する建物壁面若しくは土地(以下「本物件」という。)に、丙が甲の依頼を受けて屋外広告物(以下「本広告物」という。)を掲出することに関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 本契約は、甲の広告を本物件に掲出するにあたり、乙が場所を提供し丙が施工及び維持管理を担う体制における、許可取得、工作物の保守責任及び事故発生時の賠償責任の分担を定めることを目的とする。
第2条(掲出物の仕様) 本広告物の種類、規格、意匠、設置位置及び照明の有無は、別紙仕様書のとおりとし、変更する場合は甲乙丙協議の上、書面により合意する。
第3条(許可の取得) 1. 丙は、本広告物の設置に先立ち、屋外広告物法第3条以下及び設置場所を管轄する都道府県又は市区町村の屋外広告物条例に基づく許可を取得する。 2. 丙は、許可申請に必要な本物件の使用承諾その他の資料の提供を乙に求めることができ、乙はこれに協力する。 3. 許可の更新手続及び更新に伴う手数料は、丙が自己の費用で行う。
第4条(掲出料) 甲は、乙に対し、本広告物の掲出料として月額【〇〇円】(消費税別)を、毎月末日までに翌月分を支払う。
第5条(設置工事) 1. 丙は、本広告物の設置及び撤去工事を、建築基準法その他関係法令並びに乙の定める本物件の管理規約を遵守して実施する。 2. 丙は、工事の実施前に工事内容及び工程を乙に通知し、乙の立会いを求めることができる。
第6条(保守点検義務) 1. 丙は、本広告物について、風雨、経年劣化等による損傷及び落下の危険性を確認するため、【6】か月に1回以上の定期点検を実施し、点検結果を乙に報告する。 2. 丙は、点検の結果、本広告物又はその支持部材に安全上の懸念が認められた場合、速やかに補修その他必要な措置を講じる。 3. 乙は、本物件の躯体部分について、丙が行う点検及び補修に必要な範囲で協力する。
第7条(工作物責任及び損害賠償) 1. 本広告物の設置又は保存の瑕疵により本広告物が落下し、又は倒壊する等して第三者に損害を生じさせた場合、その責任は、民法第717条に定める土地工作物責任の考え方を踏まえ、まず本広告物の占有者としての保守管理義務を負う丙が負担する。 2. 前項の事故が本物件の躯体又は基礎部分の瑕疵に起因することが判明した場合、当該部分に係る責任は乙が負担する。 3. 甲は、丙が第1項の責任を負担した場合において、その原因が甲の指示した仕様に起因するときは、丙に対する求償に応じるものとする。
第8条(保険加入) 丙は、本広告物に関する施設賠償責任保険その他の保険に加入し、その加入状況を甲及び乙に通知する。
第9条(契約期間) 本契約の有効期間は、契約締結日から【1】年間とし、期間満了の【3】か月前までにいずれの当事者からも書面による終了の申出がない場合、同一条件でさらに【1】年間更新されるものとする。
第10条(撤去及び原状回復) 本契約が終了したときは、丙は自己の費用で本広告物を撤去し、本物件を原状に回復する。
第11条(反社会的勢力の排除) 甲、乙及び丙は、自己が暴力団その他の反社会的勢力に該当しないことを表明し保証する。
第12条(解除) いずれかの当事者が本契約に違反し、相当期間を定めた催告後も是正されない場合、他の当事者は本契約を解除することができる。
第13条(協議及び管轄) 本契約に定めのない事項は甲乙丙協議の上定め、紛争が生じた場合は【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上の合意を証するため本書3通を作成し、甲乙丙記名押印の上、各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(甲) 住所:【 】 名称:【 】 代表者:【 】 印 (乙) 住所:【 】 名称:【 】 代表者:【 】 印 (丙) 住所:【 】 名称:【 】 代表者:【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 広告主向け書き換え
A-1. ブランドイメージを重視する野立て看板の掲出
第2条追加例:「意匠の変更は、掲出開始後であっても甲乙丙協議の上、【〇〇】か月に1回に限り無償で行うことができる。」 解説: キャンペーンに応じた意匠変更のニーズがある場合、変更条件をあらかじめ定めておくと追加費用交渉を避けやすい。
B. 掲出場所の所有者向け書き換え
B-1. 商業ビルの壁面に大型広告を掲出する場合
第7条2項修正例:「躯体又は基礎部分の瑕疵に起因する事故についても、乙が加入する建物総合保険による填補を優先し、填補されない部分についてのみ乙丙間で協議する。」 解説: ビルの所有者は既存の建物保険を有していることが多く、保険による填補を優先する定めにより負担の予測可能性が高まる。
B-2. 老朽化した建物への新規掲出
第6条追加例:「乙は、本物件の躯体の耐荷重及び老朽化の状況について、設置前に丙へ資料を開示する。」 解説: 躯体の耐荷重不足は落下事故の重大な原因となるため、設置前の情報開示義務を明記することが望ましい。
C. 広告会社向け書き換え
C-1. 複数の自治体にまたがる広告物の一括受注
第3条1項修正例:「丙は、設置場所ごとに適用される条例上の許可基準(意匠、高さ、照明の使用時間等)を個別に確認し、基準に適合しない仕様については甲に是正案を提示する。」 解説: 屋外広告物条例は自治体ごとに基準が異なるため、一括受注の場合は場所ごとの確認義務を明記しリスクを回避する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、広告主が建物壁面や野立て看板等の屋外広告物を第三者の所有地・建物に掲出する場合に用いる。広告主自身が所有する土地・建物に自社広告を掲出するに過ぎない場合は、社内的な工事発注契約で足り、本書式のような三者間の責任分担条項は不要である。
根拠法令 屋外広告物法第3条以下は、都道府県等が条例により屋外広告物の表示及び設置について許可制等の規制を定めることを認めており、実際の許可基準(意匠、高さ、面積、色彩等)は各自治体の条例に委ねられている。工作物の設置又は保存に瑕疵があり第三者に損害が生じた場合、民法第717条に基づき、第一次的にはその工作物の占有者が責任を負い、占有者が損害の発生防止に必要な注意をしていたときは所有者が責任を負う。屋外広告物は建物に取り付けられた「土地の工作物」として同条の適用対象となる。
実務でよくある失敗と対策 第一に、自治体条例の許可基準を確認せず着工し、後日撤去命令を受ける失敗がある。第3条のように設置前の許可取得を明確な義務として定める。第二に、落下事故時の責任分担が広告物本体と建物躯体のいずれの瑕疵かで曖昧なまま契約され、事故後に当事者間で責任のなすり合いが生じる失敗がある。第7条のように瑕疵の所在に応じた分担を明記する。第三に、定期点検の頻度や実施主体を定めず、老朽化した広告物が放置される失敗がある。第6条のように点検頻度と報告義務を具体化する。工作物責任の最終的な負担割合は事故ごとの個別事情により左右されるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 屋外広告物法及び設置場所を管轄する自治体条例の許可基準を確認したか
- [ ] 許可取得の主体(丙)及び更新手続の費用負担を明記したか
- [ ] 定期点検の頻度と点検結果の報告先を具体的に定めたか
- [ ] 落下・倒壊事故時の責任分担を広告物本体と建物躯体で区別したか
- [ ] 施設賠償責任保険等の加入状況を確認する手続を設けたか
- [ ] 設置工事における建築基準法その他関係法令の遵守を明記したか
- [ ] 契約更新及び終了時の撤去・原状回復義務を定めたか
- [ ] 意匠変更が生じた場合の手続と費用負担を定めたか
- [ ] 三者(広告主・所有者・広告会社)の役割分担が明確になっているか