再委託の申請に対して承認または不承認を通知する書面です。承認条件、再委託先の変更時の再申請、責任の所在を明記します。実務で迷いやすい記載箇所には解説コメントを付しています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
再委託承認通知書
第1部: 書式本文
【委託者商号】(以下「乙」という。)は、【受託者商号】(以下「甲」という。)から令和【 】年【 】月【 】日付で提出された再委託承認申請(以下「本申請」という。)に対し、原契約【業務委託契約名称、締結日:令和【 】年【 】月【 】日】(以下「原契約」という。)第【 】条に基づき、下記のとおり通知する。
第1条(承認の可否) 乙は、本申請について【承認する・条件付きで承認する・承認しない】。
第2条(承認する場合の対象範囲) 承認の対象は、本申請書に記載された次の業務及び再委託先に限る。 業務内容:【 】/再委託先名称:【 】/承認の有効期間:令和【 】年【 】月【 】日から【 】まで
第3条(承認の条件) 乙は、本承認に際し次の条件を付する。 1. 再委託先との秘密保持契約及び個人情報取扱いに関する契約の写しを、本通知の日から【 】営業日以内に乙に提出すること。 2. 再委託先の業務遂行状況について、【月次・四半期】ごとに報告書を提出すること。 3. 【その他の条件:検収方法、立入調査への協力等】
第4条(条件不履行の効果) 甲が前条の条件を履行しないときは、乙は本承認を撤回し、又は次項の是正を求めることができる。乙が是正を求めた場合、甲は【 】日以内に是正措置を講じなければならない。
第5条(再委託先変更時の取扱い) 本承認は、第2条に記載された再委託先についてのみ効力を有する。甲が再委託先を変更しようとするときは、改めて乙の承認を得なければならない。
第6条(承認しない場合の理由) 乙が本申請を承認しない場合、その主たる理由は次のとおりとする。【理由:再委託先の実績不足、情報管理体制の不備等】。甲は、理由の解消を条件として再申請することができる。
第7条(責任の所在) 本承認は、原契約に基づき甲が負う一切の責任を軽減又は免除するものではなく、再委託先の行為についても甲が自らの行為として責任を負うことを乙は改めて確認する。
第8条(監督権限の留保) 乙は、再委託先の業務遂行状況について、事前に甲に通知の上、必要な範囲で資料の提出を求め、又は立入りによる確認を行うことができるものとする。
以上
令和【 】年【 】月【 】日
乙(委託者・承認者) 住所:【 】 商号・氏名:【 】 印 甲(受託者・申請者) 住所:【 】 商号・氏名:【 】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 委託者(乙)向け
A-1 第3条の修正例 「乙は、承認の条件として、再委託先が過去に重大な情報漏えい事故を起こしていないことの表明を甲に求め、虚偽の表明があった場合は本承認を無条件に撤回できるものとする。」 一言解説: 委託者としては、再委託先の適格性を確保するため、単なる報告義務にとどまらず、表明保証違反を承認撤回の明確なトリガーとして定めておくことで、再委託先の実態把握の実効性を高められる。
A-2 第8条の修正例 「乙は、原契約の履行に重大な影響を及ぼすおそれがあると合理的に判断した場合に限り、再委託先への立入りによる確認を求めることができ、立入りに要する費用は乙の負担とする。」 一言解説: 委託者にとって監督権限は重要だが、無制限の立入権は再委託先の営業活動を過度に阻害しかねない。合理的な必要性を要件とし、費用負担を明確にすることで、行使の正当性と実効性を両立できる。
B節: 受託者(甲)向け
B-1 第4条の修正例 「甲が条件を履行できない場合であっても、その不履行が甲の責めに帰することのできない事由による場合、乙は直ちに承認を撤回せず、甲との協議により是正期間を延長するものとする。」 一言解説: 受託者としては、天災や再委託先側の事情など自らの責めに帰さない事由による条件不履行についてまで直ちに承認撤回とされると事業継続に支障が生じるため、協議による猶予の余地を残すことが望ましい。
B-2 第5条の修正例 「甲は、緊急やむを得ない事由により再委託先を一時的に変更する必要が生じた場合、事後速やかに乙に報告することで足りるものとし、乙は当該報告後7日以内に異議を述べなかったときは変更を承認したものとみなす。」 一言解説: 受託者にとっては、常に事前承認を要件とすると緊急時の対応に支障が生じるため、緊急時の事後報告による簡易な手続を設けておくことで、業務の継続性を確保できる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、受託者から提出された再委託承認申請に対して、委託者が承認・条件付承認・不承認のいずれかの意思表示を行う場面で使用する。承認する場合には、対象業務・再委託先・承認条件を明確にし、条件付承認とすることで、委託者が事後の監督権限を確保できる点が実務上重要である。他方、原契約上そもそも再委託が全面的に自由とされている場合や、逆に一切禁止されている場合には、本書式による個別承認手続自体が不要又は無意味となるため、原契約の条項を必ず確認したうえで使用すべきである。
法的根拠としては、業務委託契約が準委任の性質を有する場合、民法第644条の2第1項が、受任者は委任者の許諾を得たときに復受任者を選任できる旨を定めており、本書式はまさにこの許諾(承認)の意思表示を書面化するものである。また、委託者が再委託先を含めて監督を行う必要がある場面では、個人情報保護法第25条の委託先監督義務のほか、業種によっては金融分野におけるガイドラインや業法上の外部委託規制(例えば金融機関の場合の監督指針)が別途適用される場合があるため、業種特有の規制の有無を確認することが求められる。
よくある失敗の第一は、承認の意思表示を口頭やメールの簡単な返信のみで済ませ、条件の内容が曖昧なまま実務が進行し、後日「そのような条件は聞いていない」との争いになることである。第3条のように条件を書面上具体的に列挙し、履行期限を明記することが対策となる。第二に、承認した再委託先が変更された場合の手続を定めずに放置し、気づいたときには全く別の第三者が業務を行っていたという事態が生じる例がある。第5条のように再委託先の変更には改めて承認を要する旨を明記すべきである。第三に、承認によって受託者の責任が軽減されるとの誤解が生じ、再委託先の不手際について委託者が受託者に責任追及できないと考えてしまう例がある。第7条のように、承認は責任の所在を変更するものではない旨を明記することが重要である。承認条件の設計や監督権限の範囲については、取引の性質や取り扱う情報の機微性に応じて個別事案は専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 原契約における再委託の可否及び承認手続の要否を条項に照らして確認した
- [ ] 承認・条件付承認・不承認のいずれとするかを明確に決定した
- [ ] 承認の対象業務及び再委託先の範囲を本申請書と照合して特定した
- [ ] 承認に付する条件(報告義務、秘密保持契約の写し提出等)を具体的に列挙した
- [ ] 条件不履行時の対応(是正・撤回)の手順を定めた
- [ ] 再委託先変更時に改めて承認を要する旨を明記した
- [ ] 承認が受託者の責任を軽減するものではないことを明記した
- [ ] 委託者の監督権限(報告徴求・立入り等)の範囲と費用負担を定めた
- [ ] 不承認とする場合、理由と再申請の可能性を明記した
- [ ] 業種特有の外部委託規制(金融、医療等)の適用有無を確認した