重大な製品事故時の回収・告知・費用分担を定めるリコール協定書。消費生活用製品安全法第38条の重大製品事故報告と製造物責任法上の責任分担に対応します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
リコール対応に関する協定書
第1部: 書式本文
リコール対応に関する協定書
メーカー【メーカー名】(以下「甲」という。)及び流通業者【流通業者名】(以下「乙」という。)は、甲が製造し乙が販売する下記製品(以下「対象製品」という。)に重大な製品事故又はそのおそれが判明した場合の回収(リコール)対応について、以下のとおり協定を締結する。
記 製品名称:【製品名称】 販売開始時期:【時期】
第1条(目的) 本協定は、対象製品に起因する重大製品事故が発生し、又はそのおそれが判明した場合における、報告、告知、回収及び費用分担の手続を定め、迅速かつ適切な対応を可能にすることを目的とする。
第2条(重大製品事故の定義) 本協定において「重大製品事故」とは、消費生活用製品安全法第2条第6項に定める重大製品事故をいい、死亡、重傷病、後遺障害又は一酸化炭素中毒その他政令で定める事故、及び火災を含む。
第3条(発見時の報告義務) 1. 甲及び乙は、対象製品について重大製品事故の発生又はそのおそれを知ったときは、直ちに相手方に通知する。 2. 甲は、消費生活用製品安全法第38条第1項に基づき、重大製品事故が発生したことを知った日から10日以内に、主務大臣(消費者庁長官)に報告する。 3. 乙は、甲が前項の報告を行うために必要な情報(販売数量、販売時期、販売先の把握状況等)を、甲の求めに応じ速やかに提供する。
第4条(回収の要否の判断) 1. 甲及び乙は、重大製品事故の報告後、危険性の程度、対象製品の流通状況及び再発可能性を踏まえ、自主回収の要否を協議する。 2. 甲は、自主回収を実施すると判断したときは、回収計画(対象範囲、回収方法、告知方法、実施期間)を策定し、乙に通知する。
第5条(告知及び公表) 1. 対外的な公表及び消費者向け告知は、甲が主体となって行う。乙は、自らの店舗、ウェブサイトその他の顧客接点において、甲が定めた告知文言及び方法に従い、告知に協力する。 2. 乙は、甲の事前の承諾なく、独自の文言による公表又は報道対応を行ってはならない。ただし、法令又は監督官庁の要請に基づく場合はこの限りでない。
第6条(店頭在庫及び販売停止) 1. 乙は、回収決定の通知を受けたときは、直ちに対象製品の店頭陳列及び販売を停止し、在庫を隔離保管する。 2. 乙は、隔離保管した在庫の数量を甲に報告し、甲の指示に従い返送又は廃棄する。
第7条(消費者への返金・交換対応) 1. 消費者から対象製品の返品、交換又は返金の申出があった場合、乙は、甲が定める回収対応マニュアルに従い一次窓口として対応する。 2. 乙が消費者に返金又は代替品を提供した場合、甲は、乙に対しその実費相当額を補償する。
第8条(費用負担) 1. 回収に要する費用(告知費用、返送費用、返金・交換費用、廃棄費用及び在庫評価損を含む。)は、甲が負担する。 2. ただし、乙の保管方法の不備、表示の無断変更その他乙の責めに帰すべき事由により事故が拡大した場合、その拡大部分に対応する費用は乙が負担する。 3. 乙が回収対応のために要した人件費及び店舗運営上の付随費用については、甲乙協議の上で別途定める。
第9条(記録の保存) 甲及び乙は、回収対応に関する記録(報告書、告知文書、返金記録等)を、回収完了後【5】年間保存する。
第10条(再発防止) 甲は、事故原因の調査結果及び再発防止策を乙に開示し、乙は、必要に応じて販売時の注意喚起等の協力を行う。
第11条(協議事項) 本協定に定めのない事項については、甲乙誠実に協議の上、これを解決する。
以上を証するため、本協定書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。
【作成日】
甲(メーカー) 住所: 名称: 代表者: 印
乙(流通業者) 住所: 名称: 代表者: 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節 メーカー(製造側)向け
流通・小売側の店舗数が多く在庫状況の正確な把握が難しい場面では、第3条の情報提供義務を強化し、報告期限を明示する。 before:「乙は、甲が前項の報告を行うために必要な情報…を、甲の求めに応じ速やかに提供する。」 after:「乙は、甲から情報提供を求められた日から【2】営業日以内に、対象製品の店舗別在庫数、販売済み数量及び判明している購入者情報を甲に提供する。乙が正当な理由なく提供を遅延したことにより甲の消費生活用製品安全法第38条の報告期限を徒過した場合、当該遅延に起因する結果について乙も応分の責任を負う。」 主務大臣への10日以内報告という法定期限がある以上、メーカーとしては流通側からの情報収集期限を具体的な日数で縛っておく必要がある。
