販売実績に応じて支払うリベートや販売奨励金の条件を定める覚書。独占禁止法第2条第9項および流通・取引慣行ガイドラインを踏まえ、算定基準を透明化します。

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リベート・販売奨励金に関する覚書

第1部: 書式本文

〇〇株式会社(以下「甲」といい、リベート・販売奨励金を支給するメーカー・供給者を指す。)と△△株式会社(以下「乙」といい、これを受領する販売店を指す。)は、甲乙間の【原契約名称】に基づく取引に関し、リベート及び販売奨励金の支給条件について次のとおり合意する(以下「本覚書」という。)。

第1条(目的) 本覚書は、乙の対象製品に係る販売実績に応じて甲が乙に支給するリベート及び販売奨励金(以下総称して「本奨励金」という。)の算定基準及び支給手続を明確にし、算定過程の透明性を確保することを目的とする。

第2条(本奨励金の種類) 本奨励金は、次の各号に区分する。 (1) 数量リベート:一定期間の累計購入数量に応じて支給するもの (2) 達成率リベート:甲乙合意した販売目標の達成率に応じて支給するもの (3) 販売奨励金:甲が実施する販売促進施策(陳列協力、販売員教育、店頭販促等)への協力に対して支給するもの

第3条(算定基準の開示) 甲は、本奨励金の算定基準(算定式、単価、達成率の区分、支給率の段階等)を別紙「リベート算定基準表」として乙に開示し、当該基準は甲乙が別途合意して改定しない限り、対象期間中変更しない。

第4条(算定期間) 本奨励金の算定期間は、【西暦年月日】から【西暦年月日】までの期間とし、以後【四半期・半期・年度】ごとに区切って算定する。

第5条(支給金額の算定及び通知) 1. 甲は、各算定期間終了後【 】日以内に、算定基準表に基づき本奨励金の金額を算出し、算定根拠(購入数量、達成率、適用単価等の内訳)を付して乙に通知する。 2. 乙は、前項の算定根拠に疑義がある場合、通知受領後【 】日以内に甲に説明を求めることができ、甲はこれに誠実に対応する。

第6条(支給方法及び支払期日) 本奨励金は、算定金額確定後【 】日以内に、乙が指定する銀行口座への振込み又は次回発注分の代金との相殺により支給する。

第7条(算定基準の変更手続) 甲が算定基準を変更しようとする場合、変更予定日の【 】か月前までに乙に通知し、乙の意見を聴取する機会を設けるものとする。算定期間の途中における遡及的な不利益変更は行わない。

第8条(取引先による差異の説明) 甲は、乙と同種の取引条件にある他の販売店との間で本奨励金の算定基準に差異を設ける場合、当該差異が販売数量、取引条件、コスト構造等の合理的な相違に基づくものであることを乙の求めに応じて説明する。

第9条(記録の保存) 甲及び乙は、本奨励金の算定根拠となる資料を、算定期間終了後【 】年間保存する。

第10条(対象製品の再販売価格への不干渉) 本奨励金の支給は、乙による対象製品の販売価格の決定を拘束するものではなく、甲は乙の販売価格に関与しない。

第11条(有効期間) 本覚書の有効期間は、【西暦年月日】から【 年間】とする。

第12条(準拠法及び管轄裁判所) 本覚書は日本法に準拠し、本覚書に関する紛争については【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第13条(協議) 本覚書に定めのない事項については、甲乙誠実に協議の上、解決を図るものとする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 支給するメーカー(甲)向け

メーカー側は、算定基準の開示範囲を過度に広げたくない一方、透明性を欠くと後述の不公正な取引方法の評価リスクが高まるため、開示の粒度をコントロールしつつ説明義務を果たす工夫が求められます。

第3条の後に次を追加する例: 「2. 甲は、算定基準表のうち競争上の機微情報(他の販売店に対する支給条件との比較情報を含む。)を除き、乙からの求めに応じて算定過程の合理性を説明するものとする。」

一言解説:全ての情報を開示するのではなく、機微情報を除外しつつ「合理性の説明義務」を負う形にすることで、メーカー側の情報管理上の懸念と透明性確保の要請とのバランスを取る条項例です。

