ペットの一時預かりや美容を提供する事業者と飼い主が結ぶ利用契約書。動物愛護管理法の第一種動物取扱業登録と重要事項説明、事故時の責任を規定。

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ペットホテル・トリミング利用契約書

第1部: 書式本文

【事業者商号】(以下「甲」という。)と【飼い主氏名】(以下「乙」という。)とは、乙の飼育する動物(以下「本件動物」という。)の一時預かり又は美容(トリミング)サービスの利用に関し、次のとおりペットホテル・トリミング利用契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的) 本契約は、甲が乙から本件動物を預かり、宿泊、一時預かり又はトリミング等の役務(以下「本件サービス」という。)を提供することについて、甲乙間の権利義務関係を定めることを目的とする。

第2条(甲の登録) 甲は、動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動物愛護管理法」という。)第10条の規定に基づき、【保管・訓練・貸出し・美容】を業として行う第一種動物取扱業者として都道府県知事等の登録を受けていることを表明し、登録番号及び動物取扱責任者の氏名を乙に通知する。

第3条(重要事項説明) 甲は、本契約締結に先立ち、動物愛護管理法及び関係省令に基づき、本件動物の飼養環境、給餌の方法、緊急時の対応方針、ケージその他の飼養設備の規模等を記載した書面(以下「重要事項説明書面」という。)を乙に交付し、説明を行った上で本契約を締結する。

第4条(本件動物の情報申告) 1. 乙は、本件動物の健康状態、既往症、アレルギー、ワクチン接種状況、性格上の注意点(咬癖等)を甲に正確に申告する。 2. 乙が前項の申告を怠り、又は虚偽の申告を行ったことにより本件動物又は他の動物、甲の従業員に損害が生じた場合、乙はその損害を賠償する責任を負う。

第5条(飼養施設の基準) 甲は、動物愛護管理法第21条及び関係省令に定める飼養施設の構造、規模、衛生管理等の基準を遵守し、本件動物を飼養する施設(ケージ、運動スペース等)を適切に管理する。

第6条(預かり期間及び引渡し) 1. 預かり期間は【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】から【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】までとする。 2. 乙は、預かり期間満了日に本件動物を引き取るものとし、引取りが遅延する場合は事前に甲に連絡し、延長に係る追加料金について協議する。

第7条(トリミング等の美容サービス) 1. 甲は、乙の依頼に基づき、本件動物のシャンプー、カット、爪切りその他の美容処置(以下「本件トリミング」という。)を実施する。 2. 甲は、本件動物の健康状態又は性格上、本件トリミングの実施が困難又は危険であると判断したときは、施術内容の変更又は中止を乙に提案することができる。

第8条(緊急時の対応) 1. 甲は、預かり中に本件動物が負傷し、又は体調不良となったときは、直ちに応急措置を講じるとともに、乙に速やかに連絡する。 2. 乙と連絡が取れない場合、甲は、乙があらかじめ指定した動物病院又は甲の判断する動物病院において、必要な限度で獣医療を受けさせることができるものとし、これに要した費用は乙の負担とする。

第9条(事故・逸走時の責任) 1. 甲は、預かり中の本件動物の管理について善良な管理者の注意義務を負う。 2. 甲の管理上の過失により本件動物が死亡し、負傷し、又は逃走した場合、甲はその損害を賠償する。ただし、本件動物の疾病その他乙の申告内容に起因する事故であって甲に過失がないと認められる場合はこの限りでない。 3. 甲は、本件動物同士の接触により生じた事故については、飼養施設を用途・体格に応じて区分する等の予防措置を講じた上で、なお生じた事故について、甲の管理上の過失の有無に応じて責任の範囲を判断する。

第10条(利用料金及び支払方法) 1. 本件サービスの利用料金は別紙料金表のとおりとし、乙は、本件動物の引渡し時又は甲が指定する時期に、現金又は甲の指定する方法により支払う。 2. 追加日数、特別なケア(投薬等)が生じた場合の追加料金は別紙料金表による。

第11条(キャンセル) 乙が予約後に本件サービスの利用を取り消す場合、甲は利用予定日までの期間に応じたキャンセル料を請求することができる。キャンセル料の料率は別紙のとおりとする。

第12条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団その他の反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し保証する。相手方が本条に違反した場合、催告を要せず本契約を解除することができる。

第13条(協議及び合意管轄) 1. 本契約に定めのない事項又は解釈に疑義が生じた事項は、甲乙誠意をもって協議し解決する。 2. 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上の合意を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。

【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】

(甲) 住所:【     】   商号又は名称:【     】   代表者:【     】  印

(乙) 住所:【     】   氏名:【     】  印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. ペット関連事業者向け書き換え