B節 流通・小売側向け
多数のメーカーの商品を扱う小売業者の立場では、回収費用の全額をメーカーが負担することを明確化し、店舗対応の人件費についても補償対象に含める。 before:「乙が回収対応のために要した人件費及び店舗運営上の付随費用については、甲乙協議の上で別途定める。」 after:「乙が回収対応のために要した人件費、店舗内掲示物の作成費用及び顧客対応窓口の設置費用は、甲が別途定める算定基準に基づき乙に補償する。乙は、当該費用の実費を証する資料を甲に提出するものとし、甲は資料受領後【30】日以内に支払う。」 小売側は自主回収により通常営業に支障が生じるため、補償の範囲・算定基準・支払期限をあらかじめ明確にしておくことが実務上重要である。
C節 中立・折衷案
甲乙の交渉力が拮抗する取引関係では、費用負担を事故原因の分担に応じて按分する折衷条項とする。 before:「回収に要する費用…は、甲が負担する。」 after:「回収に要する費用は、事故原因の調査結果に基づき、製造上・設計上の原因に起因する部分は甲が、保管・陳列・販売方法上の原因に起因する部分は乙が、それぞれ負担する。原因の切り分けが困難な部分は甲【70】%、乙【30】%の割合で負担する。」 折衷案では、原因調査の主体(第三者機関の活用を含む)と調査結果に甲乙双方が拘束される旨をあわせて規定しておくことで、費用分担を巡る二次紛争を防止できる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、消費生活用製品を対象に、重大製品事故が発覚した際の報告・告知・回収・費用分担のルールをあらかじめ取引関係者間で取り決めておく場面で使用する。事故発生後に初めて協議を始めると、報告期限の徒過や対応の遅延により被害拡大や行政処分のリスクが高まるため、平時から取引基本契約に付随する形で締結しておくことが望ましい。他方、対象製品が消費生活用製品安全法上の消費生活用製品に該当しない産業用機械や、BtoB専用部品であって消費者への到達が想定されない場合は、本書式ではなくトレーサビリティに関する覚書やPL覚書で足りることが多い。
根拠法令は、重大製品事故の報告義務を定める消費生活用製品安全法第38条、事故情報の公表を定める同法第39条、製造物責任法第3条の無過失責任、及び消費者安全法における消費者事故等に関する通知努力義務である。輸入品を扱う場合は消費生活用製品安全法上の輸入事業者の責任にも留意する。
実務でよくある失敗として、第一に、報告義務者であるメーカーが流通側からの在庫・販売情報の収集に時間を要し、消費生活用製品安全法第38条の10日以内報告に間に合わないケースがある。対策として第2部A節のように情報提供の期限を具体的日数で明記する。第二に、告知文言の作成主体が定まらず、店舗ごとに異なる告知が行われて消費者に混乱を招くケースがある。対策として第5条のように告知の主体と統一文言の使用義務を明記する。第三に、回収費用の負担範囲が事後の協議に委ねられ、小売側が立替払いをしたまま長期間精算されないケースがある。対策として第8条及び第2部B節のように補償対象と支払期限を具体的に定める。
なお、重大製品事故に該当するか否かの判断や報告期限の起算点は個別の事故態様により異なるため、個別事案は専門家に確認の上で対応することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象製品が消費生活用製品安全法上の消費生活用製品に該当するか確認したか
- [ ] 重大製品事故の定義及び該当類型を条項に明記しているか
- [ ] 消費生活用製品安全法第38条の報告期限(10日以内)を意識した情報提供期限を定めているか
- [ ] 報告義務者(甲)と情報提供義務者(乙)の役割分担を明確にしているか
- [ ] 告知・公表の主体及び統一文言の使用義務を定めているか
- [ ] 店頭在庫の隔離・返送・廃棄の手続を定めているか
- [ ] 消費者対応(返金・交換)の窓口と補償ルールを定めているか
- [ ] 回収費用の負担割合(原因別・折衷案を含む)を明確にしているか
- [ ] 記録の保存期間を定めているか
- [ ] 再発防止策の開示・共有義務を定めているか
- [ ] 複数の流通業者が関与する場合の情報集約方法を検討したか