賃貸借契約の連帯保証人を交代させる際の覚書。民法第465条の2の個人根保証における極度額の記載を必須とし、旧保証人の責任範囲の切分けを明確にする書式。

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連帯保証人変更に関する覚書

第1部: 書式本文

連帯保証人変更に関する覚書

貸主【貸主氏名・名称】(以下「甲」という。)、借主【借主氏名・名称】(以下「乙」という。)、旧連帯保証人【旧保証人氏名】(以下「丙」という。)及び新連帯保証人【新保証人氏名】(以下「丁」という。)は、甲乙間の下記賃貸借契約(以下「原契約」という。)における連帯保証人の変更に関し、次のとおり合意する(以下「本覚書」という。)。

第1条(原契約の特定) - 物件所在地: 【物件所在地】 - 物件名称・号室: 【建物名称・号室】 - 原契約締結日: 【原契約締結日】

第2条(丙の保証契約の終了) 1. 甲、乙及び丙は、丙が原契約について負っていた連帯保証人としての地位を、本覚書締結日をもって終了させることに合意する。 2. 丙は、本覚書締結日より前に原契約に基づき乙が甲に対して負担した債務(未払賃料、原状回復費用等が判明している場合はこれを含む。)について、なお保証責任を負う。ただし、本覚書締結日以降に生じる乙の債務については、丙は保証責任を負わない。

第3条(丁の連帯保証人就任) 1. 丁は、本覚書締結日以降、乙が原契約に基づき甲に対して負担する一切の債務について、乙と連帯して保証する。 2. 丁の保証は、民法第465条の2第1項に基づき、極度額を金【 】円と定める個人根保証契約とする。極度額の定めのない保証契約は無効であることを、甲丁は相互に確認する。

第4条(保証の対象債務) 丁が保証する債務は、原契約に基づく賃料債務、共益費、原状回復費用、遅延損害金その他原契約に起因して乙が甲に対して負担する一切の債務とする。

第5条(保証期間) 丁の保証は、原契約の存続期間中(更新後の期間を含む。)効力を有する。

第6条(情報提供義務) 1. 甲は、民法第458条の2に基づき、丁から請求があったときは、乙の原契約に基づく債務の履行状況(不履行の有無、残額等)に関する情報を提供する。 2. 甲は、民法第458条の3に基づき、乙が期限の利益を喪失したことを知ったときは、その旨を知った時から2か月以内に丁に通知する。

第7条(丙の連帯保証責任の消滅の確認) 甲は、丙が第2条に基づき保証責任を免れた債務の範囲について、丙からの請求があったときは書面で回答する。

第8条(協議事項) 本覚書に定めのない事項は、甲乙丙丁誠実に協議して定める。

以上、本覚書締結の証として本書4通を作成し、甲乙丙丁記名押印の上、各1通を保有する。

【締結日】

甲: 【住所】 【氏名・名称】 印 乙: 【住所】 【氏名・名称】 印 丙(旧保証人): 【住所】 【氏名】 印 丁(新保証人): 【住所】 【氏名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 貸主向け(保証切替え時の空白期間を防ぎたい場合)

A-1 第2条・第3条の修正例 「丙の保証責任の終了と丁の保証責任の開始は、いずれも本覚書締結日の同時刻をもって効力を生じるものとし、両者の間に保証の空白期間が生じないものとする。甲は、丁の保証契約成立(署名押印及び極度額の合意)を確認した後でなければ、丙の保証責任終了の効力を発生させない。」 一言解説: 貸主にとっては保証人が不在となる期間が生じることが最大のリスクであるため、新旧保証人の切替えを同時履行的に構成し、確認プロセスを明記しておくことが重要である。

B節: 旧保証人向け(既発生債務の範囲を明確にしたい場合)

B-1 第2条への追加確認 「丙は、本覚書締結日時点における乙の甲に対する未払債務の有無及び金額について、甲から書面での開示を受けた上で本覚書に署名するものとし、開示された金額を超える債務について、後日追加の保証責任を負わないことを確認する。」 一言解説: 旧保証人としては、離脱時点での債務残高を明確にしておかないと、後日想定外の請求を受けるリスクがあるため、書面での残高開示を条件とすることが望ましい。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、賃貸借契約の連帯保証人を、契約途中で別の人物に交代させる場面で使用する。保証会社による機関保証への切替えの場合は、保証委託契約の締結が別途必要になるため、本書式ではなく家賃債務保証委託契約書等の別の書式を用いるべきである。

根拠法令は、令和2年施行の民法改正により新設された第465条の2の個人根保証契約に関する規定である。同条は、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする根保証契約であって保証人が法人でないもの(個人根保証契約)について、極度額を定めなければその効力を生じないと規定する。賃貸借契約の連帯保証は、将来発生する賃料債務等を包括的に保証する個人根保証契約に該当するため、新たに連帯保証人となる丁との保証契約には必ず極度額を明記する必要がある。旧保証人丙との関係では、保証契約を将来に向かって終了させる合意(いわば保証契約の合意解除)であり、既に発生している債務についての保証責任は、別段の合意がない限り消滅しない。また、民法第458条の2及び第458条の3は、事業のために負担する債務についての保証人保護規定であるが、賃貸借契約の保証人にも同様の考え方が妥当する場面があり、情報提供義務や期限の利益喪失時の通知義務を保証人保護の観点から契約書に明記しておくことが望ましい。

実務でよくある失敗の一つ目は、極度額の定めのないまま新しい連帯保証人との保証契約を締結し、民法第465条の2第2項により保証契約自体が無効となることである。本書式第3条のように、極度額を具体的な金額で明記することが必須である。

二つ目の失敗は、旧保証人の保証責任がいつまで、どの範囲の債務について及ぶのかを明確にしないまま覚書を締結し、旧保証人が予期しない過去の未払債務について後日請求を受けることである。B節のように、覚書締結時点での債務残高を書面で開示し、その範囲を明確にしておく必要がある。

三つ目の失敗は、新旧保証人の切替えのタイミングにずれが生じ、一時的に連帯保証人が不在の状態が生じることである。A節のように、旧保証人の責任終了と新保証人の責任開始を同時に発生させる構成にすることが望ましい。

四つ目の失敗は、原契約が更新された場合に、新保証人の保証契約が更新後の契約にも及ぶかどうかを明確にしないまま覚書を締結し、更新時に改めて保証契約を締結し忘れることである。第5条のように保証期間が更新後の期間を含む旨を明記することに加え、更新のたびに保証人の意思を再確認する社内運用を整えておくことが望ましい。

極度額の適正な設定水準(賃料の何か月分相当とするか)や、既発生債務の範囲の確定方法については、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 旧保証人の保証責任終了の効力発生日を明記したか
  • [ ] 新保証人との保証契約に極度額(民法第465条の2)を明記したか
  • [ ] 旧保証人が既発生債務についてなお責任を負う範囲を明確にしたか
  • [ ] 覚書締結時点での乙の未払債務の有無・金額を旧保証人に開示したか
  • [ ] 新旧保証人の切替えに空白期間が生じない構成になっているか
  • [ ] 情報提供義務(民法第458条の2)・期限の利益喪失時の通知義務(第458条の3)を明記したか
  • [ ] 保証期間が原契約の更新後も継続する旨を明記したか
  • [ ] 新保証人の資力・保証意思を貸主が確認したか
  • [ ] 保証会社への切替えではなく個人保証人の交代であることを確認したか
  • [ ] 4者(貸主・借主・旧保証人・新保証人)全員の署名押印を得る運用としたか