自社SaaSを他社ブランドで提供させる契約書。商標法第30条の使用許諾とサポート責任の分担を定め、下請法の適用有無や品質責任の所在を明確にする。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
SaaSのOEM・ホワイトラベル提供契約書
第1部: 書式本文
第1条(目的) 甲(提供元)は、乙(OEM提供先)に対し、【サービス名】(以下「本サービス」という。)を、乙の商標及びブランドを付した形式(以下「ホワイトラベル形式」という。)で提供することを許諾する。
第2条(商標の使用許諾) 乙は、本サービスを自社ブランドとしてエンドユーザーに提供するため、乙が指定する商標、ロゴその他の表示を本サービスの画面上に表示することができる。当該表示に係る商標権の帰属は乙に留保される。
第3条(甲の商標の非表示) 甲は、本契約に別段の定めがある場合を除き、ホワイトラベル形式による提供にあたり、甲の商号又は商標をエンドユーザーに開示しない。
第4条(サポート責任の分担) エンドユーザーに対する一次サポートは乙が行い、乙で解決できない技術的な問合せについては、乙から甲へエスカレーションする。エンドユーザーは、本サービスの提供元が甲であることを知らされない前提で運用する。
第5条(品質責任) 本サービスの機能面の品質及び稼働に関する責任は甲が負う。乙は、エンドユーザーとの契約における表示内容について、本サービスの実際の仕様及び機能と齟齬がないようにする。
第6条(下請法の適用確認) 甲及び乙は、本契約が下請代金支払遅延等防止法(下請法)上の親事業者・下請事業者の関係に該当するか否かを、資本金区分及び取引内容に基づき別途確認し、該当する場合は同法に定める書面交付義務及び支払期日の規制を遵守する。
第7条(エンドユーザー規約の作成) 乙は、エンドユーザーとの間で適用する利用規約を自ら作成し、甲は当該規約の内容が本サービスの実際の提供条件(可用性、データ取扱い等)と矛盾しないことを確認するため、事前にレビューする機会を有する。
第8条(ライセンス料) 乙は、甲に対し、〔選択A: エンドユーザー数に応じた従量課金/選択B: 固定ライセンス料/選択C: 売上に応じたレベニューシェア〕によりライセンス料を支払う。
第9条(第三者提供・再許諾の禁止) 乙は、甲の事前の書面による承諾なく、本サービスの提供を受ける権利を第三者に譲渡し、又は再許諾してはならない。
第10条(契約終了時の措置) 契約終了時、乙は速やかにエンドユーザーへの提供を停止し、甲の商標又は乙の商標が付された本サービスの表示を全て除去する。甲は、契約終了に伴うエンドユーザーへの影響を最小化するため、乙と協議のうえ移行期間を設けることができる。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 提供元向け
A-1. エンドユーザー規約の甲への責任遮断
修正条文例:「乙が独自に作成しエンドユーザーに提示する利用規約の内容について、甲は一切の責任を負わない。乙は、当該規約に基づきエンドユーザーから受けた請求について、甲に対し求償しない。」 一言解説: OEM提供先が独自に定める規約の内容によって生じたトラブルの責任が提供元に及ばないようにする修正である。
A-2. 品質基準の維持義務
修正条文例:「乙は、本サービスの機能・品質について、甲が定める最低基準を下回る表示又は説明をエンドユーザーに対して行ってはならない。」 一言解説: OEM提供先による誇大な機能説明が提供元のブランド毀損や景品表示法上のリスクにつながることを防ぐ修正である。
B. OEM提供先向け
B-1. サポートエスカレーションの応答時間保証
修正条文例:「甲は、乙からのエスカレーション案件について、受付後【〇時間】以内に一次回答を行う。」 一言解説: 一次サポートを担う提供先が、提供元からの技術支援を迅速に得られるよう応答時間を明記する修正である。
B-2. 契約終了時の移行期間の確保
修正条文例:「甲は、本契約の終了(甲の都合による解約を含む。)にあたり、乙のエンドユーザーへの影響を考慮し、【〇か月】の移行期間を確保する。」 一言解説: 提供元都合の契約終了によってエンドユーザーへのサービス提供が急に停止することを防ぐための修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、自社開発のSaaSを他社ブランドの製品として第三者に提供し、その第三者がエンドユーザーに対して自社サービスとして販売するOEM・ホワイトラベル提供の場面で用いる。単なる販売代理店による自社ブランドでの再販(リセラー型)とは異なり、エンドユーザーに提供元の存在を開示しない点が特徴であり、その分サポート責任やブランド毀損リスクの分担をより厳格に定める必要がある。
根拠法令 商標の使用許諾については商標法第30条(通常使用権)の枠組みが基礎となり、OEM提供先の商標を提供元のサービス画面に表示させる場合は、その使用条件(表示範囲、品質管理)を契約で具体的に定めることが望ましい。また、本契約が下請代金支払遅延等防止法(下請法)上の製造委託又は情報成果物作成委託に該当し、かつ資本金区分の要件を満たす場合は、同法第3条の書面交付義務、第4条の禁止行為(支払遅延、減額の禁止等)の規制を受ける可能性があるため、取引の実態に応じた該当性確認が必要である。品質責任の所在については、エンドユーザーから見れば提供元の存在が見えないため、実際の機能に関する説明とサービスの実装内容に齟齬があると、OEM提供先が景品表示法上の優良誤認表示の責任を問われるリスクもある。
実務でよくある失敗と対策 第一に、エンドユーザー向け規約の内容を提供元が把握しないまま提供先が独自に作成し、実際のサービス仕様と異なる説明がなされてしまう失敗がある。第7条のように事前レビューの機会を確保することが対策となる。第二に、サポート責任の分担を曖昧にし、エンドユーザーからの技術的な問合せがOEM提供先で滞留してしまう失敗がある。第4条及びB-1のようにエスカレーションのルートと応答時間を明確にすることが有効である。第三に、下請法の適用可能性を検討せず、資本金区分の要件を満たしているにもかかわらず書面交付義務や支払期日の規制に違反してしまう失敗がある。第6条のように該当性の確認手続を契約に組み込むことが望ましい。
下請法の該当性判断は資本金区分と取引類型によって細かく分かれるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 商標の使用範囲及び表示条件を明確にしたか
- [ ] エンドユーザーへの提供元(甲)の非開示の範囲を確認したか
- [ ] サポート責任の分担及びエスカレーションのルート・応答時間を定めたか
- [ ] エンドユーザー向け規約の作成主体及び提供元によるレビュー機会を定めたか
- [ ] 品質責任の所在及び誇大な機能説明の禁止を明記したか
- [ ] 下請法の適用可能性(資本金区分・取引類型)を確認したか
- [ ] ライセンス料の算定方法(従量・固定・レベニューシェア)を定めたか
- [ ] 第三者への再許諾・譲渡の禁止を定めたか
- [ ] 契約終了時の表示除去義務及び移行期間を定めたか
- [ ] エンドユーザーへの説明内容が実際の仕様と齟齬しないことを確認する体制があるか