中途採用の最終選考で候補者の前職関係者へ照会を行う場面に必要となる同意書式。個人情報保護法第27条の第三者提供と職業安定法の求職者情報の取扱いに対応。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
リファレンスチェック実施同意書
第1部: 書式本文
【提出年月日】
【会社名】 【代表者役職・氏名】 殿
【候補者住所】 【候補者氏名】 印
リファレンスチェック実施同意書
私は、貴社の採用選考にあたり、下記の内容によるリファレンスチェック(前職等の関係者への照会)の実施に同意します。
第1条(実施目的) 本リファレンスチェックは、貴社が私の採用可否及び配属等の判断を行うための参考情報を取得する目的で実施されるものであることを確認します。
第2条(照会先) 照会先は、私が指定する下記の者又は貴社が別途私に確認のうえ選定する者とします。 【照会先氏名・所属(前職の上司・同僚等)・連絡先】
第3条(照会事項) 照会事項は、私の在職期間、職務内容、業務遂行能力、勤務態度その他採用判断に必要な範囲の事項とし、思想信条・信教・支持政党・出生地その他就職差別につながるおそれのある事項は含まないものとします。
第4条(実施方法) リファレンスチェックは、【貴社担当者による電話・書面照会/貴社が委託する外部調査会社を通じた照会】のいずれかの方法により実施されるものとし、実施前に照会先へ本人の同意を得ていることを説明のうえ行うものとします。
第5条(結果の利用目的の限定) 貴社は、取得した情報を採用選考の目的以外に利用しないものとします。
第6条(開示請求) 私は、貴社に対し、取得したリファレンスチェックの結果について、個人情報の保護に関する法律に基づく開示請求を行うことができることを確認します。
第7条(同意の撤回) 私は、本同意をいつでも撤回することができ、撤回によって不利益な取扱いを受けないことを確認します。ただし、撤回時点までに実施された照会の効力には影響しません。
第8条(外部委託の場合の取扱い) 貴社が外部調査会社にリファレンスチェックを委託する場合、当該調査会社との間で個人情報の適切な管理に関する契約を締結していることを確認します。
第9条(同意の有効期間) 本同意書の有効期間は、本採用選考の終了まで、又は同意の撤回まで(撤回した場合はその時点まで)とします。
第10条(結果の取扱いに関する説明) 貴社は、リファレンスチェックの結果のみをもって不採用の決定を行う場合、その旨を私に説明するよう努めるものとします。
第11条(記録の保存・廃棄) 貴社は、取得した照会結果を採用選考終了後、社内規程に定める保存期間の経過後、適切な方法により廃棄又は消去するものとします。
第12条(照会先への説明) 貴社又は委託先は、照会先に対し、本人の同意に基づく照会であること及び回答内容が採用選考の参考情報として利用されることをあらかじめ説明するものとします。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 自社実施型
自社の人事担当者が直接照会を行う場面では、第4条を「貴社人事担当者が、私が指定した照会先に対し、電話又は書面により直接照会を行う」と具体化する。また、照会を行う担当者を限定し、社内での情報共有範囲を絞ることが望ましいため、「照会結果は採用選考に関与する担当者の範囲でのみ共有される」旨の一文を第5条に追加する。自社実施の場合は外部委託契約が存在しないため第8条は削除し、代わりに「照会内容及び結果は貴社内の採用管理台帳にのみ記録し、選考終了後は所定の保存期間経過後に廃棄する」との条項を加えることが望ましい。
B節: 外部調査会社利用型
外部調査会社を利用する場面では、第8条の外部委託に関する説明をより具体的にし、「委託先である【調査会社名】は、個人情報の保護に関する法律第27条第5項に基づく委託先として、貴社との間で秘密保持及び安全管理措置に関する契約を締結している」旨を明記する。また、候補者が委託先の名称・実施範囲をあらかじめ把握できるよう、第2条に「照会は【調査会社名】を通じて実施される」ことを明示し、委託先の連絡先・問い合わせ窓口も併せて案内することが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、中途採用における最終選考段階で、候補者の同意を得たうえで前職の関係者等に業務遂行能力や勤務実績を照会する場面で使用する。候補者の同意を得ずに独自に前職に問い合わせる場合や、SNS等の公開情報を一方的に調査する場面には、本書式で想定する枠組みが適合しないため使用すべきでない。同意を得ない照会は、後述する個人情報保護法上の第三者提供規制や職業安定法上の適正な採用選考の要請に反するおそれがある。
根拠法令としては、まず個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)第27条が、本人の同意なく個人データを第三者に提供することを原則として禁止しており、リファレンスチェックにおいて照会先(前職の上司等)から候補者本人に関する情報を取得する行為は、照会先から見れば第三者提供に該当しうるため、本人(候補者)の同意を取得しておくことが重要である。また、照会を受ける会社が候補者本人の同意を確認したうえで回答する運用が一般的である。次に、職業安定法第5条の5は、求職者等の個人情報の収集について、業務の目的の達成に必要な範囲内で行うべきことを定めており、指針(職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針)では、人種・民族・社会的身分・出生地・思想信条・支持政党・宗教等、就職差別につながるおそれのある事項を収集しないよう求めている。第3条の照会事項の限定は、この趣旨を反映したものである。
実務でよくある失敗として、第一に、候補者の同意を取得しないまま前職の同僚等に非公式に問い合わせを行い、個人情報保護法上の適正取得・第三者提供規制に抵触するリスクを負うケースがある。必ず本書式のような同意書を事前に取得することが対策となる。第二に、照会事項に思想信条や家族構成等、就職差別につながるおそれのある事項を含めてしまい、職業安定法上の指針に反するケースがある。第3条のように照会事項をあらかじめ限定列挙し、担当者向けに照会時の質問例を用意することが有効である。第三に、外部調査会社に委託する際、委託先の選定や委託契約の内容を十分に確認しないまま個人情報を提供し、委託先での漏えい等が生じた場合に監督責任を問われるケースがある。個人情報保護法第25条(委託先の監督)の趣旨を踏まえ、第8条のように委託先との契約内容を確認する条項を設けることが望ましい。
また、リファレンスチェックの結果を理由に不採用とする場合、結果の内容によっては候補者との間で認識の齟齬が生じやすい。第10条のように、結果のみをもって不採用とする場合には可能な範囲で説明に努める姿勢を示しておくことで、選考プロセス全体の透明性を確保しやすくなる。
なお、リファレンスチェックの実施範囲や個人情報の取扱いの適法性については、照会先の所在地や情報の性質により判断が異なる場合があるため、疑義がある場合は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 候補者本人からの明示的な同意を取得しているか
- [ ] 照会先の氏名・所属・連絡先が候補者の指定又は確認を経て記載されているか
- [ ] 照会事項が業務遂行能力・勤務実績等、採用判断に必要な範囲に限定されているか
- [ ] 思想信条・支持政党・出生地等、就職差別につながるおそれのある事項が含まれていないか
- [ ] 実施方法(自社実施/外部委託)が明確に記載されているか
- [ ] 外部委託の場合、委託先との個人情報管理に関する契約の有無を確認したか
- [ ] 取得した情報の利用目的が採用選考に限定されているか
- [ ] 同意の撤回に関する条項が含まれているか
- [ ] 個人情報保護法に基づく開示請求への対応方針が明記されているか
- [ ] 照会結果の保存期間・廃棄方法が社内で定められているか