協議離婚に際し財産分与・養育費・慰謝料などを取り決める書式。民法第763条の協議離婚と第768条の財産分与を前提に条項を網羅します。

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離婚協議書

第1部: 書式本文

夫〇〇〇〇(以下「甲」という。)と妻〇〇〇〇(以下「乙」という。)は、協議離婚に伴い、次のとおり合意(以下「本協議」という。)する。

第1条(離婚の合意) 甲及び乙は、民法第763条に基づき協議離婚をすることに合意し、【届出予定日】までに離婚届を市区町村長に提出する。

第2条(親権者の指定) 甲及び乙の間の子〇〇〇〇(【生年月日】生)の親権者を【甲・乙】と定める。

第3条(養育費) 【親権者でない側】は、【親権者】に対し、子が満【年齢】歳に達する月まで、養育費として毎月金【養育費額】円を、毎月【支払期日】限り、【親権者】が指定する銀行口座に振り込んで支払う。

第4条(面会交流) 【親権者でない側】と子との面会交流は、頻度【回数】、方法【方法】により実施するものとし、具体的な日時・場所は甲乙協議の上定める。

第5条(財産分与) 甲は、乙に対し、民法第768条に基づく財産分与として、【分与財産の内容(現金・不動産等)】を、【分与時期】までに引き渡す。

第6条(年金分割) 甲及び乙は、厚生年金保険法第78条の2に基づく年金分割について、按分割合を【割合(例:0.5)】とすることに合意し、離婚後速やかに年金事務所において標準報酬改定請求の手続を行う。

第7条(慰謝料) 【慰謝料を支払う場合】甲は、乙に対し、本件離婚に伴う慰謝料として金【慰謝料額】円を、【支払期限】までに支払う。

第8条(不動産の取扱い) 甲乙が共有し、又は【いずれか一方】が単独所有する【不動産の表示】については、【売却して分与・名義変更・賃借継続等の取扱い】とする。

第9条(公正証書化) 甲及び乙は、第3条の養育費及び第7条の慰謝料の支払を確実にするため、本協議書を強制執行認諾文言付きの公正証書とすることに合意する。

第10条(清算条項) 甲及び乙は、本協議書に定めるもののほか、本件離婚に関し何らの債権債務がないことを相互に確認する。

【協議成立日】

甲: 【住所・氏名】 印 乙: 【住所・氏名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 請求する側の配偶者向けの修正

A-1. 養育費の増額改定条項

追加条文例:「支払義務者の収入が【基準】を超えて増加した場合、又は子の進学等により特別費用が生じた場合、甲乙は養育費の増額について協議する。」 一言解説: 定額の養育費のみでは進学費用等の特別出費に対応できないため、請求者側は増額改定の余地を明記する修正を行う。

A-2. 財産分与対象財産の開示義務

追加条文例:「甲は、本協議締結にあたり、甲名義の預貯金、有価証券及び不動産の一覧を乙に開示し、その内容が真実であることを表明保証する。」 一言解説: 財産分与額の算定には相手方名義の財産の正確な把握が不可欠であるため、請求者側は開示義務と表明保証を求める修正を行う。

B. 支払う側の配偶者向けの修正

B-1. 養育費の減額改定条項

追加条文例:「支払義務者が失職、傷病その他やむを得ない事情により収入が著しく減少した場合、甲乙は養育費の減額について協議する。」 一言解説: 長期にわたる養育費支払義務を負う側にとって収入変動リスクへの手当てが必要であるため、支払側は減額改定の余地を明記する修正を行う。

B-2. 面会交流の実施と養育費支払の独立性の確認

追加条文例:「養育費の支払義務と面会交流の実施は、それぞれ独立した義務であり、一方の不履行を理由に他方の履行を拒むことはできない。」 一言解説: 面会交流が実施されないことを理由に養育費の支払を停止する運用が生じやすいため、支払側・親権者側双方の予測可能性を高めるため独立性を明記する修正である。

B-3. 財産分与の一括清算による将来の請求排除

修正後:「乙は、本協議に定める財産分与の履行をもって、将来にわたり甲に対し追加の財産分与を請求しないことを確認する。」 一言解説: 財産分与は原則として一度の合意で確定させることが望ましいため、支払側は将来の蒸し返しを防ぐ確認条項を加える修正を行う。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、夫婦が話し合いにより離婚(協議離婚)することに合意し、親権、養育費、財産分与等の離婚条件を取り決める場面で用いる。夫婦間で離婚条件について合意が成立しない場合には、本書式は使用できず、家庭裁判所における離婚調停又は離婚訴訟によることになる。また、未成年の子がいる場合、令和6年民法改正により父母双方を親権者とする共同親権の選択も可能となったため、単独親権を前提とする条項をそのまま用いるのではなく、選択した親権の形態に応じて条項を修正する必要がある。

根拠法令 協議離婚は民法第763条に基づき、夫婦の合意及び離婚届の提出(民法第764条が準用する第739条の届出主義)により成立する。未成年の子がある場合、離婚に際して父母の一方を親権者と定めなければならない(民法第819条第1項、共同親権を選択する場合は同項の改正後の規律による)。子の監護に関する事項(養育費、面会交流)については民法第766条が規定し、子の利益を最も優先して考慮しなければならないとされている。財産分与については民法第768条が規定し、同条第2項により財産分与の請求は離婚の時から2年を経過すると家庭裁判所に請求できなくなる(令和6年改正により5年に伸長される場合がある点にも留意)。年金分割については厚生年金保険法第78条の2以下が規定し、按分割合の合意又は裁判手続を経て年金事務所に標準報酬改定請求を行う必要がある。

実務でよくある失敗と対策 第一に、養育費や慰謝料の支払を口約束や私文書のみで合意し、支払が滞った際に強制執行ができない失敗がある。第9条のように強制執行認諾文言付きの公正証書とすることが対策となる。第二に、離婚時点での相手方の財産状況を十分に把握しないまま財産分与額を合意し、後日隠れた財産が判明しても財産分与請求権の2年の期間制限(民法第768条第2項)により再請求できない失敗がある。A-2のように財産の開示義務と表明保証を求めることが対策となる。第三に、年金分割の按分割合について離婚協議書上は合意したものの、離婚後2年の請求期限内に年金事務所での手続を怠り分割を受けられなくなる失敗がある。第6条のように速やかな手続実施を明記することが対策となる。

親権の形態(単独親権・共同親権)の選択や財産分与の対象範囲の判断は個々の事情により異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。特に共同親権を選択する場合には、進学先の決定や医療同意など日常的な監護と重要事項決定の役割分担を条項上で具体化しておかないと、離婚後の運用段階で頻繁に対立が生じるおそれがある。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 未成年の子の親権者(単独・共同)を明確にしたか
  • [ ] 養育費の金額、支払期間及び増減額改定の条件を定めたか
  • [ ] 面会交流の頻度・方法を具体的に定めたか
  • [ ] 財産分与の対象財産及び分与方法を明確にしたか
  • [ ] 財産分与請求権の期間制限(民法第768条第2項)を確認したか
  • [ ] 年金分割の按分割合及び手続期限を確認したか
  • [ ] 慰謝料の有無及び金額・支払方法を定めたか
  • [ ] 不動産(共有・単独名義)の取扱いを明記したか
  • [ ] 公正証書化(強制執行認諾文言付き)の要否を検討したか
  • [ ] 清算条項により本協議書外の債権債務がないことを確認したか