非正規社員の待遇差を点検する企業向け。手当や福利厚生ごとの支給理由を定め、パートタイム・有期雇用労働法第8条・第9条の同一労働同一賃金に対応します。

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パート・有期雇用労働者均衡待遇規程

第1部: 書式本文

第1条(目的) 本規程は、株式会社【会社名】(以下「会社」という。)におけるパートタイム労働者及び有期雇用労働者(以下「短時間・有期雇用労働者」という。)の賃金、賞与、手当、教育訓練、福利厚生施設の利用その他の待遇について、通常の労働者との間に不合理と認められる相違を設けないための基準を定め、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パート有期法」という。)第8条及び第9条の趣旨に沿った運用を図ることを目的とする。

第2条(定義) 本規程において「通常の労働者」とは、期間の定めのない労働契約を締結し、かつ、所定労働時間がフルタイムである従業員をいう。「短時間・有期雇用労働者」とは、1週間の所定労働時間が通常の労働者に比べて短い者、又は期間の定めのある労働契約を締結している者をいう。

第3条(適用範囲) 本規程は、会社に雇用される短時間・有期雇用労働者のすべてに適用する。ただし、高度専門職として別個の待遇体系を適用される者及び定年後継続雇用者については、別に定める規程による。

第4条(基本給の決定) 短時間・有期雇用労働者の基本給は、職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう。以下同じ。)、職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情のうち当該待遇の性質及び目的に照らして適切と認められるものを考慮して決定する。会社は、通常の労働者と職務の内容が同一であり、かつ雇用関係が終了するまでの全期間において職務の内容及び配置の変更の範囲が同一であると見込まれる短時間・有期雇用労働者については、基本給の決定において通常の労働者と差別的取扱いをしてはならない(パート有期法第9条)。

第5条(賞与) 賞与は会社の業績に対する労働者の貢献度に応じて支給することを基本とし、職務の内容及び人材活用の仕組み等が通常の労働者と同一と認められる短時間・有期雇用労働者については、通常の労働者の支給基準に準じて算定する。前項によらない場合であっても、貢献度、勤続期間及び所定労働時間の比率等を考慮し、不合理な相違が生じないよう配慮する。

第6条(諸手当) 1 通勤手当は通勤に要する実費を基準とし、短時間・有期雇用労働者にも通常の労働者と同一の基準で支給する。 2 皆勤手当、精皆勤手当及び食事手当は、労務の提供状況又は勤務時間中の食費負担という支給趣旨に照らし、短時間・有期雇用労働者にも同一の支給要件を適用する。 3 役職手当その他職務に伴う手当は、当該職務に現に従事する場合に限り、通常の労働者と同一の基準により支給する。

第7条(退職金) 退職金は長期継続勤務に対する功労報償及び賃金の後払いという趣旨に基づき支給する。有期雇用労働者について、契約更新により通算勤続年数が通常の労働者の退職金算定期間と実質的に相違しないと認められる場合は、当該通算勤続年数を考慮した算定を行う。

第8条(福利厚生施設) 給食施設、休憩室及び更衣室については、短時間・有期雇用労働者にも通常の労働者と同一の利用機会を与える。

第9条(教育訓練) 職務の遂行に必要な技能又は知識を習得させるための教育訓練であって、現に従事する職務の内容が同一であることを理由に通常の労働者に実施するものについては、当該職務の内容と同一の職務に従事する短時間・有期雇用労働者にも実施する。

第10条(待遇の相違の内容及び理由の説明) 1 会社は、短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由について、比較対象となる通常の労働者を明示した上で説明する(パート有期法第14条第2項)。 2 会社は、前項の説明を求めたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対し不利益な取扱いをしてはならない。

第11条(苦情処理) 待遇に関する苦情については【人事部】に設置する相談窓口において受け付け、事実関係を確認の上、必要に応じて是正措置を検討する。

第12条(規程の見直し) 会社は、職務の内容、人材活用の仕組みの変更その他の事情の変化に応じて、本規程の内容を定期的に点検し、必要な改定を行う。

第13条(雑則) 本規程に定めのない事項については、就業規則その他の社内規程の定めるところによる。

附則 本規程は【年】年【月】月【日】日から施行する。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 多店舗小売業向け

