楽曲を広告や店舗イベントで使う際の許諾契約書。著作権法第22条の演奏権と第23条の公衆送信権を対象に、利用形態別の対価を定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
音楽著作物利用許諾契約書
第1部: 書式本文
【著作権者・音楽出版社名】(以下「甲」という。)と【利用者名】(以下「乙」という。)とは、下記楽曲(以下「本楽曲」という。)の利用に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
記 楽曲名: 【楽曲名】 作詞者・作曲者: 【氏名】 管理状況: 【管理事業者に管理されていない直接許諾対象である旨】
第1条(目的) 本契約は、甲が本楽曲について有する著作権のうち、著作権法第22条に定める演奏権及び第23条に定める公衆送信権に基づき、乙による本楽曲の利用を許諾することを目的とする。
第2条(許諾する利用態様) 甲は乙に対し、下記の利用態様に限り本楽曲の利用を許諾する。 (1) 【店舗内BGMとしての演奏】(著作権法第22条) (2) 【テレビCM・Web広告における公衆送信】(著作権法第23条) (3) 【イベント会場での生演奏又は録音物の再生による上演】
第3条(利用期間及び地域) 1. 本許諾に基づく利用期間は、【 年 月 日】から【 年 月 日】までとする。 2. 利用地域は【日本国内】に限るものとする。
第4条(管理事業者との関係) 1. 本楽曲は、【一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)その他の著作権等管理事業者】による管理の対象となっていないことを甲は表明する。 2. 乙は、本契約に基づく利用が管理事業者による包括許諾契約の対象楽曲と重複しないよう、自らの責任において確認するものとする。
第5条(利用料) 1. 乙は甲に対し、第2条の利用態様に応じ、次のとおり利用料を支払う。 (1) 店舗BGM利用: 金【 】円(年額) (2) CM・Web広告利用: 金【 】円(利用媒体・期間ごと) (3) イベント利用: 金【 】円(1回あたり) 2. 乙は、利用料を本契約締結日から【 】日以内に、甲の指定する口座へ振り込む方法により支払う。振込手数料は乙の負担とする。
第6条(改変の制限) 1. 乙は、本楽曲を編曲、歌詞の変更その他の改変を行う場合、事前に甲の書面による承諾を得なければならない。 2. 前項の改変は、著作権法第27条に定める翻案権の対象となるため、甲の承諾は演奏権・公衆送信権の許諾とは別個に取得するものとする。 3. 甲は、著作権法第20条に定める同一性保持権に基づき、本楽曲の本質的な特徴を害する改変について異議を述べることができる。
第7条(表示義務) 乙は、本楽曲を利用するにあたり、作詞者・作曲者の氏名を、慣行に従い適切な方法で表示する。
第8条(再許諾及び目的外使用の禁止) 乙は、甲の事前の書面による承諾なく、本楽曲を第三者に再許諾し、又は第2条に定める利用態様以外の目的で使用してはならない。
第9条(利用報告) 乙は、本楽曲を利用した場合、利用の都度又は甲の求めに応じ、利用日時・利用媒体・利用回数等を記載した報告書を甲に提出する。
第10条(契約解除) 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、相当期間を定めた催告後も是正されない場合、本契約を解除できる。
第11条(協議事項) 本契約に定めのない事項及び疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議のうえ解決する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 音楽出版社向け
A-1 第5条第1項の修正例 「乙が第2条各号の利用態様を組み合わせて利用する場合(例: CMで使用した楽曲を店頭BGMとしても流す場合)、甲は各利用態様ごとの利用料を合算して請求できるものとし、いずれか一方の支払いをもって他の利用態様が許諾されたものとみなさない。」 一言解説: 利用態様ごとに演奏権・公衆送信権という異なる支分権が働くため、出版社側は態様の混同による取りこぼしを防ぐために合算請求の根拠を明記しておく必要がある。
