知れている債権者へ個別に異議申述の機会を通知する催告書。会社法第449条第2項及び第789条第2項の催告義務と、電子公告等による個別催告の省略要件を示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
債権者に対する催告書(組織再編・資本金の額の減少)
第1部: 書式本文
本書式は、資本金の額の減少又は組織再編行為(合併・会社分割等)に際し、知れている債権者に対して個別に異議申述の機会を通知する催告書の文例である。内容証明郵便による発送を想定した書式とする。官報公告と異なり、催告書は個々の債権者を名宛人とする点に特徴があり、宛名・住所を誤ると催告そのものが到達しない、あるいは到達しても名宛人相違により無効と扱われるおそれがあるため、発送先情報の正確性を特に重視して作成する必要がある。
催告書
【債権者名】様(【債権者住所】)
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、当会社は下記のとおり【資本金の額の減少・組織再編行為(合併・会社分割・株式交換等)】を行うことを決定いたしました。つきましては、会社法【第449条第2項・第789条第2項・第799条第2項・第810条第2項】の規定に基づき、下記のとおりご通知申し上げます。本件につき異議がございましたら、下記期間内に書面にてお申し出くださいますようお願い申し上げます。
敬具
- 行為の内容:【減少する資本金の額 金●円/合併の相手方会社商号 等】
- 効力発生(予定)日:【効力発生年月日】
- 最終事業年度に係る計算書類の開示状況:【本店開示・官報公告・電子公告の別及び該当箇所】
- 異議申述期間:本書面到達の日の翌日から令和【年】年【月】月【日】日まで(1か月を下らない期間)
- 異議申述先:【本店所在地】【会社名】【担当部署】(電話番号【電話番号】、担当者【氏名】)
- 異議申述がない場合の取扱い:上記期間内に異議のお申し出がないときは、本件について異議を述べなかったものとみなされます。
令和【年】年【月】月【日】日 【本店所在地】 【会社名】 代表取締役 【代表者氏名】 印
なお、本催告書は債権者ごとに個別作成し、発送先の商号・氏名・住所は登記事項証明書、契約書、請求書送付先等の最新の情報と照合したうえで確定させる。発送に際しては、発送日・宛先・追跡番号を一覧化した発送管理台帳を作成し、後日の疎明資料として保管することが望ましい。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 知れている債権者宛(発送先を個別特定して送付する場合)
修正条文例: 「本催告は、当会社の債権者名簿及び会計帳簿に基づき把握した知れている債権者【債権者名】に対し個別に発送するものであり、発送先住所は【債権者の登記簿上又は取引基本契約上の住所】とする。発送記録は発送台帳【台帳番号】に記録し、保管期間を効力発生日から【保管年数】年間とする。」
一言解説: 「知れている債権者」の範囲は会社の帳簿等から合理的に把握できる債権者を指すとされ、少額債権者や偶発債務の相手方を漏らさないよう、発送先リストの作成段階で経理部門・法務部門が突合を行うことが重要である。訴訟係属中の相手方や、保証履行前の連帯保証人に対する求償債務の相手方など、通常の取引先台帳には表れにくい債権者についても、法務部門が個別に確認したうえでリストに追加する運用が望ましい。
B節: 内容証明推奨(到達日を明確にする必要がある場合)
修正条文例: 「本催告書は、内容証明郵便(配達証明付)により発送するものとし、異議申述期間の起算日は当該郵便物が債権者に到達した日の翌日とする。到達日は郵便局発行の配達証明書により確認し、その写しを本件手続に関する書類つづりに保管する。」
一言解説: 個別催告は通常の書面郵送でも足りるとされるが、後日「催告が到達していない」との争いを避けるため、内容証明郵便(配達証明付)を用いて到達日を客観的に証明できるようにしておくことが実務上推奨される。海外の債権者に対しては国際書留郵便等、到達確認が可能な方法を選択し、宛先国の郵便事情による遅延も考慮して発送日程を前倒しすることが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、資本金の額の減少(会社法第449条)、吸収合併・新設合併(会社法第789条、第799条、第810条)、会社分割、株式交換・株式移転など、会社法上債権者保護手続が定められている組織再編行為において、知れている債権者へ個別に催告を行う場面で使用する。他方、電子公告等により個別催告の省略要件(会社法第449条第3項、第789条第3項等)を満たす会社が、あえて個別催告を行う必要がない場面では使用を要しない。
根拠法令は、資本金減少に関する会社法第449条第2項(個別催告の記載事項は官報公告事項に準ずる)、吸収合併存続会社等の債権者保護手続を定める会社法第799条第2項、新設合併に関する第810条第2項、会社分割に関する第789条第2項及び第810条第2項である。いずれも催告事項として、行為の内容、計算書類の開示状況、異議申述期間(1か月を下らない期間)を書面に明記することが求められる。催告書は官報公告と併存する手続であり、いずれか一方のみでは債権者保護手続として不十分となる点にも留意が必要である(個別催告省略の要件を満たす場合を除く)。
実務でよくある失敗として、第一に、知れている債権者の一部への送付漏れが挙げられる。取引先元帳や未払金台帳との突合を怠ると、少額の未払債務先や保証債務の相手方が漏れ、後日「催告を受けていない」として異議申述期間経過後に異議を主張されるリスクが生じる。対策として、発送前に経理・法務双方でリストをダブルチェックし、発送記録を一覧化して保管する。第二に、催告書の発送日と官報公告掲載日にずれが生じ、異議申述期間の起算日が債権者ごとに異なってしまう例がある。対策として、官報掲載日と催告書発送日をできる限り近接させ、期間管理を統一する。第三に、催告書の記載事項から計算書類の開示状況を省略し、催告の効力自体が争われる例がある。対策として、官報公告文案と催告書の記載事項を同一のひな形から作成し、齟齬が生じないようにする。第四に、宛先の商号・住所が古い情報のまま更新されておらず、催告書が「あて所に尋ねあたりません」として返送される例がある。対策として、発送直前に商業登記情報や直近の取引記録で宛先を再確認し、返送された場合の再送・別方法による通知の手順をあらかじめ定めておく。個別の債権者範囲の確定や催告方法の選択については、専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 知れている債権者の範囲を経理帳簿・契約台帳から網羅的に洗い出したか
- [ ] 少額債権者・保証債務の相手方等の漏れがないか再確認したか
- [ ] 催告書の記載事項(行為の内容・計算書類の開示状況・異議申述期間)に不備がないか
- [ ] 異議申述期間が到達日の翌日から1か月を下らない期間になっているか
- [ ] 内容証明郵便(配達証明付)での発送を検討したか
- [ ] 官報公告の掲載予定日と催告書発送日の整合をとったか
- [ ] 発送記録・配達証明を保管する体制を整えたか
- [ ] 異議申述先の部署・連絡先が正しく記載されているか
- [ ] 電子公告等による個別催告省略要件に該当しないことを確認したか
- [ ] 宛先情報(商号・住所)を発送直前に最新化したか
- [ ] 返送された催告書への再送・代替通知の手順を定めたか