B. 受領する販売店(乙)向け

販売店側は、算定基準が恣意的に変更されたり、他の販売店との待遇差が不透明なままにされたりしないよう、説明請求権と変更手続の厳格化を求めることが重要です。

第7条を次のように差し替える例: 「甲が算定基準を変更しようとする場合、変更予定日の3か月前までに乙に通知し、乙が変更内容について異議を述べたときは、甲乙協議の上で変更の要否及び内容を決定する。協議が整わない場合、従前の算定基準を当該算定期間中は維持する。」

一言解説:通知だけでなく「異議があれば協議し、整わなければ従前基準を維持する」という手続を組み込むことで、販売店側の予見可能性と交渉力を確保します。特に達成率リベートのように販売目標の設定次第で金額が大きく変動する類型では、目標設定プロセスへの関与を明記しておくことが望ましいです。

第3部: リベート・販売奨励金覚書の書き方と法的ポイントの解説

使う場面 メーカーが販売店の販売実績や販売促進協力に応じてリベート・奨励金を支給する継続的取引において、算定基準・支給手続をあらかじめ明確化し、後日の紛争や不透明な運用を防止したい場合に用います。数量リベート、達成率リベート、販促協力に対する奨励金など、複数の類型が混在するケースを想定した書式です。

使ってはいけない場面 本奨励金の支給を通じて、実質的に販売店の販売価格や取扱商品構成を拘束する目的で用いる場合には、本書式では対応が不十分であり、再販売価格の拘束や排他条件付取引など別の類型の規制が問題となる可能性があるため、目的に応じた別途の検討が必要です。また、リベートの算定基準を秘匿したまま裁量的に支給額を決定する運用を前提とする場合、本書式が求める透明性確保の趣旨に反するため使用を避けるべきです。

根拠法令 リベート・販売奨励金の支給それ自体は適法な販売促進手法ですが、その運用いかんによっては私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)第2条第9項各号が定める不公正な取引方法に該当するおそれがあります。具体的には、算定基準が不透明・恣意的で、特定の販売店を優遇又は冷遇する目的で運用される場合には、同項第6号を受けた一般指定第4項(取引拒絶)や優越的地位の濫用(同項第5号)の問題が生じ得ます。また、リベートの支給を条件として販売店の販売価格を事実上拘束する運用は、再販売価格の拘束(同項第4号)に該当するおそれがあります。公正取引委員会「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」は、リベートの供与について、算定基準が明確でなく取引先によって差別的に運用される場合に独占禁止法上問題となり得る旨を示しており、算定基準の開示・透明化(第3条・第8条)は、こうした規制リスクを軽減するための実務上の要点です。個別のリベート制度が独占禁止法上問題となるかどうかは、市場における甲の地位や運用実態に左右されるため、専門家に確認することが望ましい。

実務でよくある失敗 1. 算定基準を口頭や社内基準のみで運用し、販売店に開示しないまま支給額を決定した結果、恣意的な運用との疑念を招くケース。第3条・第5条で算定根拠の開示・通知を明文化することが対策となります。 2. 算定期間の途中で基準を遡及的に変更し、販売店の期待していた金額を下回る支給となり紛争化するケース。第7条で遡及的不利益変更の禁止と事前協議手続を定めることが対策です。 3. 同種の取引条件にある販売店間で支給基準に差異を設けながら、その合理的根拠を説明できず、差別的取扱いとの指摘を受けるケース。第8条で合理的相違の説明義務を定めることで対応します。

第4部: 使用前チェックリスト・確認事項

  • [ ] リベート・販売奨励金の種類(数量・達成率・販促協力等)を区分して定義したか
  • [ ] 算定基準表(算定式・単価・支給率)を別紙で具体的に定めたか
  • [ ] 算定期間及び支給時期(通知期限・支払期日)を明記したか
  • [ ] 算定根拠の通知方法と、乙からの説明請求への対応手続を定めたか
  • [ ] 算定基準の変更手続(事前通知期間・遡及禁止)を明記したか
  • [ ] 他の販売店との待遇差について合理的根拠を説明する義務を定めたか
  • [ ] リベート支給が乙の再販売価格を拘束する内容になっていないか確認したか
  • [ ] 独占禁止法上の不公正な取引方法(優越的地位の濫用・取引拒絶等)に該当するリスクがないか確認したか
  • [ ] 算定根拠資料の保存期間及び保存方法を定めたか
  • [ ] 有効期間及び基準改定時の乙への影響を検討したか