A-1. 高齢動物・持病のある動物を預かる場合

第8条2項修正例:「本件動物が高齢又は既往症を有する場合、乙は、緊急時に受診させる動物病院及び許容される医療措置の範囲(延命治療の可否を含む。)をあらかじめ書面で指定するものとし、甲は当該指定の範囲内で対応する。」 解説: 高齢・持病動物は預かり中の急変リスクが高く、事業者が独断で高額な延命治療を行い費用負担が争いになることを避けるため、事前指定の仕組みを設ける。

A-2. 多頭飼育の動物を同時に預かる場合

第9条3項修正例:「乙が複数の本件動物を同時に預ける場合、甲は原則として個体ごとに飼養施設を分離し、乙の事前の同意がある場合に限り同一施設内での飼養を行う。」 解説: 多頭飼育では動物同士の接触事故が生じやすく、分離飼養を原則とすることで甲の管理責任の範囲を明確にできる。

B. 飼い主(利用者)向け書き換え

B-1. 高齢動物・持病のある動物を預ける場合

第9条2項修正例:「本件動物の疾病に起因する事故であっても、乙が申告した既往症の内容から通常予見し得た症状について甲が適切な観察を怠ったことに起因する場合は、甲は損害賠償責任を負う。」 解説: 「持病があるから事業者は一切責任を負わない」との免責では飼い主に酷であり、通常の観察義務違反があれば責任を問える余地を残す。

B-2. トリミング中の事故を懸念する場合

第7条2項追加例:「甲は、本件トリミングの実施中又は実施後に本件動物に異常を認めたときは、施術を中断し、直ちに乙に連絡した上で必要な処置を講じる。」 解説: トリミング中の負傷や体調急変はしばしば問題化するため、異常発見時の中断・連絡義務を明記し初動対応を担保する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、ペットホテル、一時預かり施設又はトリミングサロンを営む事業者が、飼い主から動物を預かり、又は美容処置を行う場合に用いる。動物の売買や譲渡を内容とする取引には本書式はなじまず、動物取扱業のうち販売を行う場合は別途重要事項説明の内容が異なるため、業態(保管・美容・販売等)に応じた書式を選択する必要がある。

根拠法令及び留意点 動物愛護管理法第10条は、動物の保管、貸出し、訓練、展示、美容(トリミング)等を業として行う者に対し、都道府県知事等への第一種動物取扱業の登録を義務付けている。無登録での営業は同法上の規制対象となるため、第2条で甲の登録を確認する。同法及び関係省令は、登録事業者に対し、動物の飼養状況等を記載した書面を用いた事前説明を求めており(いわゆる重要事項説明)、第3条はこれに対応する。同法第21条は、飼養施設の構造・規模等について基準を定めることを求めており、環境省令(動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目を定める省令)に具体的基準が置かれている。預かり中の事故責任については動物愛護管理法に直接の定めはなく、受寄者としての善管注意義務(民法第400条、第659条参照)に基づき整理するのが一般的であり、第9条はこの考え方による。

実務でよくある失敗と対策 第一に、重要事項説明を口頭のみで済ませ、書面での説明義務を果たさないまま契約を締結する失敗がある。第3条のように書面交付と説明を契約締結の前提として明記する。第二に、「預かり中の事故については一切責任を負わない」という全部免責の記載を用い、消費者契約法第8条により無効となるおそれのある条項を置いてしまう失敗がある。第9条のように甲の管理上の過失の有無により責任範囲を区分する。第三に、飼い主の既往症等の申告が不十分なまま預かりを開始し、緊急時の医療方針が定まらず対応が遅れる失敗がある。第4条及び第8条のように事前の情報申告義務と緊急時対応のルールをあらかじめ定める。これらは一般的な整理であり、動物種や個体の状態に応じた具体的な対応は専門家(獣医師・弁護士)に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 甲が動物愛護管理法第10条の第一種動物取扱業登録を受けていることを確認したか
  • [ ] 動物取扱責任者の氏名及び登録番号を明記したか
  • [ ] 重要事項説明書面を契約締結前に交付・説明したか
  • [ ] 本件動物の健康状態・既往症・アレルギー等の申告項目を具体的に定めたか
  • [ ] 飼養施設の基準(動物愛護管理法第21条関連省令)に適合した管理体制か確認したか
  • [ ] 緊急時の連絡フロー及び動物病院受診の判断基準を定めたか
  • [ ] 預かり中の事故・逸走時の責任分担を全部免責にせず整理したか
  • [ ] 多頭飼育・他の動物との接触に関するリスク対応を定めたか
  • [ ] キャンセル料及び延長料金の算定基準を明記したか
  • [ ] トリミング実施中の異常発生時の中断・連絡義務を定めたか