プロ選手の出場義務と報酬を定める契約書です。契約期間、年俸と出来高、肖像の利用、故障時の取扱い、契約更改の手続を規定します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
プロスポーツ選手契約書
第1部: 書式本文
プロスポーツ選手契約書
クラブ・球団:【クラブ名】(以下「甲」という。) 選手:【選手氏名】(以下「乙」という。)
甲及び乙は、乙が甲の運営する競技チームに所属し競技活動を行うことに関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 甲は乙を選手として登録し、乙は甲の指示のもと、【競技名】の試合及びこれに付随する活動に出場・従事する。
第2条(契約期間) 本契約の有効期間は、【20〇〇年〇月〇日】から【20〇〇年〇月〇日】までとする。
第3条(報酬) 1. 甲は乙に対し、年俸として金【 】円(税込み)を支払う。 2. 前項に加え、出場試合数、成績等に応じた出来高払を別紙のとおり定める。 3. 年俸の支払方法は、月割りにより毎月【 】日限り、乙の指定する口座に振り込む方法による。
第4条(専属義務) 乙は、契約期間中、甲の事前の書面による承諾なく、他のクラブ・球団のために競技活動を行い、又はこれに類する行為をしてはならない。
第5条(出場義務) 乙は、甲の指示するトレーニング、試合その他の活動に、正当な理由なく欠席・拒否してはならない。
第6条(肖像等の利用) 1. 乙は、甲が本契約に基づく所属選手としての活動に関連して、乙の氏名、肖像、経歴等を、広報・広告・商品化目的で利用することを承諾する。 2. 前項の利用に伴う対価の取扱いは別紙のとおりとする。
第7条(健康管理及び傷病時の取扱い) 1. 乙は、自己の健康管理に努め、傷病が生じた場合は速やかに甲に報告する。 2. 競技活動中の傷病について、甲が指定する医療機関での治療を原則とし、治療費の負担及び報酬の取扱いは別紙のとおりとする。
第8条(懲戒) 乙が本契約又は甲の定める規律規程に違反した場合、甲は、譴責、出場停止、契約金の一部返還、契約解除その他の懲戒を行うことができる。
第9条(契約更改) 1. 甲及び乙は、契約期間満了に先立ち、次期契約に関する協議(契約更改)を行う。 2. 契約更改が合意に至らない場合の取扱いは、所属する競技団体の統一契約書及び規約の定めによる。
第10条(移籍) 契約期間中の他クラブへの移籍については、甲乙間の合意及び所属競技団体の移籍規則に従うものとする。
第11条(契約解除) 甲及び乙は、相手方に重大な契約違反があった場合、又は乙が重大な傷病等により競技活動の継続が困難と認められる場合、本契約を解除することができる。
第12条(協議事項) 本契約に定めのない事項及び疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議のうえ、所属競技団体の規約等も踏まえて定める。
第13条(準拠法及び管轄) 本契約は日本法に準拠し、本契約に関する紛争は【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。ただし、所属競技団体の規約上、仲裁その他の紛争解決手続が定められている場合は当該手続を優先する。
甲:【 】 乙:【 】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: クラブ・球団側で規律を重視する場合
第8条を拡充し、「懲戒の種類、手続(弁明の機会の付与)、不服申立ての方法」を具体的に定める。懲戒処分の手続的正当性を確保し、後日の紛争を防ぐための修正です。
B節: 選手側の交渉力が強く、複数年契約かつ保証年俸を求める場合
第3条に「本契約に基づく年俸は、乙の傷病その他の事情にかかわらず保証されるものとする(保証年俸)」との条項を追加し、第7条の傷病時の報酬減額規定を適用しない旨を明記する。
C節: 若手選手・育成選手として契約する場合
第3条の報酬体系を「基本給+出場給」とし、第9条に「育成選手から支配下選手への昇格条件(出場試合数、成績評価等)」を追加する。
D節: 海外クラブとの移籍を視野に入れる場合
第9条・第10条に「乙が海外クラブへの移籍を希望する場合の甲の協力義務及び移籍金の分配」に関する条項を追加し、国際的な移籍規則(国際競技連盟の規則)との整合性を注記する。
E節: 代理人(エージェント)を介して契約交渉を行う場合
前文に「乙は本契約の交渉及び締結にあたり代理人【氏名・所属】を選任した」旨の記載を追加し、第12条に「代理人を通じた連絡を正式な通知として取り扱う」との連絡方法の指定を加える。代理人契約との重複や利益相反を避けるための整理も併せて行うことが望まれます。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、プロスポーツクラブ・球団が選手と競技活動に関する契約を締結する場面で使用します。多くの競技団体では独自の統一契約書様式が定められており、実際の契約締結にあたってはこれらの様式との整合性を確認する必要があります。本書式は、統一契約書がない競技や、統一契約書を補完する覚書等を作成する場面での参考として活用することを想定しています。
法的な位置づけとして、プロスポーツ選手契約は、選手が甲の指揮命令に従って役務を提供する側面から労働契約(労働基準法上の労働者)に該当するとの見解と、専門性の高い個人事業主としての業務委託契約(準委任契約)に該当するとの見解があり、競技の性質、報酬体系、指揮命令の程度等に応じて個別に判断されます。労働者性が認められる場合、労働基準法、労働契約法上の規制(解雇制限、割増賃金等)が及ぶ可能性がある一方、業務委託契約と整理される場合は民法の委任・準委任の規定が適用されます。また、専属義務や移籍制限が独占禁止法上の問題(競争制限)とならないよう、移籍の自由に対する制約は必要最小限度にとどめることが望ましいとされています。
よくある失敗として、第一に、契約の法的性質(労働契約か業務委託契約か)を意識せずに契約書を作成し、実態と契約書の記載が乖離するケースがあります。実態に即した規定とすることが対策です。第二に、懲戒条項が抽象的で、弁明の機会等の手続保障が欠けているケースです。第8条のように懲戒の手続を具体化することが有効です。第三に、傷病時の報酬減額規定が一方的で、選手側との交渉において争点となるケースです。第7条・第3条のように保証範囲を明確化することが望まれます。契約の法的性質の判断及び労働関係法令の適用の有無は、個別の事実関係により結論が異なるため、個別事案は専門家に確認することを強く推奨します。加えて、未成年選手を対象とする契約では、民法上の未成年者の行為能力の制限を踏まえ、法定代理人の同意取得や親権者との連携も契約実務上の重要な論点となります。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 所属競技団体の統一契約書・規約との整合性を確認したか
- [ ] 契約の法的性質(労働契約か業務委託契約か)について実態に即した記載になっているか
- [ ] 報酬体系(年俸・出来高・保証範囲)を明確にしたか
- [ ] 専属義務・移籍制限が独占禁止法上問題とならない範囲にとどまっているか
- [ ] 肖像等の利用範囲及び対価の取扱いを明記したか
- [ ] 傷病時の治療費負担及び報酬減額の有無を明確にしたか
- [ ] 懲戒条項に手続的保障(弁明の機会等)を設けたか
- [ ] 契約更改・移籍時の取扱いを規約と整合させたか
- [ ] 契約解除事由を具体的に定めたか
- [ ] 未成年選手の場合、法定代理人の同意の要否を確認したか
- [ ] 代理人(エージェント)が関与する場合の連絡方法・利益相反対応を確認したか
- [ ] 出来高払の算定基準(試合数・成績評価等)を具体的に定めたか