店舗ごとに異動範囲や職務内容が大きく異なる小売業では、店舗限定の短時間・有期雇用労働者と、複数店舗を統括する通常の労働者との間で「人材活用の仕組み」の相違が待遇差の説明根拠になりやすい。

修正条文例(第4条に追加) 「前項の判断にあたっては、転勤及び他店舗への応援勤務の有無並びに店舗運営に関する裁量権の範囲を、人材活用の仕組みの相違を基礎づける事情として考慮する。」

一言解説: 単に雇用形態の違いのみを理由とせず、転勤・応援勤務の可能性という具体的な相違点を条文上に明記することで、第10条の説明義務への対応が容易になる。

B. 製造派遣併用企業向け

自社の有期雇用労働者と派遣労働者が混在する製造現場では、労働者派遣法第30条の3(派遣先均等・均衡方式)又は第30条の4(労使協定方式)との重複適用を避ける整理が必要になる。

修正条文例(第3条に追加) 「派遣労働者については、派遣元事業主との間で締結される労働者派遣契約及び労使協定の定めるところによるものとし、本規程は適用しない。」

一言解説: 自社雇用の有期社員と派遣先で受け入れる派遣社員の待遇基準を同一条文で扱うと説明責任の所在が不明確になるため、適用範囲を明示的に切り分ける。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、パートタイム労働者又は有期雇用労働者を雇用する企業が、待遇差の点検及び是正の社内基準として整備する場面で使用する。すでに労働協約や労使委員会決議により賃金制度全体を再設計済みの企業では、本書式をそのまま流用せず、既存制度との整合性を個別に検討する必要がある。

根拠法令は、パート有期法第8条(不合理な待遇差の禁止、均衡待遇)及び第9条(差別的取扱いの禁止、均等待遇)である。第8条は基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて個別に不合理性を判断する規定であり、待遇項目を一括りに比較することは許されない。厚生労働省が公表する「同一労働同一賃金ガイドライン」も、通勤手当、賞与、退職金等の待遇項目ごとに考慮すべき事情を示しており、条文起案の際の参照が望ましい。

実務でよくある失敗の一つは、待遇差の理由を雇用区分の違いとしてのみ説明し、職務内容や人材活用の仕組みの相違という客観的事実を示さないことである。第10条のような説明義務条項を設けても、実際の説明資料が伴わなければ紛争予防効果は限定的である。対策として、待遇項目ごとに比較対象労働者との相違点を一覧化した資料をあらかじめ整備しておくことが望ましい。

二つ目の失敗は、退職金や賞与を通常の労働者のみに支給する取扱いを、理由を示さないまま条文化することである。裁判例の傾向を踏まえると、除外する場合であってもその制度趣旨(長期雇用を前提とした人材確保・定着策であること等)を条文又は説明資料上で具体的に示す必要がある。

なお、個別の待遇差が不合理と評価されるか否かは業種・職務実態・待遇の趣旨によって結論が異なるため、本規程の導入にあたっては個別事案について弁護士等の専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の職務内容の相違を洗い出したか
  • [ ] 人材活用の仕組み(転勤・異動・昇進の範囲)の相違を明文化したか
  • [ ] 基本給・賞与・退職金それぞれについて個別に相違の理由を検討したか
  • [ ] 通勤手当その他手当の支給趣旨ごとに待遇差の要否を確認したか
  • [ ] 福利厚生施設の利用機会が短時間・有期雇用労働者にも同一に確保されているか
  • [ ] 教育訓練の実施対象から短時間・有期雇用労働者を不合理に除外していないか
  • [ ] 説明義務(パート有期法第14条)に対応する説明資料を準備したか
  • [ ] 苦情処理窓口を設置し、周知しているか
  • [ ] 派遣労働者が混在する場合、労働者派遣法上の均等・均衡方式との重複がないか
  • [ ] 同一労働同一賃金ガイドラインの該当箇所を確認したか
  • [ ] 導入前に社会保険労務士又は弁護士に条文案を確認したか