A-2 第9条の修正例 「甲は、乙の利用実態を確認するため、乙の店舗又はウェブサイトにおける利用状況について、【年1回】立入り又は資料提出を求めることができる。」 一言解説: 管理事業者を介さない直接許諾では利用実態の監視主体が甲自身になるため、出版社は自ら確認権限を条項化しておく必要がある。
B節: 広告・イベント利用者向け
B-1 第3条第1項の修正例 「利用期間終了後も、乙が制作したCM映像等のアーカイブとしての保管及び社内資料としての閲覧は、公衆送信を伴わない限り本許諾の終了後も妨げられないものとする。」 一言解説: 広告主側としては、キャンペーン終了後の映像資産の社内利用まで許諾が切れると業務に支障が出るため、非公衆送信の範囲での保管利用を明確に切り分けておくと安全である。
B-2 第6条第1項の修正例 「乙は、広告尺の都合による楽曲の一部カット(イントロ・サビ抜粋等)については、本楽曲の同一性を著しく損なわない範囲で、甲への個別申請を要さず実施できるものとする。」 一言解説: 広告制作では尺調整のための軽微な編集が頻繁に発生するため、利用者側は都度の承諾取得が実務上のボトルネックにならないよう軽微な改変の範囲をあらかじめ合意しておくとよい。
C節: 管理外楽曲の直接許諾
C-1 第4条第1項の修正例 「甲は、本楽曲が現在管理事業者に信託されておらず、かつ本契約締結日から利用期間終了までの間、管理事業者への新たな信託を行わないことを表明し、保証する。」 一言解説: 管理外楽曲の直接許諾では、契約期間中に権利者が管理事業者に楽曲を信託してしまうと乙の利用の適法性が不安定になるため、期間中の信託禁止を明記しておくことが特に重要である。
C-2 第4条第2項の修正例 「乙は、本契約締結前に、当該管理事業者のデータベースにより本楽曲が非信託楽曲であることを確認した記録を保管するものとする。」 一言解説: 直接許諾の場合、乙が独自に非管理楽曲であることの調査を怠ると二重の利用料請求を受けるリスクがあるため、確認記録の保管を義務付けておくと紛争時の立証に役立つ。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、店舗BGMや広告、イベントといった具体的な利用場面ごとに、著作権法第22条の演奏権及び第23条の公衆送信権に基づく利用許諾を行う場合に用いる。特に、JASRAC等の著作権等管理事業者に信託されていない、いわゆる管理外楽曲について権利者から直接許諾を受ける取引を主眼としており、既に管理事業者が管理している楽曲については、当該管理事業者の定める利用許諾契約約款・使用料規程に従う必要があり、本書式で代替することはできない。
実務上よくある失敗の一つ目は、演奏権(店舗内での生演奏や再生)と公衆送信権(CM・Web配信)を区別せずに一括で「利用許諾」とだけ記載し、想定していなかった媒体での利用について許諾の有無が争いになるケースである。第2条のように利用態様を号ごとに具体的に列挙し、第5条で態様ごとの対価を分けておくことが対策となる。二つ目は、広告等で楽曲を編曲・歌詞変更する場合に、演奏権・公衆送信権の許諾のみを取得し、著作権法第27条に定める翻案権の許諾を別途取得し忘れるケースである。第6条第2項のように、改変については支分権が異なることを条項上明記し、個別の承諾取得を求める必要がある。三つ目は、管理外楽曲として直接許諾を受けたつもりが、実際には契約締結後に権利者が管理事業者へ信託しており、利用者が二重に使用料を請求されるケースであり、C節のように期間中の信託禁止や非信託の確認記録保管を条項化しておくことが有効な対策となる。
利用料の相場や管理事業者への信託状況の最新確認方法は個別の楽曲・時期によって異なるため、契約締結前に個別事案について専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本楽曲が管理事業者に信託されていない管理外楽曲であることを確認したか
- [ ] 利用態様(演奏・公衆送信・上演)を個別に列挙し、支分権ごとに整理したか
- [ ] 利用期間及び利用地域を具体的に定めたか
- [ ] 利用態様ごとの利用料及び支払方法を明記したか
- [ ] 編曲・歌詞変更等の改変について翻案権(著作権法第27条)の別途許諾を要する旨を定めたか
- [ ] 同一性保持権(著作権法第20条)への配慮条項を設けたか
- [ ] 作詞者・作曲者の表示義務を定めたか
- [ ] 再許諾及び目的外使用の禁止を明記したか
- [ ] 利用報告の頻度及び方法を定めたか
- [ ] 契約期間中に権利者が管理事業者へ信託した場合の取扱いを定めたか