留学エージェントが海外校への出願手続や滞在手配を行う契約書。旅行業法の登録要否と特定商取引法の役務提供表示を踏まえ解約料と免責を規定。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
留学あっせん契約書
第1部: 書式本文
留学あっせん事業者【事業者名】(以下「甲」という。)と、留学希望者【氏名】(以下「乙」という。未成年の場合は保護者【氏名】を含む。)は、乙の海外教育機関への留学に関する手続支援について、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(委託業務の内容) 甲は乙に対し、次に掲げる業務(以下「本業務」という。)を提供する。 一 留学先教育機関の情報提供及び選定支援 二 出願書類の作成支援及び出願手続の代行 三 滞在先(学生寮、ホームステイ等)の手配又は手配代行 四 査証(ビザ)申請に必要な書類の準備支援 五 渡航に関する一般的な案内
第2条(旅行に関する手配業務の範囲) 甲が乙のために航空券の手配又は宿泊施設の予約手配を行う場合、当該業務が旅行業法上の旅行業務に該当するときは、甲は同法に基づき必要な登録を受けた事業者として、又は登録を受けた事業者との提携により当該業務を行う。
第3条(あっせん料金) 乙は甲に対し、本業務の対価としてあっせん手数料【〇〇】円を、甲所定の時期に支払う。留学先教育機関に対する授業料、入学金その他の費用は、乙が教育機関に対して直接又は甲を通じて支払うものとし、あっせん手数料とは別個の性質を有する。
第4条(特定商取引法に基づく表示等) 甲は、本業務の提供条件、対価及びその支払時期・方法、解約に関する事項等について、特定商取引法上の役務提供に関する表示規制の趣旨を踏まえ、契約締結前に乙に対し書面又は電磁的方法により明示する。
第5条(出願結果等の不保証) 甲は、乙の出願手続を支援するものであり、留学先教育機関への入学許可、査証の発給その他乙の希望する結果を保証するものではない。
第6条(乙の協力義務) 乙は、出願手続に必要な書類の提出、質問事項への回答その他甲が求める協力を、甲が指定する期限までに行うものとする。
第7条(中途解約) 乙は、本契約の履行が完了する前であれば、いつでも本契約を解除することができる。この場合、甲は、既に行った業務の内容に応じた解約手数料を乙に請求することができる。解約手数料の金額及び算定方法は、あらかじめ甲が乙に明示する料金表による。
第8条(教育機関都合等による不成立時の取扱い) 留学先教育機関の入学不許可、査証不発給、教育機関側の事情による受入れ中止等、乙の責めに帰さない事由により留学が実現しなかった場合、甲は、既に発生した実費相当額を除き、あっせん手数料の全部又は一部を乙に返還する。
第9条(現地における事故等の免責) 甲は、乙が留学先において被った事故、疾病、盗難その他の損害について、甲の故意又は過失に基づくものを除き、責任を負わない。
第10条(為替変動等のリスク) 教育機関への支払いに為替換算を伴う場合、為替相場の変動による差損益は乙の負担とする。
第11条(現地提携機関の行為に関する責任) 甲が現地の提携教育機関、寮運営者等の第三者を通じて手配を行う場合において、当該第三者の債務不履行により乙に損害が生じたときの甲の責任範囲は、甲が当該第三者の選定及び監督について相当の注意を怠らなかったときは、甲の媒介業務の対価の範囲を限度とする。
第12条(個人情報の取扱い) 甲は、乙から取得した個人情報を、出願手続及び滞在手配に必要な範囲で、留学先教育機関その他の関係機関に提供することがあり、乙はこれに同意する。
第13条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団等反社会的勢力に該当しないことを表明し、これに該当した場合、相手方は催告なく本契約を解除できる。
第14条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、甲の本店所在地を管轄する裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 留学あっせん事業者(甲)向けの修正
A-1. 出願書類の虚偽記載・不備による不合格時の免責明確化
