滞留債権の管理回収事務を外部へ委託する場面の契約書。債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)と弁護士法第72条の制約を踏まえ規定。

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債権回収業務委託契約書

第1部: 書式本文

【委託者商号】(以下「甲」という。)と【受託者商号】(以下「乙」という。)とは、甲が保有する滞留債権の管理及び回収に関する事務を乙に委託することに関し、次のとおり債権回収業務委託契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的) 甲は、別紙債権目録記載の債権(以下「本件債権」という。)の管理及び回収に関する事務(以下「本件業務」という。)を乙に委託し、乙はこれを受託する。

第2条(乙の資格) 乙は、債権管理回収業に関する特別措置法(以下「サービサー法」という。)第3条の許可を受けた債権回収会社であることを表明し、許可証の写しを甲に提出する。

第3条(業務の範囲) 1. 本件業務は、次の各号に掲げる事務に限る。 一 債務者への電話、書面又は訪問による支払督促 二 弁済に関する交渉及び分割弁済等の条件協議(甲があらかじめ承認した範囲に限る。) 三 弁済金の受領及び甲への引渡し 四 債務者の資力その他回収可能性に関する調査及び報告 2. 訴訟の提起、支払督促の申立てその他の裁判上の手続並びに弁護士法第72条により弁護士又は弁護士法人でなければ行い得ない法律事務は、本件業務の範囲に含まない。

第4条(管理責任者) 1. 乙は、サービサー法第12条に基づき選任した管理責任者【氏名】を本件業務の統括者として配置し、その氏名を甲に通知する。 2. 管理責任者は、乙の使用人による本件業務の遂行を監督し、本件業務に関する記録を整備する。

第5条(善管注意義務) 乙は、善良な管理者の注意をもって本件業務を遂行し、督促の方法及び時間帯についてサービサー法及び関係ガイドラインの定める範囲を遵守する。

第6条(委託事務の遂行方法) 乙は、本件業務の遂行にあたり、債務者に対し暴力的言動、深夜早朝の執拗な取立てその他社会通念上相当性を欠く方法を用いてはならない。

第7条(報告) 乙は、毎月末日までに、当月における回収状況、交渉経過及び回収見込みを記載した報告書を甲に提出する。

第8条(弁済金の取扱い) 1. 乙は、債務者から受領した弁済金を乙の固有財産と区分して管理する専用口座に入金し、受領後【5】営業日以内に甲の指定口座へ引き渡す。 2. 乙は、前項の引渡しに際し、控除すべき費用がある場合はその明細を甲に提示する。

第9条(委託手数料) 甲は、乙に対し、乙が回収した金額に【〇】パーセントを乗じた額を委託手数料として、当該回収金の引渡し時に相殺又は別途支払の方法により支払う。

第10条(再委託の禁止) 乙は、甲の書面による事前の承諾なく、本件業務の全部又は一部を第三者に再委託してはならない。

第11条(秘密保持及び個人情報の取扱い) 乙は、本件業務に関して知り得た債務者及び甲の情報を本件業務の目的以外に利用せず、個人情報の保護に関する法律の定めに従い適切に管理する。

第12条(契約期間及び解除) 1. 本契約の有効期間は契約締結日から【1】年間とし、期間満了1か月前までにいずれかの当事者から書面による申出がない限り同一条件で1年間自動更新する。 2. 甲は、乙がサービサー法上の許可を取り消された場合又は本契約に違反した場合、催告を要せず本契約を解除できる。

第13条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団その他の反社会的勢力に該当しないことを表明し保証する。

第14条(協議及び合意管轄) 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上の合意を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。

【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】

(甲) 住所:【     】 商号:【     】 代表者:【     】 印 (乙) 住所:【     】 商号:【     】 代表者:【     】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 委託者(債権者)向け

A-1. 多数の少額債権を一括委託する場合

第7条修正例:「乙は、回収額【10】万円以上の債権については個別報告を行い、それ未満の債権については月次一覧表による報告で足りるものとする。」 解説: 少額債権が大量にある場合は個別報告の事務負担が過大となるため、金額基準で報告方法を分ける。

