一定時点における債権残額を当事者間で確認する書面です。元本、利息、遅延損害金の内訳と、時効の更新への影響を整理します。自社の実情に合わせて条項を取捨選択できる構成です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
債権額確認書
第1部: 書式本文
【債権者商号・氏名】(以下「甲」という。)と【債務者商号・氏名】(以下「乙」という。)は、乙が甲に対して負担する債権の額について、次のとおり確認する(以下「本確認書」という。)。
第1条(基準日) 本確認書における債権額の確認は、令和【 】年【 】月【 】日(以下「基準日」という。)現在の状況によるものとする。
第2条(元本額) 基準日現在における元本の残額は、金【 】円であることを甲乙相互に確認する。発生原因:【 】
第3条(利息の内訳) 基準日までに発生した未払利息の額は、金【 】円であることを確認する。算定期間:【 】から【 】まで/利率:年【 】パーセント
第4条(遅延損害金の内訳) 基準日までに発生した遅延損害金の額は、金【 】円であることを確認する。算定期間:【 】から【 】まで/利率:年【 】パーセント
第5条(債権額の合計) 甲及び乙は、基準日現在における債権額の合計が、元本、利息及び遅延損害金を合わせて金【 】円であることを確認する。
第6条(以後の利息・遅延損害金の発生) 基準日以後についても、原契約に定める利率により利息又は遅延損害金が発生することを確認する。ただし、法定利率(民法第404条)又は利息制限法所定の上限を超えないものとする。
第7条(消滅時効との関係) 本確認書における乙による債権額の確認は、民法第152条に基づき本件債権についての消滅時効の更新事由に該当することを甲乙相互に確認する。
第8条(既存の担保・保証への影響) 本確認書は、原契約に基づき既に設定されている担保又は保証の内容に変更を加えるものではない。
第9条(異議の留保) 乙は、本確認書における債権額の確認について、算定の基礎となった資料に誤りがあることが判明した場合を除き、異議を述べない。
以上を証するため、本確認書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。
令和【 】年【 】月【 】日
甲(債権者) 住所:【 】 商号・氏名:【 】 印 乙(債務者) 住所:【 】 商号・氏名:【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 債権者(甲)向け
A-1 第9条の修正例 「乙は、本確認書に署名押印した以上、算定の基礎となった資料の正確性についても確認済みであることを表明し、以後、算定資料の誤りを理由とする異議も述べないものとする。」 一言解説: 債権者としては、確認書締結後に算定根拠の誤りを理由とした蒸し返しを防ぎたいため、資料の確認まで含めて表明させることで、確認内容の確定性をより強固なものにできる。
A-2 第7条の修正例 「本確認書における確認は、元本のみならず未払利息及び遅延損害金についても、それぞれ独立して消滅時効の更新事由に該当することを甲乙相互に確認する。」 一言解説: 債権者にとっては、元本と利息・遅延損害金とで時効期間の管理が別々になり得るため、確認の効果が全ての債権項目に及ぶことを明記し、時効管理の抜け漏れを防ぐことが重要である。
B節: 債務者(乙)向け
B-1 第2条の修正例 「元本額の確認は、甲が提示した計算根拠資料(【 】)に基づくものであり、乙は当該資料の正確性を前提として確認するものとし、資料に誤りが判明した場合は再計算のうえ債権額を訂正する。」 一言解説: 債務者としては、提示された金額をそのまま鵜呑みにして確認するのではなく、確認の前提となった資料を明記し、誤りがあれば訂正可能とすることで、不正確な金額の確定を防止できる。
B-2 第6条の修正例 「基準日以後の利息及び遅延損害金の利率は、乙の資金繰りの状況に鑑み、原契約に定める利率よりも低い年【 】パーセントに変更するものとする。」 一言解説: 債務者にとっては、確認書の締結を機に、以後の負担を軽減する交渉の機会とすることも考えられ、利率の見直しを合わせて合意することで、将来の履行可能性を高めることができる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、貸付金や売掛金等の債権について、一定時点における元本、利息、遅延損害金の内訳と合計額を当事者間で確認し、以後の弁済交渉や法的措置の基礎資料とする場面で使用する。単に「債務があることを認める」という抽象的な承認にとどまらず、金額の内訳まで具体的に確定させる点に特徴があり、その後の債務承認弁済契約書や返済計画変更合意書の前提資料としても活用できる。他方、債務そのものの存否に争いがある場合には、本書式を用いる前提を欠くため、まずは事実関係の調査や交渉を経て、債務不存在確認書又は和解契約書のいずれが適切かを検討すべきである。
法的根拠としては、民法第152条第1項が、権利の承認があったときからその権利の消滅時効が更新される旨を定めており、本確認書における乙による債権額の確認は、この承認に該当し得る(第7条)。時効の更新の効果は、承認された債権の範囲に及ぶため、元本のみならず利息・遅延損害金についても承認の対象に含める場合はその旨を明記しておくことが、時効管理の観点から重要である。以後発生する利息・遅延損害金についても、民法第404条に定める法定利率(契約上の合意がない場合)や、利息制限法所定の上限利率の規律が及ぶ点に変わりはなく、確認書上で新たに利率を合意し直す場合であっても、これらの上限を超えることはできない。
よくある失敗の第一は、元本、利息、遅延損害金の算定期間や利率の内訳を示さず、合計額のみを記載してしまい、後日その内訳の正確性が争われることである。第3条・第4条のように、算定期間と利率を明記し、内訳の透明性を確保することが対策となる。第二に、確認書の作成が消滅時効の更新事由に該当することを意識せず、時効完成間際の債権について確認書の取得を怠り、時効が完成してしまう例がある。時効期間が満了する前に確認書を取得することの重要性を認識しておくべきである。第三に、確認書の締結によって既存の担保や保証の内容まで変更されたと誤解される例がある。第8条のように、確認書が担保・保証の内容を変更するものではない旨を明記することが重要である。
また、複数の貸付けや取引が並行して存在する債務者について、いずれの取引に基づく債権額を確認しているのかを特定せずに合計額のみを記載してしまうと、他の取引に基づく債権まで含めて承認したのか区別できなくなるおそれがある。第2条のように発生原因を取引ごとに明記し、対象となる債権を一義的に特定しておくことが望ましい。時効期間の計算や、確認書の証拠としての位置づけについては、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 基準日を明確にし、当該日現在の状況を確認する趣旨であることを明記した
- [ ] 元本、利息、遅延損害金の内訳をそれぞれ算定期間・利率とともに記載した
- [ ] 合計額を根拠資料と照合して正確に算定した
- [ ] 消滅時効の完成が迫っている債権について、時効期間満了前に確認書を取得したか確認した
- [ ] 確認が民法第152条の承認に該当し、時効更新の効果が及ぶ旨を明記した
- [ ] 以後発生する利息・遅延損害金の利率が法定利率・利息制限法の上限を超えないか確認した
- [ ] 確認書が既存の担保・保証の内容を変更するものではない旨を明記した
- [ ] 算定資料に誤りがあった場合の訂正手続を定めた
- [ ] 異議留保の範囲(資料の誤りに限る等)を明確にした
- [ ] 記名押印者が確認内容について権限を有することを確認した