修正後:「乙が甲に提供した情報又は書類に誤り若しくは不備があったことに起因して出願が不受理又は不合格となった場合、甲は責任を負わず、既に発生した実費相当額を含むあっせん手数料の返還義務を負わない。」 一言解説: 出願結果は乙が提供する情報の正確性にも依存するため、乙側の情報提供に起因する不合格について事業者の責任範囲を限定する修正である。
A-2. 現地手配業者の破綻等による代替手配の努力義務化
修正後:「甲が手配を行った寮運営者等が営業を停止した場合、甲は代替の滞在先確保に向けて合理的な努力を行うものとし、当該努力を尽くした場合、代替先の確保ができなかったことについて責任を負わない。」 一言解説: 海外の提携先の経営状況を事業者が完全にコントロールできない実態を踏まえ、結果保証ではなく努力義務として整理する修正である。
B. 留学希望者・保護者(乙)向けの修正
B-1. 解約手数料の算定根拠の事前開示を求める修正
修正後:「甲は、本契約締結時に、進行段階(出願前、出願後、入学許可後等)に応じた解約手数料の料金表を乙に交付するものとし、第7条の解約手数料は当該料金表に基づき算定する。」 一言解説: 解約手数料が事業者の裁量で事後的に決定されることを避け、段階別の金額をあらかじめ明示させる修正である。
B-2. 査証不発給時の返還範囲の明確化
修正後:「乙の責めに帰さない事由により査証が発給されなかった場合、甲は、査証申請に直接要した実費を除き、あっせん手数料の全額を乙に返還する。」 一言解説: 出願支援業務が完了していても査証発給という最終ハードルで留学が実現しない場合があるため、返還範囲を具体的な基準で明確化する修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面
本書式は、留学あっせん事業者が海外教育機関への出願手続支援及び滞在手配を有償で行う場面に用いる。航空券の手配や募集型企画旅行の実施を主たる内容とする場合は、旅行業法上の登録を要する旅行業務としての性質がより強くなるため、当該業法の適用関係を個別に精査する必要がある。
根拠法令
旅行業法第2条は、報酬を得て、旅行者のために運送又は宿泊サービスの手配を行う行為等を旅行業務と定義しており、留学あっせん事業者が航空券や宿泊施設の手配を自ら行う場合、その内容及び態様によっては同法上の登録を要する旅行業務に該当し得る。他方、出願書類の作成支援や査証申請支援など、運送・宿泊の手配を伴わない業務のみを行う場合は、旅行業法の適用対象外となることもあり、業務範囲ごとに該当性を整理して契約に反映させる必要がある。また、留学あっせんサービスは特定商取引法上の役務提供に関する表示規制の適用を受け得るほか、中途解約時の違約金条項については、消費者契約法第9条により平均的な損害を超える部分が無効とされ得る点にも留意する必要がある。
実務でよくある失敗と対策
第一に、航空券や寮の手配を自ら行っているにもかかわらず、旅行業法上の登録の要否を検討しないまま契約書を作成してしまう例がある。業務範囲を精査し、必要に応じて登録済みの提携事業者と連携する体制を整えるべきである。第二に、解約手数料をあらかじめ明示せず、事後的に高額な手数料を請求してトラブルとなる例がある。第三に、出願不合格や査証不発給といった、留学希望者の努力のみでは避けられない事由による契約不成立の場面での返還範囲を定めておらず、紛争化する例もある。個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 甲が行う業務のうち旅行業法上の旅行業務に該当し得るものを特定したか
- [ ] 航空券・宿泊手配を伴う場合の登録事業者との提携関係を整理したか
- [ ] あっせん手数料と教育機関への直接支払費用を区別して記載したか
- [ ] 解約手数料の段階別料金表を事前に明示する運用としたか
- [ ] 出願不合格・査証不発給等、乙の責めに帰さない不成立事由の返還範囲を明記したか
- [ ] 現地における事故・疾病等に関する免責の範囲が過度に広くなっていないか確認したか
- [ ] 現地提携機関の債務不履行時の甲の責任範囲を明記したか
- [ ] 為替変動リスクの負担者を明記したか
- [ ] 個人情報の海外の教育機関等への提供について同意を得る条項を設けたか
- [ ] 中途解約に関する違約金条項が消費者契約法第9条の趣旨に照らして過大でないか確認したか