親が子へ住宅資金などを貸す場面の書式。民法第587条の消費貸借として返済期間・利息・期限の利益喪失を定め、贈与認定リスクを抑えます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
親子間金銭消費貸借契約書
第1部: 書式本文
貸主〇〇〇〇(以下「甲」という。)と借主〇〇〇〇(以下「乙」という。)は、甲乙間の親子関係を踏まえ、次のとおり金銭消費貸借契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(金銭消費貸借) 甲は、乙に対し金【貸付金額】円を貸し渡し、乙はこれを【貸付目的(例:住宅取得資金)】に充てるため借り受け、これを受領した。
第2条(利息) 本件貸付金の利息は年【利率】%とする。乙は、甲に対し、毎年【利払期日】に当該年分の利息を支払う。無利息とする場合はその旨を明記する。
第3条(返済方法) 乙は、甲に対し、元金を【返済期間(例:20年)】にわたり、毎月【返済日】限り金【毎月返済額】円ずつ、甲が指定する銀行口座に振り込んで分割返済する。
第4条(期限の利益の喪失) 乙が前条の返済を2回以上怠ったとき、その他乙の資力に重大な変化が生じたときは、乙は甲からの請求により当然に期限の利益を喪失し、残債務全額を直ちに一括して弁済する。
第5条(返済状況の記録) 甲及び乙は、返済の都度、返済金額、返済日及び残元金を記載した返済記録(別紙様式)を作成し、双方で保管する。
第6条(担保) 【担保を設定する場合はその内容(不動産への抵当権設定等)を記載する。担保を設定しない場合はその旨を明記する。】
第7条(繰上返済) 乙は、甲の承諾を得て、いつでも元金の全部又は一部を繰り上げて返済することができる。
第8条(相続開始時の取扱い) 甲又は乙について相続が開始した場合、本契約に基づく債権又は債務は、それぞれの相続人に承継される。乙が甲の相続人である場合、乙の甲に対する残債務は甲の相続財産(積極財産)として遺産分割の対象となる。
第9条(贈与とみなされないための確認) 甲及び乙は、本契約が真実の金銭消費貸借であり、返済の意思及び能力を伴うものであることを相互に確認し、第2条から第5条までの条件に従って現実に返済を継続する。
【契約日】
甲: 【住所・氏名】 印 乙: 【住所・氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 貸主(親)向けの修正
A-1. 返済免除条項の分離
追加条文例:「甲は、乙の返済状況及び甲自身の資産状況を考慮し、将来、暦年贈与の非課税枠(基礎控除額)の範囲内で本件貸付金の一部について返済を免除することがある。当該免除は本契約とは別個の書面により行う。」 一言解説: 当初から返済免除を予定していると認定されると契約全体が実質的な贈与とみなされるリスクがあるため、貸主側は免除を独立した別途の意思表示として整理する修正である。
A-2. 担保設定による回収確保
追加条文例:「乙は、本件貸付金の担保として、乙が取得する【不動産の表示】に甲を抵当権者とする抵当権を設定し、その旨の登記手続に協力する。」 一言解説: 高額な貸付の場合、貸主側は返済の実効性を担保するため不動産への抵当権設定を求める修正を行う。
B. 借主(子)向けの修正
B-1. 返済負担に配慮した返済計画の見直し条項
追加条文例:「乙の収入状況に大きな変動が生じた場合、甲及び乙は協議の上、返済期間の延長又は毎月の返済額の見直しを行うことができる。」 一言解説: 長期の分割返済では借主の収入変動リスクがあるため、借主側は返済条件の見直し余地を確保する修正を行う。
B-2. 無利息とする場合のみなし贈与への対応
修正後:「本件貸付金は無利息とするが、乙は、無利息であることにより経済的利益を得たとみなされる場合があることを認識し、必要に応じて贈与税の申告について税理士に確認する。」 一言解説: 無利息貸付は経済的利益の供与としてみなし贈与課税の対象となる可能性があるため、借主側はそのリスクを認識している旨を明記する修正である。
B-3. 公正証書化による返済意思の明確化
追加条文例:「甲及び乙は、本契約を強制執行認諾文言付きの公正証書として作成することができるものとし、その場合の作成費用は【負担者】が負担する。」 一言解説: 契約を公正証書として作成すること自体が真実の消費貸借であることの補強材料となるため、借主側からも積極的に公正証書化を提案する修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、親が子に住宅取得資金や事業資金などを貸し付ける場面で用いる。返済の意思や能力を伴わず、実質的に無償で資金を移転する場合には、本書式ではなく贈与契約書を用いるべきであり、贈与であるにもかかわらず金銭消費貸借契約書の体裁を整えることは税務上のリスクを伴う。また、住宅取得等資金の贈与税非課税措置の適用を受ける目的で贈与を行う場合にも、本書式は用いず贈与契約書によるべきである。
根拠法令 金銭消費貸借契約は、民法第587条により、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって成立する契約であり、書面によらない場合でも当事者の合意と金銭の授受により成立する諾成的な消費貸借(民法第587条の2)としての構成も可能である。親子間の金銭消費貸借について税務上特に問題となるのは、返済の実態がない場合や、無利息・低利息である場合に、相続税法第7条又は第9条に基づき、経済的利益の供与としてみなし贈与課税の対象となりうる点である。国税庁の実務上の取扱いでは、返済期間、返済方法、利息の有無、担保の有無、返済の実績等を総合的に考慮して真実の消費貸借か贈与かを判断するとされている。
実務でよくある失敗と対策 第一に、契約書は作成したものの実際には一度も返済が行われず、形式のみの契約として税務署から贈与と認定される失敗がある。第5条のように返済記録を作成・保存し、実際に返済を継続することが対策となる。第二に、無理な返済計画を設定した結果、借主が途中で返済不能となり、結果的に免除せざるを得なくなって当初からの贈与と疑われる失敗がある。B-1のように借主の収入状況に応じた返済計画の見直し規定を設け、無理のない返済額を設定することが対策となる。第三に、無利息貸付について贈与税の申告が必要となる可能性を認識せず、後日追徴課税を受ける失敗がある。B-2のようにみなし贈与のリスクを契約上でも共有し、税理士への確認を促すことが対策となる。
真実の消費貸借契約と認められるかどうかは個別の返済実績や利率設定によって左右されるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。特に高額の貸付を行う場合には、公正証書の作成や不動産担保の設定など、第三者にも客観的に確認できる形で契約の実在性を裏付けておくことが、後の税務調査や相続時の紛争予防の両面で有効である。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 貸付金額、利率、返済期間及び返済方法を具体的に定めたか
- [ ] 借主に現実の返済能力があることを確認したか
- [ ] 返済記録を作成・保存する仕組みを設けたか
- [ ] 無利息又は低利息とする場合、みなし贈与課税のリスクを確認したか
- [ ] 担保設定の要否を検討したか
- [ ] 期限の利益喪失事由を定めたか
- [ ] 返済条件の見直し(返済猶予・期間延長)に関する規定を設けたか
- [ ] 貸主又は借主に相続が開始した場合の債権債務の承継関係を確認したか
- [ ] 将来の返済免除を予定する場合、本契約とは別書面で行う整理をしたか
- [ ] 贈与税の申告要否について税理士への確認を検討したか