A-2. 委託後も自社で交渉方針を統制したい場合

第3条1項2号修正例:「分割弁済等の条件協議は、甲があらかじめ承認した基準(分割回数上限【12】回、免除の禁止等)の範囲内でのみ行うものとする。」 解説: 交渉権限を無制限に委ねると回収条件が甲の方針と乖離するおそれがあるため、承認基準を具体的に定める。

B. 受託者向け

B-1. 委託範囲が不明確なまま業務が拡大するリスクがある場合

第3条2項追加例:「甲から裁判上の手続その他弁護士法第72条に抵触するおそれのある事務の依頼があった場合、乙はこれを拒絶できる。」 解説: 非弁行為への該当を避けるため、委託範囲外の依頼を明確に拒絶できる根拠条項を設ける。

B-2. 弁済金の管理体制を明確にしたい場合

第8条1項修正例:「乙は、弁済金を乙の固有財産とは別口座で管理し、当該口座の残高及び入出金記録を四半期ごとに甲に開示する。」 解説: 分別管理の実効性を高め、乙の経営状況が甲の回収金に影響しないことを担保する。

C. 管理責任者向け

C-1. 監督体制を明文化したい場合

第4条2項追加例:「管理責任者は、乙の使用人による督促記録を月次で確認し、不適切な取立て行為が確認された場合は直ちに是正措置を講じる。」 解説: 管理責任者の監督義務を具体的な行為レベルで明記し、サービサー法上の体制整備義務の履行を示す。

C-2. 兼任禁止を明確にする場合

第4条追加例:「管理責任者は、乙の他の業務における債務者との利害関係を有する地位を兼任してはならない。」 解説: 管理責任者の独立性を確保し、利益相反による不適切な回収を防止する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面・使ってはいけない場面の解説 本書式は、金銭債権の管理回収業務を、サービサー法上の許可を受けた債権回収会社(サービサー)に委託する場面で用いる。許可を受けていない一般の民間業者に債権回収を委託する場合や、訴訟提起等の法律事務を委ねる場合には本書式はなじまず、後者は弁護士への委任契約によるべきである。

根拠法令の解説 サービサー法第2条は特定金銭債権の管理回収を業として行うことを規制し、第3条により法務大臣の許可を受けた株式会社(サービサー)のみがこれを行い得ると定める。また弁護士法第72条は、弁護士又は弁護士法人でない者が報酬を得る目的で訴訟事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱うことを禁止しており、サービサーであっても特定金銭債権以外の一般債権の回収や裁判上の手続を行うことはできない。第3条2項のように業務範囲を明記することが、非弁行為該当の疑義を避ける上で重要となる。

実務でよくある失敗と対策 第一に、委託業務の範囲を曖昧にしたまま乙に交渉全般を委ね、結果的に弁護士法第72条に抵触するおそれのある業務まで行わせてしまう失敗がある。第3条のように業務範囲を限定列挙し明確化する。第二に、弁済金の分別管理を定めず、乙の資金繰り悪化時に甲への引渡しが滞る失敗がある。第8条のように専用口座での分別管理及び引渡期限を明記する。第三に、管理責任者の選任及び監督体制を書面化せず、サービサー法上の体制整備義務の履行を示せない失敗がある。第4条のように管理責任者の氏名及び職務を具体的に定める。個別の委託範囲や許可要件の適合性については専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 乙がサービサー法第3条の許可を受けた債権回収会社であることを確認したか
  • [ ] 本件業務の範囲を裁判外の事務に限定し、弁護士法第72条との抵触を排除したか
  • [ ] 管理責任者の選任及び職務内容を明記したか
  • [ ] 督促方法・時間帯等の遵守事項を具体的に定めたか
  • [ ] 弁済金の分別管理と甲への引渡期限を定めたか
  • [ ] 委託手数料の算定方法及び支払時期を明記したか
  • [ ] 再委託の可否及び承諾手続を定めたか
  • [ ] 個人情報の取扱いに関する条項を設けたか
  • [ ] 許可取消し等を解除事由として明記したか
  • [ ] 報告の頻度及び方式が甲の管理体制に合っているか